smart meter image

The Natural History Museum at Tring

© Copyright Gerald Massey and licensed for reuse under this Creative Commons Licence

 

自動検針は、遠隔測定(テレメトリー)の適用分野の1つで、日本での関連書籍を調べると、古くは1966年に電気書院から『テレメータリングの実際』(石橋誠一著)が出版されています。
自動検針に限定すると、1971年には、電力中央研究所技術第一研究所〔編〕の電力中央研究所技術第一研究所報告 : 研究報告・調査報告no.71015に『自動検針の調査および新方式の提案』というのがあります。 その6年後、1977年12月に郵政大臣官房電気通信監理官室テレメータシステム研究会から『テレメータシステム研究会報告書 : 電気・ガス・水道の自動検針システム実用化のために』が出版されています。当時は郵政省がこの分野でイニシアチブをとっていたのですね。 郵政省ではその後も「郵政省総合テレメータシステム開発会議」を中心に、総合テレメータシステム開発が行われていたようで、1982年くらいまで、加入電話回線を利用した自動検針システムに関する開発調査を行っていたようです。 この開発結果は、主にガスの残量監視や保安の遠隔制御をする(ついでに自動検針もする)システムとしてNTTテレコングループのアウトソーシングサービスにつながったようです。

電力業界では1999~2001年に、大口需要家向けの自動検針ブームが起きたようで、東京電力はじめ、関西電力、中部電力、中国電力、九州電力などのニュース記事が散見されますが、主な通信手段は光ファイバーでしょうか。また、関西電力はPHSを用いたガスと電気の共同検針の実証実験を2000年に発表しています。そして、2008年、関西電力が一般家庭向けの検針自動化方針の発表となりますが、トランシーバーモードを利用した、ZigBee風の擬似メッシュ通信網とは言え、「なんで今更PHSなんだ?」という気がしないではありません。 この件に関しては、「メイさんのブログ:eo64エア存続へ。関西電力が自動検針システムを本格導入へ。」に詳しいので繰り返し述べませんが、ケイ・オプティコムのeo64エアですべてのエリアをカバーできないだろうし、通信エラーのリカバリーを含めて1200万世帯の自動検針をPHSで乗り切れるのか、少々心配です。

閑話休題。

日本では、Smartmeteringという言葉はあまり使われていませんが、海外では、大口需要家の遠隔検針ばかりでなく、一般家庭まですべての需要家の自動検針を行う仕組みをSmartmeteringと呼んでいるようです。
では、これまでの自動検針の仕組みとSmartmeteringの仕組みの違いは何でしょうか?

■まず、メーター当たりの検針コストが考えられます。 毎月数百万円の電気代を支払う大口顧客用の自動検針なら、検針コストが月1万円かかっても売上げの1%以下ですが、毎月の電気代が1万円前後の一般家庭の検針コストが月1万円では話になりません。 『大は小を兼ねる』といいますが、経済的に見た場合、大口顧客用の自動検針システムを一般家庭用に流用できないということですね。 世界に先駆けてSmartmeteringを実現したイタリアのエネル社でも、大口顧客用の自動検針システム(ENELLINK)とは別に、一般家庭用の自動検針システム(Telegestore)を構築しています。
参考:http://www.ieee-isplc.org/2007/docs/keynotes/rogai.pdf

■次にパフォーマンス。 大口顧客対象の自動検針メーター数に比べて検針対象メーター数が2,3桁大きくなることを考えると、単に早いコンピュータと高速大容量のディスクを用意しても限界があることは想像に難くありません。政治の話ではありませんが、地方分権(データ集約器にインテリジェンスとメーターデータ授受管理権限を持たせ、センター側でのデータクレンジング処理を軽減する)と、適材適所(需要場所のメーターの分布に適した通信手段を採用し、かつ、センター側ではそのような通信手段の違いを意識しなくてよいようにする)がポイントではないでしょうか?

AMI(Advanced Metering Infrastructure)とMDM(Meter Data Management)は、自動検針において、最初からパフォーマンスを確保しつつスケーラビリティを考慮したソリューションであると思います。 少し長くなったので、本日はこれくらいにし、AMIおよびMDMに関しては、別途考えてみたいと思います。