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遅い夏休みという訳でもないのですが、約1ヶ月ブログ更新が滞ってしまいました。
前回は、平成22年5月発行された、電力中央研究所報告『スマートメータ導入に関する米国の動向とわが国における便益評価の課題(調査報告:Y09028)』をごく簡単にご紹介し、その中でのわが国の現状・課題認識が、3月11日の大震災+福島原発事以降で変わっていないかどうか確認しました。
次回は、平成23年3月発行された、電力中央研究所報告『米国における家庭用デマンドレスポンス・プログラムの現状と展望 -パイロットプログラムの評価と本格導入における課題-(調査報告:Y10005)』を参照しながら、実効性の高い日本のスマートメーターの仕組み(スマートメーターの機能範囲、電力料金メニュー、制度等)を考えてみたい - と計画していたのですが、“休み明けの初仕事”としては少々荷が重いので、もう少し軽い話題として、ここ1ヶ月の気になるニュースをいくつか見てみたいと思います。
エネ庁、スマートメーターの導入加速 まずは高圧需要家に
電気新聞2011年8月23日
50kW以上、500KW未満の高圧契約の中小企業の中には、時間帯ごとに使用電力量を計測できるメーターをつけていない顧客がいると聞いています。そうするとTOU(時間帯別料金)での経済的なインセンティブ/ディスインセンティブを効かせられないし、kWh単位で15%節電できたといっても、系統負荷の大きなピーク時間帯に節電できているのか定かではありません。
そこで、時間帯ごとの電気の使用量が計測できるスマートメーターを導入してもらい、このような企業のピーク需要削減を確かなものにしよう-というのが、狙いだと思われます。
※なお、ブログ:スマートメーター制度検討会報告書について思うこと-その後 の後書きで、『当面のエネルギー需給安定策(案)中にある需要の8割をスマートメーター化の意味するところ』が何なのか愚考したのですが、その際、経産省資源エネルギー庁の「集計結果または推計結果 3-(1) 用途別電灯電力需要実績(一般電気事業者、卸電気事業者、特定電気事業者及び特定規模電気事業者合計)」のデータを使用しました。この電気新聞記事によると、以下のように記載されており、高圧需要家の総需要に対する需要の割合は6割となっていて、上記の統計データとあっていません。
エネルギー・環境会議(議長=玄葉光一郎国家戦略担当相)は、7月29日に公表した当面3年間の需給安定策の中で、ピークカット対策の柱として、今後5年以内に総需要の8割にスマートメーターを導入する目標
エネ庁はこの取りまとめを踏まえ、高圧と低圧の2段階でスマートメーター導入を進める方針。来夏までの1年間で需要の6割を占める高圧需要家対応を終え、今後5年以内に残り4割の低圧需要家の半分にスマートメーターを導入する青写真を描く。
ただし、経産省のデータでは総需要となっているデータ74.7TWh(EXCELの『23年5月』シートで言うとAV32のセルの値)の代わりに、自家発分を除いた合計欄(EXCELの『23年5月』シートで言うとAV30のセルの値)の値:66.2TWhを総需要と考えると、その約6割が特定規模需要計:41.5TWh(EXCELの『23年5月』シートで言うとAV27のセルの値で高圧だけでなく、特別高圧需要を含む)、約4割が電灯電力合計:24.4TWh(EXCELの『23年5月』シートで言うとAV24のセルの値で、その中にその他電力-高圧電力A・Bの需要を含む)とほぼ一致します。
すなわち、電気新聞記事内の「高圧需要家」とは、電力小売り自由化対象となっている特別高圧需要家と高圧需要家を、「低圧需要家」には、電力小売り自由化対象外のすべての需要家で、低圧需要家の他に一般家庭(従量電灯A/B/C)等、更には高圧電力A・Bの需要家を含めると、経産省の統計データとつじつまが合いそうです。
特別高圧の需要家には、双方向通信のできるスマートメーターとはいかなくても、まず間違いなく時間帯ごとの使用電力量が遠隔検針できるメーターが付けられていますので、高圧需要家にもすべてスマートメーターをつければ、ニュース記事の解説通り“総需要”の6割をカバーできるのはわかりました。
ただ、「低圧需要家の半分にスマートメーターを導入する青写真」というのはどのようなものなのか、もう少し具体的に知りたいところです。
『スマートグリッド向け新プロトコル「IEEE 1888」の全容と省エネ戦略2011』を9月1日に発売
WBB Forum 2011年9月2日
IEEE 1888プロトコルは、ブログ:意外と先を行っている日本のスマートグリッド関連標準規格動向でもご紹介した東大グリーンICTプロジェクトが開発したFIAP(設備情報アクセス・プロトコル)をベースに、中国と共同でIEEE(米国電子電気学会)に提案し2011年2月に標準化されたばかりのプロトコルで、これまでベンダごとに構築されていたビル設備システムを統合し、マルチベンダ環境で効率的に構築・運用できる - とのことで、日本発のスマートグリッド関連標準がオーソライズされたのは、うれしい限りです。
国内初のスマートコミュニティ向け920MHz帯無線マルチホップ通信システムを開発
OKIプレスリリース2011年9月6日
総務省が2012年7月に開放予定の新周波数帯である920MHz帯を利用した無線マルチホップ通信システムを、日本で初めて開発に成功。スマートコミュニティやスマートハウス、スマートメーターの無線マルチホップ通信に最適な周波数帯として期待されています
-ということで、スマートメーターをこれまでの実証実験から実運用で展開するためには不可欠だったラストワンマイルで使用する無線帯域の確定など、法整備/環境整備が着々と進んできていることがわかります。
2011年末には相互運用ガイドライン「P2030」が発行へ、スマートグリッドの国際標準策定が進む
EETimes Japan 2011年9月5日
IEEE(The Institute of Electrical and Electronics Engineer:米国電気電子技術者協会)は9月19日(現地時間)、スマートグリッドの相互運用性の参照モデルに関する指針「IEEE 2030」を承認し、発行。IEEE 2030では、スマートグリッドの相互運用に必要な、電力システム(EPS)、アプリケーション、電力機器にかかわるエネルギー技術と情報技術などについて、用語、特性、機能パフォーマンスと評価基準などの定義を行い、機能インターフェースの同定、論理接続とデータフロー、コミュニケーションと連結、デジタル情報管理、サイバーセキュリティ、発電用途に重点を置く。IEEE 2030では、IEEE P2030.1(電動輸送インフラストラクチャ)、IEEE P2030.2(電力インフラストラクチャに統合された蓄電システムの相互運用性に関する指針)、IEEE P2030.3(電気エネルギー蓄積装置および電力システムアプリケーション向けシステムのテスト手順に関する標準)の3つの拡張版についての作業も始まっている
- とのことで、機会があれば、中身をレポートしたいと思います。
以上、今回は、ウォーミングアップがてら、ここ最近のスマートグリッド/スマートメーターの動きを見てみました。
終わり
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