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スマートグリッド業界のプレーヤーを概観するため、GTMリサーチ社の調査レポート『2010年のスマートグリッド:市場セグメント、アプリケーションおよび業界のプレーヤー』の5章を簡単にまとめています。今回は第5.4節と5.5節です。

なお、従来どおり、文字色=緑の部分は、筆者の追記部分です。それと、また、一部筆者の思いがはいった超訳(跳躍?)になっているかもしれないので、予めお断りしておきます。

5.4 グリッド最適化/配電自動化

5.4.1 ABB

ABBは、電力業務に携わる顧客プラントの制御と最適化に関するトータルサプライヤーで、近年、配電管理システムを、次世代電力制御システムに纏め上げ、統合ソリューションの提供を目指している。
ABBが提供するスマートグリッド・アプリケーションには、①不平衡潮流分析、②故障箇所の検出、③復旧および迂回、④様々なシステム(SCADA/EMS/DMS/OMS/AMI)の統合ソリューション、⑤電圧/無効電力の最適化、⑥遠隔自動開閉などがある。これらのソリューションは、主に配電ネットワークと電力会社の制御室を媒介する役割を担っているものである。

ABBグループは世界約100か国に事業展開しており、従業員数は、約12万人。北米事業部はノースカロライナ州ケアリーに本部を置き、約1万5000人が働いている。創業以来100年以上経っているが、信頼できるグリッド・インフラを開発するため、特にエネルギー貯蔵分野に注力して最近十年間のR&Dで100億ドル以上を費やしている。

ABBは電力業界向けに、広範な製品とサービスを用意し、需要家のスマートメーターから電力会社の制御センターまでエンドツーエンドのソリューションを提供している。他に、送電網向けの製品として、HVDC Light(高圧直流送電システム)、FACTS(フレキシブル交流送電システム)およびWAMS(電力品質広域計測解析システム)などがある。
変電所の自動化と保護のための相互運用性標準策定の必要性をかねてから主張しており、
保護リレー、通信ゲートウェイ、変電所コントローラーのような変電所/配電自動化デバイスの中で使用されているABB製の送配電保護装置や制御装置は、IEC 61850国際標準に準拠していることを保証するため、厳格な試験が実施されている。
そのため、IEC61850標準規格に準拠したABBの製品は、世界57か国、600を超える電力系統で使用されている。米国でも、スマートグリッドでの相互運用性標準としてIEC 61850を採用することが、エネルギー省のチュー長官および商務省のロック長官により2009年5月発表された。

配電関係のABBの競合会社としては、S&C Electric、Cooper Power SystemsおよびSELがある。GEやシーメンスとも競合関係にあるが、GEは発電部門に、シーメンスは送電部門に力を入れている。

【アナリスト ノート】

ABBは、AMIでの相互運用性の確立に非常に関心を持っており、自動復旧サービスの提供では、シルバースプリング・ネットワークと提携している。

5.4.2 SEL

SELは、電力系統の保護、監視、制御、自動化からメータリングにいたるまで、完全な製品ラインとサービスを提供している。
1984年に世界初のデジタル・リレーを製品化した。この製品は、故障箇所検出その他の機能を従来よりも低コストで実現し、電力系統保護の分野で多大な功績をもたらした。スマートグリッド関連では、配電系統の信頼性向上のため、①遮断器制御、②保護リレー、および③情報処理装置を含むグリッド最適化ソリューションを提供している。これらのソリューションは、迅速に故障箇所を特定・分離し、電力を復帰させるとともに、需要を監視して、グリッドの安定性の維持管理を行うことができる。

コロラド州ボルダーで行われたSmartGridCityプロジェクトのパートナー企業の1つで、このプロジェクトでも、同社のスマートグリッド技術は、系統の運用効率・安定性向上に寄与した。SELの変電所管理システムは、システムの保護・測定以上の働きをし、個々の変電所管理システムが統合されて、SmartGridCity全体の経済的かつ安全なシステム運用が行えることを実証して見せたのである。

現在既に使用されている以下のSEL製品は、グリッドをよりスマートで、より安全に運用するため通信・制御技術を用いている:
・例外に基づいた変圧器保守
・系統のセルフヒーリング用遮断器
・迅速・完全な故障箇所検出を行う故障表示器
・高度な発電技術を高信頼度で制御するための分散型インテリジェンス・ソリューション
・省エネを支援し、電力品質管理にも貢献するスマートメータリング・ソリューション
・ より安全な系統運用のためのサイバーセキュリティ・ソリューション

また、更に進んだ「スマート」なフィーチャーを有する製品も提供している:
・シンクロフェーザー
・配電系統での故障箇所の特定。
・電力品質の記録
・統合メータリング
・ 高度なセキュリティ・フィーチャー

【アナリスト ノート】

SELは、プログレス・エナジー、AEP(American Electric Power)、コモンウェルス・エジソン(ComEd)、メキシコ国営電力会社、メキシコ連邦電力委員会(Comision Federal de Electricidad)その他世界中で多くの主要な電力会社にスマートグリッド製品とソリューションを展開している。
結論:SELは今後もスマートグリッド分野で発展し続けるだろう。

5.5 ソフトウェア、ソリューション及びアプリケーション

5.5.1 アクララ・ソフトウェア:Aclara Software

アクララは、エスコ・テクノロジーズ社の子会社で、メーターデータ管理(MDM)、ネットワーク・プランニング、需要予測および顧客情報システム(カスタマケアおよびビリング・システム:CIS)にフォーカスしたスマートグリッド・ソフトウェア会社である。

1997年設立。 2005.年にエスコに買収されたが、その後もアクララとして活動している。アクララは、1998年にEcoGroup社、2004年に ICF Energy Solutions社を買収し従業員数、製品数並びに顧客を拡大。現在従業員数は90人強で、メータリングの姉妹会社:DCSI社およびHexagram社と連係して事業を展開している。

全世界で95社以上のエネルギー会社、数百万のエネルギー会社取引先でアクララのアプリケーションが使用されており、エネルギー関連の初期投資と運転コスト削減に貢献している。また、アクララはHEMSをポータルの形で提供しており、利用者向けにenergyguide.comで省エネコンサル/情報提供を行っている。

【アナリスト ノート】

アクララのMDMソリューションは、アリゾナ州やペンシルバニア州の公益事業会社で使われており、アリゾナのAMIプロジェクトでは80万台のスマートメーターの情報を管理している。

5.5.2 エコロジックアナリティックス:Ecologic Analytics

エコロジックは、公益企業向けにメーターデータ管理(MDM)や意思決定支援ソリューションを提供する会社である。
同社のメーターデータ管理システム(MDMS)は、(複数のAMIシステムとインタフェースする)ゲートウェイエンジン、メーターデータ・ウェアハウス、検針データ管理、検針データ分析、ナビゲーターのGUI、(計測されたデータの)自動検証エンジン、ネットワーク・パフォーマンス・モニタ、レポート作成エンジン、(検針異常などで自動的に作成する)作業指示エンジン、リアルタイム停電検証エンジン、料金計算エンジン、一般家庭向け料金分析API、および(スマートメーターが付いていない柱上トランスなどの電力量を把握するための)仮想メータリング合算コンポーネントなどから構成される。
MDMSは、旧来の自動検針(AMR)やCIS(料金請求を含む顧客情報管理)のシステムともインタフェースし、企業内のビジネスユーザ/アプリケーションに必要なデータを渡すことができ、検針員から入力された検針データも受け取ることが可能な、柔軟かつ高度にスケーラブルなアーキテクチャーで、その「エンジン」と分析ロジックは、公益企業の重要なビジネスプロセスを支援することができる。

ミネソタ州ブルーミントンに2000年に設立され、2008年、旧社名WACS: Wireless Applications & Consulting Services, LLCから現在の社目に変更された。2005年、PG&EのAMIプロジェクトで、エコロジックのMDMSが採用され、同社がこの分野で成功する大きな足がかりとなった。
このプロジェクトでは、同社のMDMSがAMIベンダーの自動検針システムとPG&Eの設備管理、顧客情報管理、作業管理、エンジニアリングおよび停電管理システムのようなバックオフィス系を取り持つ要のシステムとなった。
PG&Eのサービスエリアで930万台のメーター(510万台の電力メーターと420万のガスメーター)に対する双方向のスマートメータリングを実現する上で、MDMは重要なコンポーネントである。
競合会社には、eMeter、アクララ、SAP、オラクルなどがある。

【アナリスト ノート】

2009年2月、同社は、テキサス州の公益企業Oncorと2番目の大きな契約を締結し、Oncorのサービス地域の300万世帯を超えるメーターデータをMDMSで管理することになった。このプロジェクトは、北米で最大級のAMI展開プロジェクトの1つで、ランディス+ジルがスマートメーターを提供し、2012年間までに完成する予定である。

エコロジックとランディス+ジルの事業提携は、2001年に始まり、その後2007年ランディス+ジルが行った戦略的投資で一挙に拡大した。また、IBMは、エコロジックを、世界中のどんな公益企業でも基本的に利用可能な、1000万メーターまでのスケールで処理可能なシステムを提供するベンダーの1つと認定している。

5.5.3 グリッドネット:GridNet

グリッドネットはネットワーク管理ソフトウェアのプロバイダーで、第4世代ネットワークのWiMaxで使われるよう設計した、次世代スマートメーターのリファレンス・デザインを開発した。このリファレンス・デザインは、2008年、GE Energyにライセンス供与され、GEの最新スマートメーター製品ファミリーに適用される模様である。
(GEは、公式にこの製品の発売を発表していないが、「GE WiMax SmartMeter」と命名されるとうわさされている)また、この製品はグリッドネットのPolicyNetをベースとしたものである。
カリフォルニア州サンフランシスコに本部を置くグリッドネットは、2006年設立され、創設者のレイ・ベルは、元シスコにいたベテラン。Foundation Capitalを経由して、Silver Springs Networksの臨時CEOの経歴も持つ。

これまでグリッドネットの動きは目立たなかったが、最近、4つの電力会社が始めた、WiMaxを使うAMI通信ソリューションの実証試験に関わっていることを明らかにした。ただし、公式には、GEが実証試験の主契約者で、グリッドネットはネットワーク管理ソフトウェアを提供するという形になっている。
「電力業界で成功するには、ベンダーは、公益企業と強力な信頼関係を気づかなければならないが、それは、新興企業にとっては難しい。そこで、戦略的に、GEの持つ公益企業との長年の関係を利用しよう」というのが、同社の経営戦略である。

もう1つ注目すべきなのは、GE WiMaxSmartMeterはインテルのWiMaxチップセットを使用するだろうということだ。(現状では、WiMaxという選択は、コスト的に高くつくが)レイ・ベルは、WiMaxチップの価格は、今後急激に低下していくだろうと主張している。

AMIネットワーキングの世界をリードするシルバースプリング、およびトリリアントの2社は、無線局免許が不要な900MHz周波数帯をメッシュネットワークに使用しているが、WiMaxは無線局免許が必要で、恐らくより安全で、信頼性も高い。

レイテンシがRFメッシュネットワークより低いのがWiMaxの2番目の有意な点である。多くの業界専門家が、RFメッシュネットワークのレイテンシの高さに関して、将来のスマートグリッド・アプリケーションには不十分であると警告している。

一方、WiMaxの短所は、コスト高となることである。更に、WiMaxが現時点ではまだ大規模に展開していないことも考慮しなければならない。

【アナリスト ノート】

WiMaxは、AMIやグリッド最適化のような将来のスマートグリッド・アプリケーションの実行にも耐えうる点で、選択肢の1つというよりは、スマートグリッドの通信基盤を塗り替える可能性を秘めた技術である。そのようなWiMaxを推進するグリッドネットには、非常に興味をそそられる。

同社はWiMax技術に賭けており、ここ1,2年でWiMaxがどれほど市場に受け容れられるか、非常に興味深い。

5.5.4 イーメーター:eMeter

イーメーターは、MDMとAMIを統合し、スマートメーターから届く大量データを管理するソフトウェアを提供する会社で、米国、オーストラリアおよびインドに事業所を持っている。

EnergyIPが同社の主力製品で、特定のAMIベンダーに依存しない統合プラットフォームとなっており、MDMを介して任意のAMIシステムと電力会社のバックエンドの情報システムを連係させるアドバンストメータリング情報システム(AMIS)である。
電力会社の合併などで発生する複数のAMIシステムの混在に対して、これまでのAMIに対する投資をフル活用でき、AMIの展開コスト、データ管理コストと運用コストを最小化しながら、デマンドレスポンスやリアルタイム監視を通して、エネルギー利用効率と信頼性向上を可能とするソリューションとなっている。

EnergyIPのAMIビジネスプロセス管理アプリケーション・スイートは、①業務用・産業用メーターからの一定時間間隔でのデータ収集、②複雑な料金計算、および、③詳細なエネルギー使用データのウェブ・アクセスなどの機能を提供している。

また、スマートメーターの展開には数年を要するので、イーメーターはスマートメーターの導入計画作成・展開・構成管理だけでなく、MDM/AMIおよびデマンドレスポンスの展開戦略のコンサルティング・サービスも提供している。

競合会社には、アイトロンやセンサスのような、自前のAMIおよびMDMソフトウェアを提供している会社と、オラクルのようなソフトウェア会社がある。

【展開】

2009年2月、イーメーターは、テキサス州の電力会社センターポイント・エナジーと、その地域に200万台のスマートメーターを展開する契約が取れたことを発表しました。
その他にも、アライアント・エナジー、ジャクソンビル電力公社およびカナダ-オンタリオ州と契約している。これらの契約をあわせると、同社のソリューションの下で2000万台のメーターが管理されることになる。

【アナリスト ノート】

何百万台ものスマートメーターのデータを管理するMDMは、競争の激しい分野であるが、現契約下で合計2000万台のメーターを管理するイーメーターは、MDMの分野で好い位置を占めている。
従来、月に一度使用量を計測していたとすると、スマートメーターが1時間ごとに計測するとしても、メーター計測データは、1台当たり四半期ごとに約2000倍(24×30×3)となる。したがって、今後AMIが本格展開すると、公益企業は膨大なデータを監視する必要に迫られる。
それは、イーメーターにとって商機であるが、オラクル、SAPおよびIBMのようなエンタープライズ・ソフトウェア分野の重鎮がこの領域でのビジネスに名乗りを上げており、より堅牢なソリューションを好む公益企業は、それらのビッグブランドに惹かれる恐れがある。

5.5.5 グリッドポイント:GridPoint

グリッドポイントは、2003年に設立され、GridPointの本部はバージニア州アーリントン。
「SmartGrid Platform」の名前で登録商標されたソフトウェアは、住宅・業務顧客向けにエネルギー利用状況を監視できるにしているだけでなく、電力会社が即座に電気需要の流れや電力貯蔵を管理できる技術の提供を目指したものである。
公益企業向けには①エネルギー効率、②負荷管理、③再生可能エネルギー管理、④エネルギー貯蔵管理、および、⑤電気自動車管理を改善するソリューションを提供、消費者向けには、エネルギー効率と信頼性の向上、および節約を促すオンライン・エネルギー管理ポータルを提供している。そのために、グリッドポイントは多くの新しいスマートグリッドの分野向けのソフトウェア・ソリューションを備えている。
SmartGrid Platformは、電力系統とITを融合して、分散型エネルギー資源のインテリジェント・ネットワークを形成し、負荷制御、エネルギー貯蔵に加えて、電力の「生産」にも寄与するシステムとなっている。また、ピーク時には、分散電源設備に貯蔵された電力や顧客の負担軽減により、効率的に需給バランスをとることができる。
シングルインタフェースを特徴としており、公益企業の制御室から(バッテリーとしてのPHEV、太陽光パネル、風力タービン、高度なエネルギー貯蔵テクノロジーや、サーモスタット、電気温水器、プール・ポンプなどのような家庭でのデバイスまで)、様々な分散型エネルギー装置を管理できる。

グリッドポイントは、現在、エクセル・エナジー、オースチン・エナジーおよびデューク・エナジーのような公益企業と共同して以下のスマートグリッド・アプリケーションを開発している:
①高度な需要管理(負荷の計測と制御)、②エネルギー貯蔵(瞬時予備電力の提供)、③再生可能エネルギーのインテグレーション(とりわけ風力発電と太陽光発電)、④PHEVのインテグレーション(プラグインハイブリッド車の充電制御とV2G)、⑤高度なユーティリティ制御コンソール(既存のSCADA/EMS制御コンソールを補佐し、より広範囲な監視・制御機能を備えたもの)、⑥ホームエネルギーマネジメントシステム(HEMS)(およびそのポータル)

最近のニュース】

GridPointは、2008年9月、シアトルに本拠を置くV2Greenを買収したが、V2Greenは、PHEVのバッテリー内の電気を系統に戻すV2G技術を保有する会社である。

2つの実証実験】

1)エクセル・エナジーとの電力貯蔵に関する実証実験:

グリッドポイントはエクセル・エナジーのテクノロジー・パートナーに選出されており、ミネソタ州ルバーンで11MWのウィンドファームと1MW(7.2MW/hの容量の)NaS電池を組み合わせた電力貯蔵の実証実験に携わっている。
注:2008年5月のラックス社の調査では、建造されている風力発電所の発電量の10パーセントがエネルギー貯蔵されただけでも電力会社に500億ドルの価値が生じるが、公益企業は新技術採用に前向きではないので、実際にエネルギー貯蔵が2012年までもたらす価値は6億ドルどまりだろうと予測している。

2)デューク・エナジーとのPHEV実証実験:

グリッドポイントは、デューク・エナジーとスマートチャージに関する実証実験を実施している。そこで用いられているグリッドポイント(実際はV2Green)のソフトウェアは、PHEVのドライバと、系統利用状況の両方の必要性を満たすように、充電タイミングと充電のペースをコントロールすることができる。これは、一種のデマンドレスポンスの機能である。

【アナリスト ノート】

2009年2月、グリッドポイントはエンタープライズ・ソフトウェアの巨人であるOSIソフトと戦略提携したことを発表した。OSIソフトのPIシステムは、時系列のリアルタイム・データとイベントを管理するエンタープライズ・インフラの業界標準と考えられており、この戦略提携は、既に多くの公益企業で使われているOSIソフトのPIシステムをテコとして、グリッドポイント・ソリューションの普及と、大量のリアルタイム処理までのスケールアップに貢献するものと考えられる。
注:数千人規模の実証実験と公益企業規模へのスマートグリッド展開は全く別物であり、後者でのデータ処理には、はるかに大きな課題がつき物である。

5.5.6 OSIソフト:OSIsoft

OSIソフトは1980年に創設され、米カリフォルニア州サンリアンドロに本社、世界に業務拠点を持つ非上場企業。企業の運用状況をリアルタイムで把握し、企業経営のために包括的な可視性を与えるミッション・クリティカルなソリューションを提供する会社である。
同社の PIシステム(プラント情報管理システム)は、(文字通りプラント向けのシステムで、スマートグリッド専用のシステムではないが)、AMIのようなスマートグリッド・アプリケーションを運用・監視するために必要な時系列データを収集・管理するインフラとしても最適である。
このリアルタイム・データ・プラットフォームは、エネルギー企業を始め、公益企業、プロセス製造業、ライフサイエンス、データセンターなど全世界1万4千箇所で使われており、設備管理、リスク緩和、プロセス改善、イノベーションの促進、リアルタイム経営のための意思決定支援、ビジネス機会/市場機会の特定等の目的で使われている。
スマートグリッドに適用する場合、OSIソフトのPIシステムは、AMI、変電所自動化システム、配電自動化システム、SCADA/EMSその他のデータを収集、維持管理、分析し、その結果を、オペレーター、エンジニア、保守技術者、マネージャー、ディレクターおよび上級管理職に(ITに詳しくない人にもわかりやすく)データを提示する。
OSIソフトは、25年以上、公益企業顧客にリアルタイムのイベント管理やデータ・リトリーバル、大量データのアーカイブ機能を提供してきた。

【アナリスト ノート】

スマートグリッドが生み出すデータ容量は、大量データをリアルタイムで取り扱うOSIソフトのような会社にとって、またとないビジネス機会を与えている。
2009年2月に、OSIソフトは、グリッドポイントとの提携を発表したことは非常に興味深い。それは、今をときめくスマートグリッド界の新星(グリッドポイント)のソリューションを着実にスケールアップさせる上でまたとない組み合わせだからである。

5.5.7 ベンティクス:Ventyx

ベンティクスは、エネルギーを含む公益企業や通信企業などの複雑な装置産業をターゲットとして、全世界で900を超える顧客に、運用実績や財務実績を最大限にするビジネスソリューションを提供する会社である。
従業員約1,200人は、全世界40か国で活動しており、2007年の収益は2億5000万ドルを超過している。
同社が公益企業向けに用意したソリューションは:
①設備管理、②作業管理、③顧客管理(ビリングと料金計算)、④エネルギー商取引およびリスク管理、⑤エネルギー関連業務、⑥エネルギーのプランニングおよび解析がある。
(詳細は、下記URL参照:http://www.ventyx.com/global/jp/about.asp)
スマートグリッド関連では、ベンティクス・スマートグリッド運用ソリューションがあり、業務・産業顧客向けのデマンドレスポンス・プログラム、分散型エネルギー管理およびリソース最適化機能を提供している。

ベンティックスもSmartGridCityテクノロジー・パートナーの1社で、SmartGridCityにおける役割は、スマートグリッド技術を展開する上での作業管理ソリューションの提供である。スマートグリッドが引き金となって発生する作業/サービスの管理や、価格および負荷予測のようなエネルギー分析、顧客の行動と電力取引をリアルタイムに連動させた意思決定の支援を行っている。

【アナリスト ノート】

北米では、公益企業の従業員の高齢化が進み、今後10年でかなりの人数が引退するので、新人にも、たとえば原子力発電所では規制への準拠を確保しつつ安全性と稼働率を向上させ、現場での作業ではモバイル作業の自動化と生産性の最適化に寄与することができる同社のソフトは、安定した収入源となるだろう。

以上、5.4節「グリッド最適化/配電自動化」および5.5節「ソフトウェア、ソリューション及びアプリケーション」で合計9社をご紹介しました。

ABBは系統運用設備機器/システム/ソリューション・プロバイダーとして有名ですが、SEL(シュバイツァー・エンジニアリング研究所)というのは、エドモンド・シュバイツァー3世が1982年ワシントン州プルマンに立ち上げた会社。2009年に従業員共同所有企業(Employee-owned Business)となったとのことで、それほど大きい会社ではなさそうです。GTMリサーチが将来性に注目しているというとおり、北米(米国、メキシコ、カナダ)を足がかりに、既に南米、欧州、アジア、アフリカ、オセアニアにも活動拠点を広げています。

5.4節の2社は電力系統運用設備の分野から系統の最適化/配電自動化に進出してきた企業ですが、5.5節の7社は、その出自も、提供するソリューションも多様です。 あえて言うと公益企業向けソリューションとして、AMIやグリッド最適化/配電自動化などのハード寄りではなく、ソフト寄りの会社である点が、5.1~5.4節の会社や、5.6節のHAN/HEMS(公益企業向けソリューションではない)や5.7節のIBM、オラクルなどビッグプレーヤー(公益企業向けソリューション以外にも広くビジネスを展開している)とも異なっているところだと思います。
また、5.5節内の7社をあえて大きく分類すると、アクララ、エコロジック、イーメーターの3社はメーターデータ管理に強く、グリッドポイント、OSIソフト、ベンティクスの3社はエネルギー業務の管理(といっても、各社の強い部分はばらばらですが)、グリッドネットにいたっては、5.2節AMI-通信のところに入れても良い気がします。
果たして、これらのプレーヤーをGTMリサーチのスマートグリッド・マップ上にプロットしたものは、下図のようになりました。

図の拡大

メーターデータ管理ではオラクルが、スマートチャージとV2Gでは、ベタープレイスとクーロンテクノロジーも同じエリアにプロットされているのが分かりますね。

このGTMリサーチのスマートグリッドマップは、スマートグリッド関連プレーヤーの位置関係を確認するためにも非常に便利であることが分かります。

今回、5.5節までご紹介しましたので、次回は5.6節以降をご紹介します。

終わり