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先日、ブログ「Googleがスマートメーターを切り捨て?」で、グーグル、マイクロソフトがスマートメーターを利用した家庭向けエネルギー管理ビジネスから撤退することをお伝えしましたが、今後どうなるのか? いくつか、インターネットで関連情報を拾ってみました。本日は、その中から、以下の2つの短い記事をご紹介したいと思います。
(1) greentechgrid:California Utility HAN Numbers: Very Low
(2) Gigaom:Missing PowerMeter & Hohm? Here are 12 other home energy tool options

まずは、それぞれを見てみましょう。

では、はじめます。

(1) カリフォルニアでの電力会社経由のHAN普及について


Eric Wesoff: 2011年7月11日

カリフォルニア州の電力会社でのHAN普及率はごくわずか

どれだけのスマートメーターがカリフォルニア州でホーム・エリア・ネットワーク(HAN)につながれた装置と連動しているかご存知でしょうか?

ここに我々スマートグリッド分析チームの目に飛び込んできた、サザン・カリフォルニア・エジソン(SCE)電力会社の報告書の数字があります。低所得者向け料金契約:CARE(California Alternate Rates for Energy)の顧客で、同社が所有する先進型のメーターが、ホーム・エリア・ネットワーク(HAN)に接続された装置、あるいはHANと同等の消費エネルギー監視/計測機能を持った装置と接続されている数 - 合計 0

すなわち、SCEやPG&Eによって行われた少数のパイロットテスト以外に、スマートメーター経由の家電機器制御はまだあまり行われていないということです。

理由の1つとして、電力会社も、SEP2.0(Smart Energy Profile 2.0)がHANの国際標準として採用されるのを待っているということが挙げられますが、それだと早くても2014年までかかってしまいます。SCEは、今年後半も、数千台規模パイロットテストの準備をしていると公表していますが、他の電力会社からは明確なアナウンスはなく、カリフォルニア州における大規模なHAN装置の展開には、まだ何年かかかりそうです。

つまり、HAN市場は未だ形成途上であり、電力会社は、スマートメーターから家の中側へ向けての投資について尻込みしているようですが、この市場が成長するかどうかは、電力会社ではなく、電力会社と協力する会社にかかっているのかもしれません。

そして、それは、明らかに、数週間前家庭向けエネルギー管理ビジネスを投げ出したグーグルやマイクロソフトではありません。

図の拡大

上図は、GTMリサーチのスマートグリッド分類図上に、この市場に参入している会社をマッピングしたものですが、GTMリサーチのスマートグリッド・アナリストであるChet Geschickte氏は、次のように語っています。
もちろん、電力会社も需要管理を望んでいますが、家電会社を模倣しようとしているわけではありません。スマートグリッドとHANのインタフェースとしては、多数のフォーマットが普及するでしょう。すなわち、
① サービスのみの提供
② 技術とサービスの提供
③ 消費者が自分で設置する省エネ家電機器提供
④ スマート家電のエネルギー管理サブシステムの提供
⑤ WEBサイト
⑥ その他
です。
Greentech Mediaのスマートグリッド調査研究では、2015年までに米国のHAN市場は全部で7億5000万ドル規模になると予測しています。

(2)  ホームエネルギー管理(HEM)ツールの紹介


PowerMeterとHohmがいなくなっても大丈夫! 12のHEMツール

Katie Fehrenbacher 2011年7月5日

インターネット大手のグーグルとマイクロソフトは、ウェブ・ベースのエネルギー管理ツールに見切りをつけ、先週、近々そのサービスを終了すると発表しました。
しかし、この難しい市場には、消費者の装置を直接触るものから、セキュリティ、ブロードバンドや太陽光発電と絡めたハイエンドなサービスまで、まだ幾多のツールがひしめき合っています。
それらの製品やサービスを提供するベンチャー企業や投資家は、グーグルやマイクロソフトの巻き添えを食ってしまうことはないのでしょうか?
さらに多くの企業がもがき苦しむことでしょうが、ポジショニングさえ間違わなければ、いくらかはヒットを飛ばせるでしょう。
以下では、この市場でまだ競い合っている12の会社を紹介します。

ホームオートメーション、セキュリティ、ブロードバンド・サービスを提供するControl4

Control4はホームオートメーション・サービスを提供する会社として2003年に設立されましたが、2009年の夏にはエネルギー管理の領域に乗り出しています。
エネルギー分野では、電力会社にホームエネルギー管理のための無線装置やサービスを提供しており、顧客には、ネバダ州の電力会社NV Energyがいます。
電力会社は、Control4のツールを使用して、デマンドレスポンスを実施することができます。同社のデマンドレスポンスは、基本的には需要家に需要抑制をお願いする仕組みですが、いろいろな方法で需要抑制を実現できることを特徴としています。
Control4は、Frazier Technology Ventures’ Partner、 vSpring Capitals、Thomas Weisel Venture Partnersのベンチャーキャピタルからほぼ7500万ドルの資金を集めています。

iControl

iControlは、Comcast社が新たに提供しているセキュリティおよびエネルギー管理サービスを請け負う会社で、Comcastの投資子会社であるComcast Venturesをはじめ、Cisco、 Intelの投資子会社Intel Capital, Kleiner PerkinsのiFund、そして、セキュリティ企業ADTの親会社から、合わせて1億ドル以上の資金を集めています。
最近得た5000万ドルの資金で、iControlはエネルギーベースのソフトウェアおよびサービス・ビジネスに進出し、住宅所有者並びに電力会社が屋内の照明やサーモスタット、スマート家電を遠隔操作できるようにすると言っています。

4Home

12月、通信装置大手のモトローラは、その通信子会社であるMotorola Mobilityを介して、ホームオートメーションおよびエネルギー監視を行うベンチャー企業4Homeを買収すると発表しました。
4Homeのソフトウェアを使えば、住宅所有者は家庭内の様々な装置の情報(デジタル・メディアからエネルギー情報、ホーム・セキュリティ、更に健康データまで)を遠隔アクセスできるようになります。
Verizonは4Homeのサービスを利用して、ホームオートメーションおよびエネルギー管理サービスの提供を試行しています。

Xanboo

AT&Tは、12月にホームオートメーションおよびエネルギー管理会社のXanbooを買収しました。
Xanbooは、10年の歴史を誇るホームオートメーションの老舗の1つで、住宅所有者がセキュリティやエネルギー消費、デジタル・メディアを監視できるようにします。

EcoFactor

EcoFactorは、電力会社やブロードバンド・プロバイダー(および、その他のチャネルのパートナー)に、サーモスタットを介してエアコンなどの運転を自動化するサービスを提供しています。
この会社は、顧客がほとんど違いに気づかないレベルでエネルギー消費を削減し、電気代を安くする技術を持っています。EcoFactorは、実験では17%省エネが達成できたとのことです。

電力会社向けのサービスを提供するTenDril

Tendrilは、電力会社を介してホームエネルギー管理の市場に進出してきた代表選手です。
同社は、消費者のホームエネルギー消費を監視・管理するソフトウェアと装置を販売していましたが、最近、重電メーカーのSiemensとの取引(および融資獲得)に成功しています。
Tendrilも、 VantagePoint Venture Partners、Good Energies、RRE Venturesから、合計7300万ドルの資金を集めています。

OPower

OPowerは、電力、ガス、水道などの利用データを集約して請求するソフトウェアで公益事業者の業務を支援している会社で、ホームエネルギー管理の装置やサービスの分野では、まだ実績がありません。
しかし、ホームエネルギー管理のための装置の提供を検討しており、今後、Tendrilと同様の公益事業会社にフォーカスしたホームエネルギー管理プレーヤーと真っ向から競合する可能性があります。

Silver Spring Networkのホームエネルギー・ツール

スマートグリッドのネットワーク・プレーヤーだったSilver Spring Networkは、数年前Greenboxを買収し、電力会社の顧客に対してホームエネルギー・ツールを提供できるようになりました。
これまでのところ、同社の省エネの実証実験は非常に印象的です。

省エネナビ機器群


スタンドアローンの家庭用エネルギー監視ツールのいくつかは、電力会社でも使用可能です。

PowerCost Monitor

Canadian Blue Line Innovationsは、家電量販店の Fry’s Electronicsで、PowerCost Monitorと呼ばれる99ドルのエネルギー管理装置を売り始めました。これは、これまで見た広く手に入るホームエネルギー管理装置の中で、最も廉価なものの1つです。
PowerCost Monitorは2つの部品:どのような電力計にも設置できるセンサー・無線装置と、表示装置から構成されています。表示装置は、センサー・無線装置から発信された電力量の無線信号を拾い、使用電力量を表示します。
Blue Line Innovationsは2003年に設立され、今日、ほとんどの電力会社のメーターを対象として、既に10万個以上のPowerCost Monitorが使われています。
しかし、同社社は、その軸足を消費者に移そうとしている模様です。

WattVision

Wattvisionは、ビジネススクール型のベンチャーキャピタルであるY-Combinatorから生まれた創立2年目の会社で、必要最小限の廉価なエネルギー管理ツールを販売している。それは、家庭のメーターに取り付ければ、WEBでモニターできるもので、ウェブサイトから約250ドルで購入できます。

TED (The Energy Detective:エネルギー探偵)

TEDは、2001年設立された会社(Energy Inc)の製品で、多くは消費者への直販です。また、TEDはグーグルPowerMeterでも動作する最初の会社でした。
同社は、3Mによる資金援助を受けています。

AlertMe

AlertMeは、英国に本拠を置くベンチャー企業でホームオートメーション、セキュリティおよびエネルギー管理サービスを提供しています。
AlertMeは、Index Ventures、 Good Energies、 VantagePoint Venture Partners、SET Venture PartnersおよびBritish Gasから資金提供を受けています。

ブログで「Googleがスマートメーターを切り捨て?」の記事をご紹介した際、自分でも、彼らの撤退の意味するところは何か気になっていたのですが、今回ご紹介した2つの記事を重ね合わせて考えると、グーグルもマイクロソフトも、家庭用エネルギー管理の分野は、まだしばらく儲からないと踏んで、早々と撤退宣言をしたというところでしょうか?
あるいは、米国の電力会社は、SEP2.0をスマートグリッド-HAN間の標準として本命視しているのがわかったので、自分自身がデファクトとなりえないことを悟ったからでしょうか?

それと、もう1つ。
もちろん、電力会社も需要管理を望んでいますが、家電会社を模倣しようとしているわけではありません。スマートグリッドとHANのインタフェースとしては、多数のフォーマットが普及するでしょう。
このGTMリサーチChet Geschickte氏の話は、以下の点で示唆に富んでいると思いました。

1. 電力会社としては、電力系統の需給ひっ迫度合いに応じて需要抑制したい場合でも、各家庭の家電機器をチマチマ制御するよりは、大口需要家いくつかとデマンドレスポンス契約を結んで、発電機の稼働率を制御する感覚で需要量を制御したいでしょうし、

2. もし、一般家庭をも需要抑制の対象としたい場合でも、comvergeやENERNOCのようなアグリゲータ―(2010年のスマートグリッド:市場セグメント、アプリケーションおよび業界のプレーヤー - その17参照)が一般家庭の負荷をうまく束ねてくれるとありがたい。

3. 一方、家庭内のエネルギー消費を最適化したい場合、極端なことを言えばスマートグリッドなど不要で、スマート家電が自己判断するか、もしくは、家庭内のHEMSと連動するだけでも良い。

したがって、現実問題として、SEP2.0が使えるようになる2014年まで待っていられないし、用途/受けるサービスによってHANインタフェースはいくつかのフォーマットが普及・共存せざるを得ない - ということですね。

ブログ「スマートメーター制度検討会報告書について思うこと」を書いた時までは、スマートコミュニティの一部として、全体的な整合性が大事であると考えていましたが、用途によって複数のインタフェースが(当面)共存せざるを得ない。スマートメーターもHAN側から見れば、HANに接続する機器の1つですが、「日本版2020年型スマートグリッド」を実施する意義があるのなら、当面、ほとんど電力料金計算にしか使えないフォーマット(電力等使用情報の提供ルート及びタイミング)でも良しとすべきかもしれないと思いました。

なお、ご紹介した記事(2)の中で出現したいくつかの会社は、ブログ「2010年のスマートグリッド:市場セグメント、アプリケーションおよび業界のプレーヤー - その19」でも、以前ご紹介していますので、合わせてご覧ください。

終わり