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スマートグリッドを構成する米国標準の1つとして、NISTがANSI(American National Standards Institute)の標準規格をいくつかあげていますが、今回は、METERING.COMのアーカイブから、タイトルにした『A comparative introduction to ANSI metering standards』の記事を紹介します。2003年の古い記事ですが、電力計の標準規格の歴史を紐解いてみたいと思います。

では、早速始めましょう。

世界中の電力会社が使用している電力計の規格は、国によって異なるが、その起源をたどると、大部分は米国規格協会(ANSI)か、国際電気標準化会議(IEC)規格のどちらかに帰着する。双方の規格を参照している電力会社も珍しくないし、同一システム内で、両方のタイプの電力計を採用している例もある。また、設計技術の進歩により、1つで、両方の標準規格の性能要件を満たす電力計も出現してきている。
IECシリーズの規格同様、ANSI C12シリーズの規格は、電力計の計測装置自体と通信プロトコルの両方を規定しており、よく使われるものに、3種の計測装置の規格と、3種の通信規格がある。

ANSIでは、更に新たな通信規格を策定中で、また、定期的にすべての規格の改正版を発行している。 以降では、まず、それぞれのANSI規格を簡単に説明する。

■ ANSI標準規格の紹介

ANSI C12.1は、電気料金計算用の計器の総合的な性能基準を規定している。電気機械式計器(誘導形計器)の計量性能と影響(Performance and influence)仕様を含み、また、すべてのANSIの電力計に共通な仕様(参照条件、設計認可テスト手順、サージ耐久試験、絶縁試験、環境試験、および機械試験)を規定している。この規格はIEC62052-11の一般要求事項、およびIEC62053-11の電気機械式計器の標準規格に相当する。

ANSI C12.10は、計器の概観と外寸を規定している。 ANSIの電力計は、IECの電力計と異なって丸く、後部にソケットマウント用の刃を持っている。 また、ANSI規格では単相二線式、三相三線式など、いくつかの端子接続を許容している。 この規格は、それぞれの計器のソケットの刃端子の構造までを規定するもので、土台部分は需要家の所有物であり、民間規格であるUL(Underwriters Laboratories Inc.)にてその性能が規定されている。

ANSI C12.20は0.2%および0.5%の測定精度の計器の、正確な計量性能と影響限界を規定している。 この規格はIEC62053-22のStatic Meterクラス0.2および0.5に類似していて、 特に負荷性能、力率性能、電圧変化性能、周波数変動性能、(多相計器用)等価回路、計器内外温度の計量性能への影響、サージへの影響についての要件を指定している。

ANSI C12.18は、データ転送に関する規格である。 この規格のために、計量装置とPoint-to-Pointで通信する他の装置との間のインタフェースを規定するための言語PSEM(Protocol Specifications for Electric Metering)が設計されている。 この規格は、電力計の光学ポートで使用されることを想定しており、ビット伝送速度や、誤り検出、タイムアウトなどの詳細を含む。 また、計器の光学ポートに関する構造、寸法、および光学強度が規定されており、セッションのログオン/ログオフや、READ、WRITEなどのコマンド体系も規定している。

ANSI C12.19はIEEE1377-1997と同じで、電力会社のアプリケーションデータが電力計とコンピュータの間でやり取りするテーブル構造を定義している。デバイス言語やプロトコルを定義しているのではなく、データをやり取りするための構造を定義したもので、複数のベンダーが計量装置の情報を読み書き・構成するための製品を作れるようなワンセットのテーブルを定義したものである。
テーブルには、消費量の単位(kWhなど)、需要、計器表示の制御、セキュリティ、時間帯別料金(TOU)のための時間区分、負荷プロファイルの定義、イベントログ、およびユーザ定義領域の仕様などを含んでいる。 また、この規格は、標準的なデータ交換を規定する一方で、ベンダーが計器設計の革新と差別化を許容するためのフォームと形式も規定しているので、既存のシステムを書き換えなくても、新たなテーブルを定義することで対応できるようにしている。

ANSI C12.21は、離隔検針に使用するC12.18の規定を、電話網を使用したPoint-to-Point通信に拡張したものである。認証および、チャネル接続・切断とタイミング制御が追加されている。

・ なお、現在レビュー中のANSI C12.22では、通信領域をネットワークアーキテクチャに広げるための追加が検討されている。

■ IEC国際標準規格との比較

ANSIおよびIECの計量に関する規格は、両方とも数十年間にわたり使用されてきた。(最初のアメリカの電気計量規格は1910年に発行されている) また、両方の規格とも、新たに開発された技術に対応して発展してきており、計器製造業者だけでなく、規制機関、および電力会社を支援してきた。
典型的なANSIの電力計とIECの電力計を比較した場合、最も明白な違いは、ANSIの電力計は丸型で、ソケットに収まるように設計されているということである。一方、IECの電力計は長方形で、むき出し線で接続される接続端子を持っている。 このスタイルの相違は、20世紀前半に始まったが、IECの電力計が主に屋内(保護された環境)で使用されたのに対して、ANSIの電力計は主に野外で使用されたことに起因する。これに付随して、典型的なANSIの電力計は、屋外用途のため、より広い動作温度範囲を持っている。 しかし、ANSIの電力計にも、非ソケット型が存在し、IECの電力計でも、屋外用に動作温度範囲が広いものも存在する。
双方の規格には、多くの類似性があり、主要機能も似ているので、両規格で規定された多数の試験も似たものになっている。さまざまな負荷電流、電圧、および力率の上で始動電流、クリープ、精度などの性能試験を規定しており、電圧や電流のサージ、磁場、静電気の放出や、無線周波数妨害などの外的影響への耐性試験でも似たような規定がある。 しかしながら、試験水準と試験条件の仕様には違いがあり、IECとANSIの電力計の試験がまったく同一条件というわけではない。 なお、両方の規格とも、50Hzあるいは60Hzで使えるようになっている。
IEC規格では規定されていないものに、接続端子の寸法がある。ANSI規格では、ソケットタイプ(Sベース)であれ、接続端子タイプ(Aべース)であれ、計器に外部接続する大きさ、形状が完璧に記述されている。

■ 用語の比較

電力計量に関するANSIとIECの規格を理解し、比較するのを助ける2つの事実がある。
1番目は定格電流の定義の違いである。ANSI規格は最大電流(例えば、200Aか10A)の小さい方の数値を定格電流とし、他のすべての負荷ベースの性能要件は、この定義に基づいている。 ANSIの中間スケール較正ポイント(mid-scale calibration point)は試験電流(Test Amps)と呼ばれる。 これに対して、IEC規格では中間スケール較正ポイントを基準に、他の性能要件を規定している。IECの電力計が直接接続される場合の電流を基礎電流(basic current:略称 Ib)と呼び、変成器付き電力計(transformer operated meters)の電流を定格電流(Rated current:略称 In)と呼んでいる。 IECの電力計では、最大電流は、基礎電流や定格電流とは別に指定されている。
2番目の重要な事実は、クラスという用語の意味の相違である。 ANSI規格では、クラスは計器が許容する最大定格電流を意味する。 例えばANSIクラス20の計器は、最大定格電流が20アンペアである。 一方、IEC規格では、クラスは精度を表す。 例えば、IECクラス2の計器は、測定誤差が2パーセントの精度定格を持っている。

■ 通信プロトコルの比較

これまで、各計器メーカーが独自のプロトコルを開発し、サポートしてきたため、様々な通信プロトコルが電子式計器の計測用に使われてきた。しかしながら、最近、複数のベンダーのシステムからメーター値を読むことができるよう、オープンな規格が採用されている。 例えば、複数の計器メーカーが、ANSIの通信規格を採用している。
ANSIとIECの通信規格には、いくつもの点で互換性がある。 例えば、IECプロトコル標準の最近のリリースでは、ANSI C12.19が規定したデータテーブルの使用を許している。 また、セキュリティと安全のため、ANSI、IECともに、電力計のカバー越しに光学的な通信路を使用することを認めていて、計測時の物理的な間隔や光学信号は、両規格で同じである。ところが、光学送信機と受信機の位置は両規格では逆になっている。(光学的なアダプタを用いることでどちらのタイプの計器から読み取ることも可能ではある)

■ まとめ

ANSI C12の電気計量規格は世界中の多くの国で使用されている。最も大きい市場はカナダ、メキシコ、および合衆国だが、アジア、中米、および南米地域の多くの電力会社でも使用されている。
IECおよびANSIの電気計量規格は、ともに、計器製造メーカー、電力会社および規制機関用にワンセットのドキュメントを提供している。それらには、両規格のこれまでの歴史的な要件が反映されている一方で、新技術を取り込むために定期的にアップデートされている。

以上、METERING.COMのアーカイブから、「電力計量に関するANSI規格の比較紹介」をご紹介しました。これまで電力計の仕様書を見ても良くわからなかったのですが、この記事を読んで幾分仕様書の中身が理解できるようになったので、今回ご紹介した次第です。
ちなみに、Itron社のホームページから、
IECの電力計と、ANSIの電力計の仕様書をダウンロードしましたので、ご興味があれば、上記それぞれのハイパーリンクをクリックしてみてください。
これを踏まえ、次回はスマートメーター/スマートグリッドに関連するANSI C12.22標準規格について、ご紹介しようと思います。