出典: http://drvino.com/wp-content/uploads/2007/10/istock1.jpg

前回に引き続き、GTMリサーチ社の調査レポート『2010年のスマートグリッド:市場セグメント、アプリケーションおよび業界のプレーヤー』の主要な調査結果「KEY FINDINGS」部分をご紹介します。
※逐次訳ではなく、部分的に超訳をも飛び越し(跳躍!)ている部分もあるかもしれませんが、そこは原文でご確認ください。

では、はじめます。

主要な調査結果:KEY FINDINGS

1. スマートグリッドは、従来からの電気の配送・消費・監視の方法に変革をもたらすものである。新たにネットワーク化された電力網すべてをインテリジェント化することで、以下の6つが可能となる:

① 電力供給信頼性および電力品質の向上
② 応答性の改善
③ 効率の改善
④ 現在および将来の需要にうまく対応
⑤ 潜在的に電力供給者/需要家双方のコストを削減
⑥ 新たなアプリケーションの通信基盤の確立

2. スマートグリッド市場を推進する11の要素は、以下のとおり:

① 増大するエネルギー需要
② エネルギー自給と安全保障
③ 温室効果ガス排出削減
④ 経済成長
⑤ 政策と規制
⑥ 技術の進歩
⑦ グリッド最適化による効率改善
⑧ 再生可能エネルギー・分散電源およびエネルギー・ストレージの増加
⑨ 最新の消費者サービス
⑩ インフラの信頼性とセキュリティ
⑪ 21世紀の電力品質

3. スマートグリッドが直面している3大課題は、以下のとおり:

① 相互運用性の標準
② エネルギーの効率的な利用を促進するユーティリティビジネスモデル
③ エンタープライズ大で現在および将来のアプリケーションをサポートできる適切なシステムアーキテクチャの開発

4. 2005年から2009年にかけて、約13億ドルのベンチャーキャピタルがスマートグリッド関連に投資されている。2009年上期を通して1億5百万ドルが費やされた。

5. 今日現在までで最も多くの投資を受けているスマートグリッド関連ベンチャー企業は、通信の世界で競争している会社である。しかし、この市場は、あと2~5年で成熟し、Ciscoのような業界大手のプレゼンスが増していくだろう。GTMリサーチ社は、アプリケーション領域に投資先が移っていくと予想している。

6. IT革命は、デスクトップコンピューティング、エンタープライズ・ネットワーキング、無線・有線通信のように、ハイテク産業に変革をもたらした。既存のネットワークとしては間違いなく最大の電力ビジネスにも、そのIT革命が押し寄せている。スマートグリッドの大部分は、エネルギー、ITおよび通信の市場の交点に位置している。

7. スマートグリッドは、アーキテクチャの観点から見ると論理的に以下の3階層で構成されている:

① 物理的な電力層(送配電)
② データ伝送と制御層(通信制御)
③ アプリケーション層(アプリケーションとサービス)
本報告書で、それぞれの層の、更に細かな層/詳細な市場セグメントについて見ていくこととする。

8. 最も重要なスマートグリッド市場セグメント/アプリケーションには、以下の7つがある:

① AMI
② デマンドレスポンス
③ グリッド最適化
④ 分散電源
⑤ エネルギー・ストレージ
⑥ (スマートチャージ、V2Gを含む)PHEV
⑦ 先進ユーティリティ制御システムとスマートホーム/ネットワーク

9. FAN(フィールドエリアネットワーク)部分は、これまで電力網内の通信とは無縁な領域だった。ところが、大規模にAMIが展開され、古い機械式メーターが電子式のスマートメーターに置き換えられて、初めて電力網内の通信に組み込まれることとなった。FANは、電力供給者と需要家のコミュニケーションギャップを橋渡しするだろう。自動検針に必要なAMI/FAN通信ネットワークは、検針のためのアプリケーションにとどまらず、その他のスマートグリッド・アプリケーションの種々のデータのやり取りを行うための伝送基盤と見ることができる。現在のスマートグリッド市場の進歩は、ひとえにAMIのおかげである。

10. 米国の電力研究所EPRIは、スマートグリッド構築費用として今後20年間で1650億ドル(毎年約80億ドル)の投資となると見積もっている。

11. 出力変動の大きな再生可能エネルギーを有効活用し系統連系させるには、スマートグリッドのインフラが不可欠である。再生可能エネルギー技術が典型的な例であるが、スマートグリッドは、新たな技術やアプリケーションを、目新しいものから日常のありふれた規範に変貌させるものである。

12. 発電は最大の温室効果ガス発生源なので、スマートグリッドの展開は、一つの投資としては、CO2排出量を減らす最大のIT投資となる。

13. 車の維持費、CO2排出量削減補助と性能向上で、PHEVは今後急激に増えていくと予想される。これはユーティリティにとって重大問題で、何百万台の車の充電スケジュールをなるべく均等にならすインフラ/システム(スマートチャージ)が必須となる。

14. スマートグリッドは、エネルギー供給・消費を最適化する役割に加えて、経済成長エンジンとしての重要な役割を秘めている。エネルギー系コンサルタント会社KEMAの調査(『The U.S. Smart Grid Revolution』2008年12月)によると、スマートグリッド関連プロジェクトにより今後4年間で約28万人の雇用が創出される。ユーティリティ業界では不足しているが、他の業界ですでに必要なノウハウを持つ専門技術者やマーケターにとっては、千載一遇のチャンスである。おまけにユーティリティの従業員の老齢化が、この業界での新たな職の創出に一役買っている。

15. 当初の調べによると、スマートグリッド・ベンチャー企業の役員の約70%は、もと無線通信やITハード・ソフト企業従事者である。スマートグリッドの「賢さ」の多くは、異なる業界から移転してきたものである。

16. 急成長するスマートグリッドのインフラ/サービス市場を狙って大小数百の会社で競争が始まっている。この報告書では、スマートグリッドにエンド・ツー・エンドでかかわっている主要32ベンダーをピックアップし、そのプロファイルを紹介する。

17. エンド・ツー・エンドのスマートグリッドのインテリジェンスおよびサービスは長期的な解決策であるが、市場は段階的に成長していくものであり、最初はAMIの展開が重要なフェーズとなる。

18. 2015年までに、北米トップ15のAMI展開だけでスマートメーターが4110万台設置される予定である。

19. スマートグリッドの先進的なアプリケーションの多くは、市場のニーズと、すでに利用可能な技術に基づいて、漸進的に開発されていくと予想している。例えば、PHEVでいうと、V2Gのような複雑な形態のアプリケーションを実現する前に、スマートチャージのような、V2Gと関連するものの、より単純なアプリケーションが実現されていく。

20. デマンドレスポンスは今日すでに実行可能なアプリケーションではあるが、ビジネスモデル的にはそれほどインテリジェンスに秀でたモデルではない。技術進歩、ベンチャーキャピタル、新製品の入り込む余地がある。今後、デマンドレスポンスは(石炭、天然ガス、原子力、再生可能エネルギーの4大燃料に次ぐ5番目の燃料として)バーチャル・ピークパワーをユーティリティに提供するだけでなく、そのようなエネルギー調整/削減を正確に、押し付けがましくなく実施する方法がとられるだろう。

21. FANのネットワーク通信は今後注目すべき領域である。北米では、WiMAXのような次世代ネットワークや、(AT&TやT-mobileのような)公共無線ネットワークプロバイダーが、現在用いられているRFメッシュネットワークに挑戦して来ている。更に、インターネット界のネットワークの巨人であるCiscoが、この領域にも参加してきており、いろいろな角度からの競争が起きている。

22. スマートグリッドを推進するに当たっては、電力の売上を増加させなくてもある程度ユーティリティの収益が保障され、エネルギーの保全と効率化推進のインセンティブが働くような料金体系を確立するために、規制改革が必要である。さもなければ、(多くの場合、ユーティリティも民間投資家からの資金で事業を行っているので)ユーティリティに電力売上を落とすよう頼むのは、スターバックスにコーヒー販売量を減らすように言うのと同じである。

23. 消費者がスマートグリッドにかかわるようにするための最も重要な規制改革は、電力消費に対する固定の小売料金制度を廃止することである。時間帯別料金制度が導入されない限り、いつ電気を使っても一定の従量料金で課金されるので、例えスマートメーターを導入し、ホームエネルギー管理システムを提供しても功を奏さない。また、時間、日、季節によってどのように電気代が変化するかの情報提供も必須である。消費者は、それらの情報と快適性の兼ね合いで、いつ、どれくらい電気を使うかを決定する。

24. スマートグリッドを、「1回限り」のプロジェクトと捉えている電力会社が見受けられるが、それは誤りである。スマートグリッドのアプリケーションやソリューションは、統合されて真価を発揮するものであり、スケーラブルな本質を備えているので、この際、コストと時間のかかる縦割りのアプリケーション展開パラダイムから脱却し、一から、トップダウンで企業大のシステムアーキテクチャを開発・採用すべきである。

25. エネルギー・ストレージ(と新しいバッテリーテクノロジー)は小規模分散発電が、大規模集中発電所にとって代わるために役立つものであり、再生可能エネルギーを有効利用するための“missing link”(完成のために欠けている物)と考えられてきた。その考え方に間違いはなく、エネルギー・ストレージは次世代電力網の重要な構成要素なので、近年膨大な研究開発費が投入されている。ただし、今のところ、コスト競争力のあるストレージができあがるのは、業界筋で“聖杯を求めるようなもの”(渇望されてはいるが、困難な探求の対象)と考えられている。

26. ホームエリアネットワーク(HAN)はまだ開発フェーズにある。(無線および有線による)ハイブリッド・アプローチで多数の装置に接続し、そこからホームエリアへの接続が行われるだろう。今のところZigBeeが有力であるものの、WiFi、ZWave、6lowpan、HomePlugなど他の方式が競い合っている状況である。

GTMリサーチ社の調査報告書のエッセンスがギュッと絞り込まれて記載されている感じですが、いかがでしょうか?

次回は、1章のスマートグリッド分類図をご紹介したいと思います。