Forest How Squirrel

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とかく3文字略語が好きなIT業界ですが、電力ガス水道の自動検針システムは、かつてAMR(Automated Meter Dreading)と呼ばれていました。

その後のメーターのインテリジェント化と通信技術の進展により、単に検針値を読み取るだけでなく、メーター側のイベント(停電情報や、ガス・水道漏れなど)を検知するリモートセンシングの機能や、逆にメーターの開閉制御などセンター側からリモートコントロール可能なシステムに発展し、名称もAMM(Advanced Meter Management)と呼ばれるようになります。更に、最近ではメーターをホームゲートウェイとして家屋内外の電気機器(エアコンや屋外プールのポンプなど)の制御を行い、検針データのクレンジングや需要予測などビジネスインテリジェンス領域までカバーするAMI(Advanced Metering Infrastructure)と呼ばれるシステムが出てきています。

このAMIというコンセプトは、SOAやSaaSなど数々のBUZZワードを生み出したガートナー社が提唱し始めたようです。

#別にガートナー社に対して否定的なニュアンスで言っているのではなく、これらの時代をリードしていくコンセプトを打ち出していくのは流石だと感心しています。

ガートナー社は、AMIを①データの取得、②データの転送、③データのクレンジング、④データの処理、⑤情報の保存/保持、⑥情報の配信/提供の6つの処理ステップに分割しており、③~⑥の処理を行う主要なテクノロジーとしてMDM(Meter Data Management)をあげています。双方向のデータ通信をつかさどる①②が、本来の自動検針として重要なパートですが、前回の『日本の自動検針の系譜』後半で議論したスマートメータリングに求められる「地方分権」と「適材適所」を実現するためには、データ授受に特化した部分と、それ以降の部分に機能分割し、それぞれの部分でスケーラビリティを担保することが重要と考えます。その意味で、スマートメータリングを目指すなら、需要地の地形や人口密度に適した通信方式に特化した、複数のいわゆるAMIシステムと、通信手段から独立しデータの処理・保存と情報提供をつかさどるMDMシステムの連係プレーが、今後の主流となるのではないかと思います。

#ガートナー社が提唱したAMIからMDM機能を取り除き、かつ特定の通信手段に特化した「自動検針+α」のシステムが、(狭義の)AMIシステムと呼ばれています。

そして、AMIシステムとMDMシステム、あるいはMDMシステムと料金計算などのバックエンド・システムの連係プレーに不可欠なテクノロジーがSOAではないでしょうか?

昨今の通信技術の発達にも目覚しいものがあるので、ZigBeeなどの現在注目されている通信技術が数年後には廃れている可能性があります。その場合も、MDMシステムとAMIシステムが独立したシステムとしてSOAで祖結合していることで、常に最新の「適材適所」が実現できます。

 また、そのようなAMIとMDMを組み合わせたシステムを、電力ガス水道会社が自社で構築・維持・運用していく時代は終わったのかもしれません。

カナダのオンタリオ州では、電力会社(正確には、配電会社あるいは電力小売会社)がAMIシステムを用いて収集した検針データを、IESO(Independent Electricity Market Operator:日本の電力業界で言うと、電力会社内の中央給電指令所、電力系統利用協議会と卸電力取引所が合体したような規制機関)のMDMシステムに集約されます。そうすることで、統一されたデータクレンジング処理後の検針データを一元管理でき、オンタリオ州大の実需情報を基にした需要予測、それに基づいた同時同量制御のための発電計画策定が可能となるばかりでなく、料金計算の元となるデータ集計までしてくれます。その意味で、IESOのMDMシステムは中小電力会社に料金計算基礎集計を行うサービスをSaaSとして提供しているとみなすこともできるのではないでしょうか?

 AMIとMDM、それにSOA、SaaSがぐるりとリンクしたところで、本日は終わりにしたいと思います。