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今回は、9月7日~8日、ANAインターコンチネンタルホテル東京で開催された国際会議「Clean Coal Day in Japan 2009」の紹介です。
主催はクリーン・コール・デー実行委員会で、電気事業連合会、(社)日本鉄鋼連盟、(社)セメント協会、日本製紙連合会、電源開発(株)、(財)石炭エネルギーセンターから構成されています。何でも、9月5日は石炭の日(クリーン=9、コール=5)だそうで、それに因んだ記念行事として国際会議が開催され、石炭の産出国や、クリーンな石炭利用技術開発に努力している国内外の政府機関や企業が一同に会したようです。
経済産業省の他に、オーストラリアやカナダなど15カ国の在日大使館が後援、(社)日本エネルギー学会や(社)日本鉄鋼協会など12の協賛団体を得てのイベントだけあって、配付資料の厚さが合計で2cmもあろうかという立派な資料にザッと目を通してみました。
無料セミナーにもかかわらず、プログラムも豪華ですね。
【DAY1:9/7】
1)開会挨拶:中垣喜彦 財団法人石炭エネルギーセンター会長
2)来賓挨拶-I:石田徹 経済産業省資源エネルギー庁長官
3)来賓挨拶-II:「豪州ビクトリア州におけるクリーンコールの可能性と機会」
Hon Peter Batchelor 豪州ビクトリア州エネルギー・資源大臣
4)基調講演-I:「クリーン・コール・テクノロジー
~米国に於けるエネルギー・環境課題解決に向けての政策オプション」
Dr. Joseph P. Strakey 米国エネルギー技術研究所最高技術責任者
兼 エネルギー省クリーンコール担当次官補代理(代行)
5)基調講演-II :「クリーンコールテクノロジーと今後の世界戦略」
手嶋龍一 ジャーナリスト(元NHKワシントン支局長)
6)基調講演-III:「世界に貢献するわが国のCCT」
佃和夫 三菱重工業株式会社取締役会長
7)セッション-I:「日本と産炭国との協力とは」
セッション議長:末次克彦 アジア・太平洋エネルギーフォーラム代表幹事
7-1) 講演-1:「期待される重層的な石炭産消協力」
坂梨義彦 電源開発株式会社代表取締役副社長
7-2) 講演-2:「豪州の石炭供給安全保障問題とローエミッション技術」
Mr. Chris Stamford 資源・エネルギー・観光省資源局鉱物部長
7-3) 講演-3:「インドネシア炭~期待できる将来像」
Mr. Bob Kamandanu インドネシア石炭協会(ICMA)会長
7-4) 講演-4:「石炭消費国としての日本のやること・できること」
川嶋文信 三井物産株式会社執行役員エネルギー第一本部長
7-5) 講演-5:「気候変動-豪州石炭産業の課題」
Mr. Ralph Hillman 豪州石炭協会(ACA)事務局長
【DAY2:9/8】
1)基調講演-IV:「温暖化の中長期目標とその対応」
茅陽一 東京大学名誉教授、
財団法人地球環境産業技術研究機構副理事長兼研究所長
2)パネル・ディスカッション-Ⅰ:「気候変動問題と石炭の役割」
モデレーター:茅陽一 東京大学名誉教授、
財団法人地球環境産業技術研究機構(RITE) 副理事長兼研究所長
パネリスト1 桝本晃章 社団法人日本動力協会会長
パネリスト2 石井正一 日本CCS調査株式会社代表取締役社長
パネリスト3 山口光恒 東京大学先端科学技術研究センター特任教授
パネリスト4 末次克彦 アジア・太平洋エネルギーフォーラム代表幹事
3)基調講演-V :「日本の石炭火力技術は世界のCO2削減の切り札である」
橘川武郎 一橋大学大学院商学研究科教授
4)パネル・ディスカッション-Ⅱ:「日本の石炭ビジネスの切り札」
モデレーター:崎田裕子 環境ジャーナリスト
パネリスト1:木村雅昭 経済産業省資源エネルギー庁資源・燃料部長
パネリスト2:福江一郎 三菱重工業株式会社取締役副社長執行役員
パネリスト3:猪野博行 東京電力株式会社取締役副社長
パネリスト4:黒木啓介 新日本製鐵株式会社代表取締役副社長
パネリスト5:衣川潤 三菱商事株式会社常務執行役員金属グループCEO
パネリスト6:竹内敬介 日揮株式会社代表取締役会長兼最高経営責任者
5)閉会挨拶 並木徹
財団法人石炭エネルギーセンター理事長・クリーン・コール・デー実行委員長
すべてを紹介することはできませんが、最後のパネルディスカッションで使われたのとほぼ同じ資料を見つけましたので、興味のある方は、そちらも合わせてご覧ください。
私自身がそうだったのですが、一般に、燃料としての石炭は地球温暖化の元凶のひとつで、火力発電の中でも石炭火力は、世の中から抹殺されるべき悪者だと認識している方は多いのではないでしょうか?
東芝とオリックスの合弁会社:シグマパワー山口が、宇部興産西沖の山地区に出力50万キロワットの石炭火力発電機2基を建設しようと計画したものの、環境アセスメントの結果断念したのは、記憶に新しいところです。
ところが、IEA(国際エネルギー機関)による世界の一次エネルギー需給見通しによると、2030年は、2006年比でエネルギー需要が45%増加すると予想されているのに対して、石炭は60%の増加が見込まれています。また、一次エネルギー全体に占めるシェアも、26%から29%への拡大が見込まれているのです。
出典:IEA, “World Energy Outlook 2008”
世界の発電電力量の見通しを見ると、石炭へのシフトは更に顕著で、地球温暖化阻止はどこに言ったの?という感じすらします。
結局、CO2の排出量は多いけれども、調達の安定性や経済性に優れているのと、中国のような石炭産出国が、自国の発電用の燃料に石炭を使うのは、考えると自然な成り行きなのでしょう。それにしても、下の表にある中国の石炭発電所増設は、驚異的ですね。
こういう状況なので、石炭エネルギー利用時のCO2削減に努力することは、非常に大切なわけで、クリーン・コール技術が望まれているわけです。
そこで、(すでにご存知かもしれませんが)、主なクリーン・コール技術を紹介しましょう。
石炭ガス化複合発電(IGCC)
IGCC(Integrated coal Gasification Combined Cycle)は、石炭をガス化しコンバインドサイクル発電を利用する、 クリーンで効率のよい発電方法として注目されている。
主な特徴:
(1)実用段階で48~50%(低位発熱量基準・送電端)と高い熱効率が得られること、
(2)石油火力とほぼ同等のCO2排出量で石炭の発電利用が可能となること、
(3)低品位炭を含めた供給安定性の高い石炭を利用すること
CO2の地中貯蔵(CSS)
発生したCO2を大気中に放出せずに回収し、地中に貯留する技術。CO2を分離・回収する技術には、以下のようなものがある。
これらの技術を使うことで、CO2を排出しない(ゼロ・エミッション)石炭火力発電所を目指しているということです。
低炭素社会電力供給システムとして、ICT技術を駆使したスマートグリッドへの取り組みに注目が集まっています。そこでは、CO2を排出しない太陽光発電や、風力発電の有効利用が考えられていますが、出力変動の激しいこれらの再生可能エネルギーが大量に送配電網になだれ込むと、電力系統の安定性に支障をきたす。急激な出力変動を補完するためには、従来のピーク電源同様、太陽光や風力発電容量相当の火力発電所を用意しておかなければならない。あるいは、現状+αのピーク電源で対応できない出力変動が起きないように再生可能エネルギーの発電量制御が必要-という再生可能エネルギー有効利用とは逆向きの議論もされています。
電力系統の安定性に寄与できるような大規模蓄電池は、少なくとも当面経済的には実現の可能性が低いようですので、大量に再生可能エネルギーが導入されるのにあわせて、ここで紹介したようなクリーン・コール技術を採用したゼロ・エミッション石炭火力発電所が実運用に入っていることが望まれます。
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