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GTMリサーチ社の調査レポート『2010年のスマートグリッド:市場セグメント、アプリケーションおよび業界のプレーヤー』をご紹介しています。
今回は、1章 スマートグリッドの分類:TAXONOMY OF A SMARTER GRIDの部分を紹介します。
では、はじめます。
1. スマートグリッドの分類:
TAXONOMY OF A SMARTER GRID
1.1 市場の定義とスマートグリッド分類図詳細
GTMリサーチでは、スマートグリッドを大きく以下の3つの産業/セクターの集合体とみなしている。
・電力(エネルギー)
・通信基盤
・IT(情報技術)
この3つのレイヤそれぞれで知識の粋を集めてはじめてスマートグリッドが可能となる:
・物理的な電力レイヤ:送電および配電の知識
・データ転送と制御のレイヤ:通信と制御の知識
・アプリケーションのレイヤ:アプリケーションとサービスの知識
電力会社は、従来から本社センターと変電所間でデータをやり取りするためにLAN、WANを構築してきたが、電力会社とユーザ間の通信に関しては手を付けなかった。FAN(フィールドエリアネットワーク)部分は、これまで電力網内の通信とは無縁な領域だったのだ。ところが、大規模にAMIが展開され、古い機械式メーターが電子式のスマートメーターに置き換えられて、FAN部分が初めて電力網内の通信に組み込まれることとなった。こうして実現したエンドツーエンドの通信レイヤの出現と、電気を作り、送配電し、消費されるまでを改良・最適化する新たなアプリケーションが継続して開発されたことがスマートグリッドの革命をもたらしたのである。更に、真のスマートグリッドでは、データだけではなく、電力自体も双方向にやり取りされる。なぜなら、より賢くなったグリッドは、太陽光パネルや、マイクロ風力タービン、据え置き型燃料電池などの分散電源を有効活用し、大量の電気を自由に流通させることができるようになるからである。
スマートメーターはデータを搬送するための通信基盤を必要とする。米国では、新政権が、4000万台のスマートメーターの配備を標榜しており、他の開発国や開発途上国でも、それ以上に野心的なスマートメーター化プロジェクトが進行中である。
AMIを理解するには、次の2つのレイヤに分けて考えると良い:
1.トランスポート層:インテリジェントなFANを介してスマートメーターとWAN間でデータ授受を実施する
2.アプリケーション層:電力会社にとって価値のある、メータリングに関連するアプリケーションを実行する
AMIのトランスポート層は、テレコム業界で言われるところのFANあるいはラストマイルで、それは電力会社と顧客を結びつける最後の一歩である。エンドツーエンドのこの接続性が、コミュニケーションと情報技術の採用において他産業の後塵を拝していた電力業界に巨大な変化を引き起こすのは必須で、さまざまな新しい先進的なアプリケーションと技術に門戸を開いたのである。
さらに、AMI/FANは、単に電力会社の運用管理センターとの架け橋となるだけでなく、ホームエリアネットワーク(HAN)と呼ばれている、家屋やビル内のネットワークとの架け橋も形成する。つまり、エンドツーエンドのコミュニケーションは、電力会社の発電プラントという電力網の末端から家屋/ビル内の照明機器、冷蔵庫、洗濯機、空調設備その他にいたる個々の電気器具まで伸び広がり、電力会社と需要家の双方が、よりつぶさに電力需給決定を制御することを可能にしたのだ。この接続性が、(電力会社が電力需要のピークを抑制するためにエンドユーザの電気機器の電力使用量を下げる)デマンドレスポンスのようなアプリケーションを着実に実施することを可能にしたことは非常に重要である。
2009年、スマートグリッドに関して繰り返しおこなわれた質問は「何がスマートグリッドのキラー・アプリケーションか?あるいはキラーアプリケーションとなるか?」だった。GTMリサーチはこれに対して、以下のように主張する。
本レポートで取り上げたすべてのアプリケーションは、それぞれ、電力の発電、送配電、需要の分野(あるいはそれらを組み合わせた分野)で画期的なものであり、キラー・アプリケーションと呼ぶに値すると。その証拠として、我々が作成したスマートグリッド分類図に載せたそれぞれのアプリケーションに関連して、すでに新たなビジネスが立ち上がっている。
デマンドレスポンスやグリッド最適化など、新興のアプリケーションとその市場セクターを調べれば調べるほど、エンドツーエンドのコミュニケーションがもたらす社会的便益だけでなく、そこに潜んでいたビジネス機会があらわになってきた。アップル社のiPhone用アプリケーションを作るのと同様、この新技術/プラットフォームの上でのアプリケーション作りは非常にエキサイティングで、ビジネス機会に満ちているのだ。
通信の領域では、ネットワークが毎年改良されていくのが常識になっている。しかしネットワークの改善自体が喜ばしいことではなく、ゲームを変え、イノベーションを推し進めるのは、その通信領域上に展開されるアプリケーション空間である。それらの新しいアプリケーションが足場を固め、より広く市場に浸透するのにどれくらいかかるか?それは今のところ不明である。ある者は、2006~2010年のキラーアプリはAMIだと主張している。それが、エンドツーエンドのフルコミュニケーションを可能とするものだからである。
ただし、スマートグリッドの革新をもたらすAMIの歴史的な重要性は否定しないものの、2015年になってもAMIがキラーアプリであり続けることはないだろう。エンドユーザが電力の消費や発電をおこなう上で、より大きな進化をもたらすと期待される他の市場セグメントやアプリケーションが存在するからである。
AMIの配備は、現在、電気の生成から消費に至る活動に大旋風を巻き起こしている。電力網の電力側の末端では、先進ユーティリティ制御システムが、電力会社を、単に新システム/機能としてではなく、従来のサイロ化されたシステムに慣らされた業界を一足飛びに、企業大にまたがるシステムを統合する嵐に巻き込んでいる。電力網のもう一方の末端では、ホームエリアネットワークが、消費者の電力利用形態を変えるものとして期待されている。また、その間にも多くのアプリケーション/技術が互いに積み重なりあって、集団でスマートグリッドの真のビジョンに向かって進行中である。電力、通信およびアプリケーションの3つのレイヤがきっちり一つにまとまれば、グリッドは、これまでとは見違えるものになるだろう。
これまで、NISTのスマートグリッド概念モデルを含め、スマートグリッドを説明するいろいろな図を見てきたのですが、このGTMリサーチ社の分類図は、スマートグリッドを体系だてて眺める上で非常に良くできていると思います。
・スマートグリッドに関連するいろいろなベンダーがいますが、彼らはスマートグリッド全体のどの部分に関するソリューション/サービスを提供しているのか?
・スマートグリッドに関連するいろいろな技術要素がありますが、それらはスマートグリッド全体の中でどのような位置づけにあるのか?
・スマートグリッドに関連するいろいろな標準がありますが、それらの標準はスマートグリッド全体のどの部分の標準なのか?
など、いろいろな使い道がありそうです。
このうちスマートグリッドを構成する技術要素の整理のためにGTMのスマートグリッド分類図を使ったものを作成してみましたので、もしご興味があれば「スマートグリッド技術の整理」をご覧ください。
次回は、分類図それぞれのレイヤの説明部分をご紹介します。
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