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前回は、OASISの標準仕様書「Energy Interoperation Version 1.0」(以降、EI1.0と略)のOpenADRプロファイルを構成するEIサービスを、北米エネルギー規格委員会(NAESB)のSGTF(Smart Grid Task Force)が作成中の最新のデマンドレスポンスのユースケース「Retail DR Use Cases DRAFT1.1」と対応させることで、EI1.0 OpenADRプロファイルとは何者なのかを考えました。
EI1.0だけを眺めていると、これでOpenADR2.0の仕様をすべてカバーしているのかどうか定かではなかったのですが、あらかじめUCAIugのOpenADRタスクフォースが作成したOpenADR1.0/2.0の仕様の基本的な流れのユースケースとマッチングさせることにより、EI1.0のOpenADRプロファイルは、OpenADR2.0の仕様を満たしていないという結論となってしまいました。
そこで、もう一度OpenADRアライアンスのホームページを訪ね、「OpenADR Resources」のページの「White Papers」欄からダウンロードした「OpenADR Primer(OpenADR入門)」を確認したのですが、3ページ目、「A Brief History of OpenADR」という小見出しの節の最後から2番目のパラグラフに以下のように書かれています。
The work to create version 2.0 of the OpenADR standard is being performed by OASIS through its Energy Interoperation (EI) Technical Committee (www.oasis‐open.org/committees/energyinterop/) with assistance from the UCAIug OpenADR Taskforce.
確かに、『OpenADR2.0は、UCAIugのOpenADR-TF協力の下、OASISのEI技術委員会で標準化作りが行われている』とは、なっていますが、EI1.0でOpenADR2.0の仕様をすべてカバーするとはなっていませんでした。自分の早とちりだったようです。
ただ、別な言い方をすると、ブログ「OpenADR 2.0aスマートグリッド標準の検証終わる」で、「Certification & Testing」として以下の図をご覧いただきましたが、この図からするとOpenADR2.0aプロファイルでは、EiEventサービスしか、機能範囲に入っていません。したがって、EI1.0のOpenADRプロファイルは、OpenADR2.0aプロファイルには対応していると言えるのではないでしょうか。
なお、これまでOpenADR2.0a、2.0b、2.0cのプロファイルの違いは何か、公開情報が見当たらなかったのですが、先日Interop Tokyo 2012でOpenADRアライアンス日本担当の林為義氏のセミナーがあり、内容がわかりました。それによると、これらはDRシグナルの実行カテゴリーの違いのようです。
• OpenADR2.0aプロファイル:簡素化したDRイベント通信。組込装置が中心 例:サーモ等
• OpenADR2.0bプロファイル:高度な仕様を実装したシステム(HEMS/BEMS系)へのDRイベント通信。 複雑なイベント及び価格モデル
• OpenADR2.0c:ISO(系統運用者)からアグリゲーターへの情報伝達。
そこで、もう一度EI1.0のOpenADRプロファイルについて整理したいと思います。下図をご覧ください。
出典:EI1.0をベースにインターテックリサーチにて作成 図の拡大
このブログではOpenADRプロファイル以外のEIサービスをご紹介しませんでしたが、EI1.0では、上図の通り、11個のEIサービスが定義されており、そのうちの8個のサービスを使えば、少なくともOpenADR2.0aプロファイルの機能範囲はカバーできている-というのが現状のまとめになるのではないかと思います。
※OpenADRプロファイルがEiQuoteサービスの一部だけにかかっているのは、EiDistributeQuote以外のEiQuote操作は使われないことを示しています。
なお、EI1.0では、ブログでご紹介したEIサービスの定義、そのEIサービスの操作とペイロード(メッセージのボディ)および操作間のインタラクション(シーケンス図)の説明の他に、「Additional artifacts 」として、以下が示されていますので、詳細にご興味をお持ちの方は、ご覧ください。
XML schemas: http://docs.oasis-open.org/energyinterop/ei/v1.0/cs02/xsd/
• EIClasses.xsd
• EiEnrollment.xsd
• EiPayloads.xsd
• iCalendar-streams-extensions.xsd
wsdl files: http://docs.oasis-open.org/energyinterop/ei/v1.0/cs02/wsdl/
• EnergyInterop-Avail.wsdl
• EnergyInterop-Delivery.wsdl
• EnergyInterop-Enroll.wsdl
• EnergyInterop-Event.wsdl
• EnergyInterop-MarketContext.wsdl
• EnergyInterop-Opt.wsdl
• EnergyInterop-PartyRegistration.wsdl
• EnergyInterop-Quote.wsdl
• EnergyInterop-Report.wsdl
• EnergyInterop-Tender.wsdl
ここまで定義されていますので、WSDLベースのSOAPメッセージを用いれば、このEIのメッセージの受け渡しが可能となりますが、OASISでは、その他のメッセージトランスポートプロトコルとして、ebXMLメッセージングへのバインディング仕様が検討されており、そのドラフト版が2012年5月16日に公開されていたことがわかりました。
ドキュメントタイトルは、『Transport Protocol Bindings for OASIS Energy Interoperation 1.0 Version 1.0 Committee Specification Draft 01 / Public Review Draft 01』です。
先月半ばまでパブリックレビュー期間だったので、近日中にコメントを反映したバージョンが公開されるかもしれませんが、次回のブログでは、ドラフト版から、OpenADRプロファイルを含むEI1.0のebXMLメッセージングへのバインディング仕様をかい摘んでご紹介したいと思います。
今回は短いですが、これで終わりです。
終わり
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- Demand Response, Smart Grid, Standard, スマートグリッド, デマンドレスポンス, 標準化
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