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前回、CHP/DHC普及促進に関するIEAの調査・評価で最高得点である「★5つ」を獲得しているデンマークのCHP/DHC事情をご紹介しました。また、デンマークが、大規模な系統側「蓄電池」と再生可能エネルギーを最大限に利用した、スマートグリッドの最終的な形を一足先に実現した国であるということを述べました。

今回は、IEAのCHP/DHC調査でデンマークと同じく最高評価を得ているフィンランドの調査レポート「CHP/DHC Country Scorecard:Finland」をご紹介しようと思ったのですが。。。レポートを読んでみると、日本のエネルギー政策を考える上では、それほど参考にならないのではないかと感じました。そこで、簡単に、同レポートの概要とまとめの部分から抜粋して内容をご紹介します。

CHP/DHCに関する国別評価:フィンランド編

フィンランドは、地域暖房(DH)、産業用CHPおよびバイオ燃料炊きのCHP利用で、世界の先端を行っている。

2007年時点で、CHPは地域暖房の74%で使用され、国内電力供給の29%、国内発電量の34%を占めている。火力発電のCHP化も進展しており、2007年時点で65%に達している。

ただし、このような高度のCHP利用に関して、直接的な政府の支援はそれほど大きくない。寒い気候と、エネルギー資源に制約のある同国にとって、エネルギー輸入を縮小し、供給されるエネルギーを最大限利用する方策として、CHPはごく自然な、経済的な選択だったのである。

政府としては、せいぜいエネルギー税として、熱のみを生産する施設よりCHPを優遇したことくらいで、高効率で大規模集中型CHPの提供するエネルギー価格は、ヨーロッパ他国と比較しても低価格であり、需要家に好意的な迎えられた。また、低い販売価格にもかかわらず、CHP所有者(主に地方自治体)は事業として成功してきた。

しかしながら、ヘルシンキのように、すでに93%のビルでDHサービスが行われている都市へのDHサービス拡充は困難で、今後のCHP拡大の余地はあまりない。あるとすると商業地域の地域冷房である。地域暖房と結合してDHCサービスに移行することで、さらなる省エネとCO2排出量削減が期待できる。

フィンランドのCHP/DHC事情にご興味をお持ちの方は、原文をお読みください。
このレポートはCHP/DHCにフォーカスしたものなので詳しい内訳はわかりませんが、一次エネルギー供給の構成のグラフ(Figure 1)を見ると2005年時点で、再生可能エネルギーと廃棄物(Renewable and waste)が19.85%、水力が3.4%、合計ですでに20%を超えています。原子力も17.33%となっています。

また、デンマークがエネルギー自給率100%であったのに対してフィンランドの自給率は43%。デンマークの産業用電力需要がそれほど多くなかったのに対して、フィンランドでは全電力需要の53%が産業用。さらに、その50%以上が林業/製紙業(Forestry and paper)。

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CHP/DHCの普及に関しては最高評価を得ている2か国ですが、エネルギー事情はかなり異なっているようです。

 

話は変わりますが、『まちづくりと一体となった熱エネルギーの有効利用に関する研究会』という経産省資源エネルギー庁の研究会が新たに発足したのはご存知でしょうか?
平成23年5月17日の第1回、5月31日の第2回会合は傍聴できなかったのですが、6月6日に開催された第3回会合を先日傍聴してきました。
第1回会合配布資料4によると、少々長ったらしい研究会の名称通り、「街づくりと一体となった省エネ・省CO2 の推進」という政策課題に対応するべく、熱供給事業法の対象となる地域冷暖房、地点熱供給や建物間熱融通などを検討対象とし、いわゆる「エネルギーの面的利用の推進」を目指す研究会だそうです。
同じく第1回会合配布資料5に『我が国の地域熱供給事業の変遷』が説明されていますので、以下に再掲させていただきます。

我が国の地域熱供給事業の変遷 図の拡大

また、同資料5より、日本国内の地域熱供給事業者マップは以下の通りで、全国145の地域熱供給事業許可区域があり、熱供給事業者は84社となっています。

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第1回会合資料9の『今後の検討について』を見ると、「まちづくりと一体となった熱エネルギーの有効利用を推進していくに当たり、関連事業者等から事業の実情等を聴取しつつ、特に制度面での課題を中心に整理し、関係省庁・関係自治体の今後の具体的な政策展開や事業者のビジネス展開に活かしていく」とあり、第2回会合では、東京ガス、大阪ガスの他に、日本熱供給事業協会から『地域熱供給事業の現状と普及の課題』が報告されています。その中で、日本の地域熱供給事業の特徴として、以下が指摘されていました。

● 供給区域ごとの事業許可制、料金認可制で、輸送導管を含む工事・保安規制等がある
● ライフライン事業としての位置づけがある
● 企業規模・産業規模が小さい
● エネルギー供給事業者系、鉄道事業者系、不動産事業者系、自治体等第3セクター系等、多様な企業形態がある
● 事業者の多くがOne-project-One-Company 形態である
● 供給熱媒体として冷水のウェイトが高い

また、最近5年間(平成17年以降)でみると、地域熱供給事業は事業者数・地区数とも微減傾向にあり、新規プロジェクトは頭打ち状況との指摘がされています。

第3回会合では、東京都市サービス、日建設計総合研究所、関西電力、および三菱地所から事例を含めた報告が行われていました。
第4回会合は6月16日開催予定で、清水建設株式会社、地中熱利用促進協会、東京大学、森ビルから事業者プレゼンテーションが行われる予定ですので、興味のある方は傍聴されればいかがでしょうか?

つじつまを合わせるわけではありませんが、前回は少々長めでしたので、今回はこれで終わります。次回は、IEAのCHP/DHC評価で「★4つ」を獲得しているドイツを取り上げる予定です。

終わり