今回は、短い記事ですが、Bloomburg Businessweekから「Mapping Out an Electric-Car Future (http://www.businessweek.com/technology/content/jun2010/tc2010063_322564.htm)」の記事をご紹介します。
電気自動車の将来を見極めよう
企業がEV充電サービス提供にしのぎを削りだしたが、主要なアプローチも技術標準もまだ明らかになっていない。 Bloomburg Businessweek -Alan Ohnsman
電気自動車(以下、EV)ファンのAnton Klima氏は、2代目のEV車の充電に、自宅の太陽光パネルで発電した電気を用いているが、外出先では、10年以上前カリフォルニア州で電気自動車キャンペーンが展開された時に作成された公共充電スポット情報を元に、EVの充電をする。その際問題になるのが、充電プラグの形状の違いで、絶えず3種類の充電プラグアダプタをEVに積んでいる。
しかし、米国の政策担当者はEVの将来の地図を描くに当たって、このような熱心なEV信奉者の自発的な協力に頼ってばかりではいられない。オバマ大統領は、輸入原油への依存度を減らし、温室効果ガス排出を削減するために、2015年までに百万台のEV/PHEVが路上を走ることを目指している。そして、日産リーフとChevy Voltはこの秋発売に向けて、用意万端整っている。
ただ、問題なのは、それが実現した際、すべてのクルマに対して公共充電スポットが十分かどうかだ。EVのガス欠問題、すなわち、EVバッテリーが上がってしまわないため、EVのドライバーは、ショッピングセンター、レストラン、パーキングメーターなど、どこで充電できるか知っておかないとオチオチ遠出ができない。
カリフォルニアに本拠を持つEV充電ステーション・メーカーのクーロンテクノロジーズ社CEO、Richard Lowenthal氏は言う。「住んでいるところと、仕事をしているところ。EV1台につき2台の充電器が必要だ。そのインフラの構築は、120億ドル規模の産業となるだろう」
充電の必要性を認識した米国国会議員たちは、5月27日、EV車購入同様、EV充電スタンド建設にも税制上の優遇措置を適用する議員立法案を提出した。6年以内に70万台のEV充電を可能とするよう、エネルギー省に8億ドルの供与を求めたものである。
クーロンテクノロジーズ社は、上記の補助金を得て21世紀の給油所を作ろうとする、いくつかの企業の1つで、2011年末までに、一基2,000~5,000ドルで全米9つのメトロポリタンエリアに4600台の充電器を設置する計画を持っている。彼らは、単に充電スポットを設置するだけでなく、EVドライバーを近くの空き充電ステーションに誘導するスマートフォンを利用したナビゲーションソフトも提供する。
アリゾナに本拠を持つECOtality社は、1億ドルの連邦政府資金を得て、日産と共同で、今後3年以内に全米5つの州に、合計11000台の充電ステーションを設置する。また、日産は、AeroVironment社と共同で家庭用の充電器を開発中で、公共充電スポットのネットワーク化も検討している。カリフォルニア州パロアルトに本拠を持つBetter Place社は、別のアプローチを取り、充電する代わりに、フル充電済みのEVバッテリーに取り替える、バッテリー交換ステーションを設置する計画だ。このサービスは来年イスラエルとデンマークで運用開始される予定で、米国でも、ハワイとサンフランシスコベイエリアが最初の導入候補にあがっている。
ワシントンDCに隣接するメリーランド州アナポリスに本拠を持つSemaConnect社は、公共充電用に2,500ドルの壁掛けタイプの充電器を開発した。すでにワシントンエリアの3つの地区で同社の充電器が導入されており、その1つであるアナポリスのホテルでは、10台のEVシャトルバスの充電に使用されている。
電力会社も、EVの普及に対して準備をし始めている。表向き、「当面、EV普及による電力需要が配電系統へ影響することはない」としているが、場合によってはトランスなどを交換しなければならない。人々がいつ、どのようにEV充電するか知るためには、スマートメーターを設置して監視することも必要で、また、古い家屋では220Vの充電器に対応するため、新たに配線しなおす必要がある。
一方で、行き過ぎに対して警鐘を鳴らす専門家もいる。EPRIのMark Duvall氏は次のように語っている。「オバマ大統領のいう目標を達成するのは困難だろう。2013年までの年間EV販売台数は15,000台どまりと思われる。人々が何を求め、何を必要としているか良く調べもしないで、“キンピカ”の立派な充電設備をたくさん設置するのは、金をどぶに捨てるようなものだ。」
要点:企業がEV充電サービス提供にしのぎを削りだしたが、主要なアプローチも技術標準もまだ明らかになっていない。
みなさん、いかがでしょうか? Alan Ohnsman記者の指摘どおりだと思います。政治家はトップダウンで物事を進めようとし、予算をつける。予算が付くと、それを目当てにベンチャー企業があつまる。彼らが切磋琢磨して結果的に良いものが出来上がる-というのが、米国流なのかもしれませんが、そもそも政府が目標に掲げたとおりEVが路上を走り、EV充電ステーションが足りなくなるような事態が今すぐ起きるのかどうか?そこが問題です。
EV/PHEVを買うかどうかは、一般市民の判断。政府の思い通りにEVに買い換えるかどうか疑問です。(特に政府のEV普及目標値が高い場合) ここは、購入者の視点に戻って、実質的なEV普及予測を行ってみる必要があるのではないでしょうか?
ところで、日本の場合はどうでしょう?
昨年(2009年)11月4日、 経済産業省は、自動車業界のトップらを集めて次世代自動車戦略研究会を発足させました。EV開発促進やハイブリッド車などの国際競争力強化に向けた中長期的な戦略を描き、日本としての国家的戦略を打ち立てようというものです。その報告書『次世代自動車戦略2010 (http://www.meti.go.jp/press/20100412002/20100412002-3.pdf)』が今年(2010年)4月に公開されました。そこでのEV等の普及予測ですが、「メーカーの努力だけでは、2020年にせいぜい20%の国内でのシェアしかないところを政府がインフラや、普及にむけての施策を積極的に取り組み、底上げすることで最大50%を次世代自動車に置き換えることができる」という内容になっています。(ただし、下表のとおり、ここでいう次世代自動車には、EVだけでなく、PHEV、HEV、燃料電池自動車、クリーンディーゼル自動車が含まれています )
出典:次世代自動車戦略2010
政府目標の2020年50%という数字だけを見ると、本当に実現可能な数字か?地方空港の利用者予測を引き合いに出すまでもなく、「最初に目標値ありき」でコトを進めていないか?再確認する必要があると思います。
次回は、「日本の電気自動車の将来を見極める」ため、上記の次世代自動車戦略2010の政府目標が達成された暁には、オバマ大統領風に言うと、2020年、路上にどれくらい電気自動車が走っていることになるのか?果たして、それが電力系統を脅かすほどのものなのかを検証してみたいと思います。
終わり
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