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IEC61970国際標準規格が規定しているCIMのご紹介の続きです。
IEC61850の情報モデルが変電所をベースとしているのに対して、IEC61970のCIMは、系統制御所をベースとしているものの、発電端から需要端にいたるまでの実オブジェクトや、金銭的なエネルギー取引にかかわる実オブジェクト、および情報交換用のオブジェクトから構成され、オブジェクト指向の道具立てを使ってクラス構造で定義されていることがわかりました。
ところで、このCIMには、いったいどのようなご利益があるのでしょうか?
今回は、「IEC61970 CIMの紹介-1」で用いた2つの資料に加えて、電力業界向けのIEEEカンファレンスPICA(Power Industry Computer Applications)2001で発表された「XML FOR CIM MODEL EXCHANGE 」と「XML for CIM Model Exchange」等を参考にさせていただきました。では、はじめます:
立場が違えば必要な情報が違う
上図中央にあるのが系統制御所ですが、その中では、電力系統の日程計画、運用、制御などをつかさどる各種エネルギー管理システム(EMS)や、資材管理、建設、保護、保守などのシステムが稼動しており、それぞれで、必要なデータが下図のように異なります。
もし、異なるベンダーが、それぞれで必要な情報のみをデータベース化してこれらのシステムを開発し、かつデータの命名規則などもばらばらだったらどうでしょう?システム間で交換したいデータがあっても、それぞれのシステムのデータ構造を調べなければなりません。また、同じデータでも、それを保持するデータ精度が異なっている可能性もあります。
しかし、すべてのシステムがCIMのオブジェクトモデルに基づいてシステムを構築していれば、そのようなシステム間の情報交換がスムースになります。今すぐそこまでは無理だとしても、既存システムの外部インタフェースをCIM準拠とすることで、データ交換する相手ごとにデータのマッピング方法を調査検討する必要がなくなります。CIMが、システム間で交換されるすべてのメッセージの共通モデルを提供し、情報交換モデル定義のベースとなるからです。
すなわち、CIMは系統制御所内で稼動する複数のEMSシステムやその他のシステム、更に外部の発電管理・配電管理システム等との間で、必要な情報を交換するための、いわば共通言語の役割を果たしているのです。
GID(Generic Interface Definition )
国際標準規格IEC61850-7-3/7-4が変電所の情報モデルを規定していたのに対して、IEC61850-7-2で、実際の通信プロトコルと独立した形で情報交換と、それに関連した通信サービスを規定していました。それと同様に、系統制御所の情報モデルに関する汎用的なインタフェース(GID)を規定したものがIEC 61970-4xxの国際標準規格で、コンポーネントインタフェース仕様(CIS)と呼ばれています。
● IEC 61970-401:コンポーネントインタフェース仕様(CIS)- フレームワーク
● IEC 61970-402:CIS - 共通サービス
● IEC 61970-403:CIS - 汎用データアクセス
● IEC 61970-404:CIS - ハイスピードデータアクセス (HSDA)
● IEC 61970-405:CIS -汎用イベントとサブスクリプション (GES)
● IEC 61970-407:CIS -時系列データアクセス (TSDA)
CPSM(Common Power System Model )プロファイル
ところで、「IEC61970 CIMの紹介-1」のパッケージで紹介したように、当初、CCAPI Task Forceでは系統制御所のEMSの情報モデルから出発したCIMのモデルは、次第に肥大化していきます。EMSに関してだけでも、技術面だけでなく、導入設置、運用、保守面を統合したモデルになっているだけでなく、EMS以外のシステムや、系統制御所とインタフェースする外部システムのオブジェクトもモデルに取り込んでいったからです。
また一方で、CIMには解釈上の自由度がありすぎるので、実際にモデル情報を交換する上でいくつか制約ルールを設けた方が良い面も見られました。
それとは別に、CIMのコアモデルであるIEC61970-301が批准されてからも、どんどんCIMへの追加変更が入り、バージョンアップされるので、電力会社やベンダーとしては、常に最新のCIMをフォローしなければなりませんでした。
そこで、NERC(北米電力信頼度協会)では、NERC管轄範囲内での情報交換に関する要件をまとめ、NERC参加者間で固定的に交換されるCIMデータモデルのサブセット:CPSMプロファイルがIEC61970-452として定められました。このCIMのサブセットはContextual Modelとも呼ばれています。
これに関連して、配電管理システム(DMS)で同じく国際標準規格を定めているIEC61968でも、同様のサブセット:CDPSM(Common Distribution Power System Model)が考案され、IEC61968-13として定められました。
CIMを利用して出来上がる図は、単に絵に描いた餅でしかないのか?
CIMの開発過程で、CCAPI Task Forceでは、VisioとMS Accessを用いていたそうです。今でこそVisioもいろいろ機能アップしていますが、1996年当時のVisioだと、出来上がったCIMオブジェクトモデル図は、あくまでモデル図であり、電子的に制御所に関連するシステムの実装に利用できるような機能はまだなかったのではないかと思います。そういう意味で、言葉は悪いですが、「絵に描いた餅」以上のものではなかったのではないかと想像します。
それがIEC61970の国際標準規格となる際にUMLの記述に変換されました。IECでは、当初はRational Roseで、今はSparx 社のEnterprise Architectというモデリングツールでメンテナンスしているようです。(http://www.sparxsystems.com.au/press/articles/pdf/iec_cim.pdf)
UMLで書き直されたことにより、IEC61970国際標準規格の利用は、単なる抽象的な情報モデル図表現から、次の段階に移ったといえます。
IEC 61970-5xxの国際標準規格は、上記CISのテクノロジーマッピングとして定められています。
● IEC61970-501: CIM-RDFスキーマ
● IEC61970-552-4:CIM/XMLモデル交換フォーマット
CIMのRDFスキーマ版が開発され、CIMモデルをXML表記(CIM/XML)して電子的に取り扱うことが可能となりました。以下は、CIMオブジェクトモデルをCIM-RDFデータモデルに変換し、それをCIM-RDFスキーマ(の一部)として、クラスおよびプロパティを定義にしているところです。
図の拡大 (XML FOR CIM MODEL EXCHANGE より)
また、以下は、電源トランス「SGT1」についてのCIM/XMLでの記述例です。
EPRIは、ABB、SIEMENS等、様々なEMSベンダー製品間で実際の大規模なEMSモデルを交換するためにCIM/XMLを使用して相互運用性テストを実施しています。
今回は、IEC61970国際標準規格のその後の流れをフォローしました。
最後に、ここまでのIEC61970国際標準規格の流れをまとめた図がありますので、それをご覧いただいて、終わりにします。