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第1章:スマートガレージとは何か?
スマートガレージは、電気自動車(EV)と電力系統(グリッド)とをスマートに統合する技術革新によって、運輸、グリッド、構築環境を纏め上げる、初めての試みである。 今日まで、輸送インフラは、グリッドや建物とはほとんど独立して機能していたが、今や、この3つが、新世代EVの急速な商業化の波に乗って融合しようとしているのである。 EVは、単にグリッドにプラグでつながるだけでなく、グリッドと会話し、グリッドの運用をしっかりサポートして円滑化し、場合によっては、移動型電力貯蔵資源の役目を務める。先見性を持って注意深く実装するならば、スマートガレージは、建物と車と電力系統システムを統合し、これら3つすべての効率を改善する一方で、顧客にとっても、エネルギーの使い方の制御や選択がしやすいものとなるだろう。スマートガレージは、TiVoのオンデマンド方式が放送メディアにもたらしたのと同じようなことを電気とモビリティの世界で可能にし、顧客は、どんなエネルギーをいつ、どこで使いたいか、車の中でも、家の中でも選択できるようになる。
長期ビジョン:車、建物、グリッドの先進的な統合
今後15~20年の長期レンジで見ると、スマートガレージは、高度にネットワークを張り巡らせ相互依存度の高い運輸、ビルそして電力系統のシステムの必須構成要素となっているだろう。そのシステムは、安全で耐障害性が高く、超分散型で、主に(多分、すべて)再生可能エネルギーで稼動している。電気はこれまでのように電力会社の設備から需用家のところに流れるだけでなく、EVとも電気のやり取りがあり、多様な新規の電力消費装置、電力貯蔵装置、電力供給装置が生まれているだろう。 このシステムは、顧客を、受動的に料金を支払うだけの端役から、電気・ガスの価格・供給に関する豊富な情報に基づいて新たな一連の選択を行う主役に抜擢する。 使用者は、エネルギーを使用しているときに、どんなエネルギーを使っているかチェックでき、リアルタイムで別の使い方に変更したり、予めいくつか好みを指定しておくことで「賢い」システムに、好みに従った最も安価で(もし、クリーンエネルギーを好む場合)クリーンな、もっとも便利にエネルギーを得る方法を選択することができる。 そのシステムは、いろいろなモデルとサイズの自動車に適応し、国内や国外でも使える柔軟で互換性の高い接続/通信システムとなっていなければならない。 いつでも、どこでも、誰とでもコミュニケーションが可能な、携帯電話同様のユビキタスの世界がEVでも実現し、充電を行うと、裏で料金請求されるような処理が広くいきわたっているだろう。 スマートガレージは、エネルギーセキュリティ上も非常に大切である。まず、スマートグリッドとEVの融合が、夜間の風力発電などの再生可能エネルギーの市場を拡大する。EVはクリーンだが出力変動の大きい再生可能エネルギーを(30%以上)活用するグリッドの安定化にも貢献できる。また、グリッドで故障が発生した場合に、緊急で電力供給するためのオプションを増やすことにもつながるからである。 スマートガレージが実現すれば、オイル価格高騰であわてたり、電力不足の心配をする必要がなくなるだろう。多様で分散化された再生可能エネルギーをフル活用するグリッドになれば、5百万世帯に影響を及ぼした2003年北米で発生した大停電のような事故は過去のものとなる。 スマートガレージの実現には、莫大な新規投資を必要とするが、それに十分見合う正味現価(NPV)を持っている。RMIのスマートガレージモデルでの試算によると、大幅に再生可能エネルギーを活用する次世代公益事業者(NGU:Next Generation Utility)のステークホルダにとってのNPVは1000億ドルである。 ここで重大なのは、スマートガレージが、自動車産業のみならず、エネルギー貯蔵、充電、メータリング、エネルギーシステムの構築、ソフトウェア、ターゲットマーケティング、通信、小売、金融、位置情報サービスなど著しく広範な産業に新たなビジネス機会を提供することである。 以上、Smart Garage Charrette Report 第1章前半部分を紹介しました。スマートガレージの長期的なビジョンが、より鮮明になったと思います。 次回は、本レポート第1章後半部分、VxGに関してもご紹介したいと思います。
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