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去る2月10日、LONMARK SESSION Technical Forum 2012 東京というLONMARK JAPANが主催する技術セミナーで、「米国におけるスマートグリッド標準化動向とデマンドレスポンス」と題してお話をさせていただきました。

前回のブログで「欧米のスマートグリッド関連の標準化動向のまとめを実施しております」とお話したのは、このセミナーの準備もあったのですが、この際、スマートグリッドに関連する標準と、その標準策定機関をまとめようと思い、実施したのが今回ご覧いただく内容です。

では、早速はじめましょう。

 スマートグリッドに関連する国際標準

以下に、国際標準策定機関ごとに、スマートグリッドに関連する国際標準を列記する。

• 国際電気標準会議(International Electrotechnical Commission:IEC)

1906年設立された、電気・電子関連技術の国際標準を策定・発行する機関で、本部はジュネーブ。IECが策定したスマートグリッドに関連する主な標準は以下のとおりである。

表.1 スマートグリッド関連の主なIEC国際標準

• 国際標準化機構(International Organization for Standardization:ISO)

1947年に設立された電気・電子技術分野を除く工業分野の国際標準を策定する民間非政府組織で本部はスイスのジュネーブにある。近年、コンピュータや情報分野を扱う国際標準に関してはIECとの合同技術委員会 (Joint Technical Committee:JTC)でISOとIECが共同で策定している。スマートグリッド関連では、以下の国際標準がある。


表.2 スマートグリッド関連の主なISO/IEC国際標準

• 国際電気通信連合(International Telecommunication Union:ITU)

電気通信の改善と合理的利用のため国際協力を増進し、電気通信業務の能率増進、利用増大と普及を目指して1865年に設立された機関で、本部はスイスのジュネーブにある。
電気通信に関する国際標準化は、1956年に設立されたCCITT(International Telegraph and Telephone Consultative Committee)が行っていたが、1993年にITU-T(ITU Telecommunication Standardization Sector)と改名された。以下にスマートグリッドに関連して、ITU-Tが策定した勧告を示す。


表.3 スマートグリッド関連のITU-T勧告

 スマートグリッドに関連する米国標準

以下に、米国標準策定機関ごとに、スマートグリッドに関連する米国内標準を列記する。

• 米国規格協会(American National Standards Institute:ANSI)

ワシントンDCに本部を置く、1918年に設立された工業分野の各種規格を定める非営利組織。ANSI自体は原則的に規格作成を行わず、米国電子工業会(Energy Information Administration:EIA)や米国電気通信工業会(Telecommunications Industry Association:TIA)などの規格作成団体が作成した仕様を承認し、ANSI規格として承認する組織である。
ANSIで承認されたスマートグリッド関連標準は幅広く、以下に代表的なものを示す。


表.4 スマートグリッド関連の主なANSI標準

• 米国電気電子学会(Institute of Electrical and Electronics Engineers, Inc.:IEEE)

1963年にAIEE(米国電気学会)とIRE(無線学会)が合併して発足した非営利団体で、本部はニューヨーク。コンピュータ、バイオ、通信、電力、航空、電子等の技術分野を扱い、国際会議の開催、論文誌の発行、技術教育、標準化などの活動を行っている。スマートグリッドに関連する主なIEEE標準は、以下のとおり多岐にわたっている。


表.5 スマートグリッド関連の主なIEEE標準

• インターネット技術タスクフォース(Internet Engineering Task Force:IETF)

カリフォルニア州フレモントに事務局を持つ、インターネット利用技術の標準策定組織で、1986年、インターネット協会(Internet Society:ISOC)のタスクフォースとして発足した。スマートグリッドで利用される主なIETFの標準は、以下のとおりである。


表.6 スマートグリッド関連の主なIETF標準

• 北米エネルギー規格委員会(North American Energy Standards Board:NAESB)

電力・ガスの卸売市場及び小売市場が正常に機能するよう、市場運営者と市場参加者の情報交換に関する標準を策定するANSI公認の非営利団体として2002年に設立された。本部はテキサス州ヒューストン。スマートグリッドに関連する主なNAESBの標準は、以下のとおりである。


表.7 スマートグリッド関連の主なNAESB標準

• 北米電力信頼度協議会(NERC)

1968年、北米各地への電力の安定供給を目的に電力業界が設立したNational Electric Reliability Councilを母体とし、1981年、系統接続しているカナダの参加を機にNorth American Electric Reliability Councilと改名。2007年1月1日より現在の名称(North American Electric Reliability Corporation:NERC)となっている。オフィスはジョージア州アトランタとワシントンDCにあり、2011年9月、DOE、国立標準技術研究所(NIST)と連携して「電力業界におけるサイバーセキュリティリスク管理ガイドライン」の草稿を発表している。その他の、スマートグリッドに関連するNERCの標準として、以下がある。


表.8 スマートグリッド関連の主なNERC標準

• 米国国立標準技術研究所(National Institute of Standards and Technology:NIST)

バイオテクノロジー、ナノテクノロジー、情報技術、先端製造技術の標準化を支援する連邦政府機関で、1988年にNBS(National Bureau of Standards)が改組して誕生した。連邦政府の標準暗号の制定や、IT分野では、クラウドのロードマップ策定やアーキテクチャの定義を実施している。
EISA2007での指名によりスマートグリッド関連の標準取りまとめ役を遂行している。スマートグリッドに関連する主なNERCの標準は、以下のとおりである。


表.9 スマートグリッド関連の主なNIST標準

• 米国農業電力協同組合(National Rural Electric Cooperative Association:NRECA)

全米47州に渡り4,200万世帯に電力を供給する900以上の電力供給共同事業体を代表する1942年設立の団体で、本部はバージニア州アーリントン。個々の共同事業体の規模は小さいが、組合員全体では、全米の電力販売の12%を占めている。スマートグリッド関連のNRECA標準には以下がある。


表.10 スマートグリッド関連の主なNRECA標準

 スマートグリッドに関連する欧州標準

以下に、欧州標準策定機関ごとに、スマートグリッドに関連する欧州標準を列記する。

• 欧州電気標準化委員会(Comite European de Normalisation ELECtrotechnique:CENELEC)

1973年にベルギーのブリュッセルに設立された、電気・電子技術分野の欧州規格(European Norm:EN)を制定する非営利組織。非電機分野の標準化/ENの策定は欧州標準化委員会(Comite Europeen de Normalisation:CEN)が担当、通信分野の規格は欧州電気通信規格協会(European Telecommunications Standards Institute:ETSI)が担当している。CENELECで策定されたスマートグリッド関連の標準は、以下のとおりである。


表.11 スマートグリッド関連の主な欧州規格(CENELEC規格)

• 欧州通信規格協会(European Telecommunications Standards Institute:ETSI)

欧州各国の電気通信を管理する官公庁、電気通信事業者、研究機関などにより1988年に設立された非営利団体で、米国のANSIに相当する。本部はフランスのソフィア・アンティポリス。スマートグリッドに関連するものとして以下がある。


表.12 スマートグリッド関連のETSI規格

 スマートグリッドに関連する業界標準

以下に、業界標準策定機関ごとに、スマートグリッドに関連する業界標準を列記する。

• 米国暖房冷凍空調学会(American Society of Heating, Refrigerating and Air-conditioning Engineers:ASHRAE)

1894年設立、会員数51,000を要する暖房、冷凍、空調関連技術者のための国際的学会で、本部はジョージア州アトランタ。空調関連の工業規格やガイドラインも策定している。
同学会のスマートグリッドに関連する規格については、表.4 No.1参照。

• DLMSユーザ協会(DLMS User Association)

メータリング・システムの相互運用性を目指し、欧州の電力会社やメーター会社が1997年に設立した非営利団体で、本部はスイスのジュネーブ。本協会で策定したスマートグリッド関連の業界標準には、デバイス言語メッセージ仕様(Device Language Message Specification:DLMS)及び、エネルギー計測関連仕様(Companion Specification for Energy Metering:COSEM)があるが、DLMS/COSEMの規格のセットは、その後IEC 62056の国際標準及びEN 13757-1の欧州規格に認定されている。

• DNPユーザグループ(Distributed Network Protocol Users Group)

1993年Westronic社(現GE-Harris社)が部分的に完成していたIEC60870-5プロトコルをベースとして開発し、米国で広く使用されるようになった変電所自動化用通信プロトコルであるDNP規格の策定を行う企業グループ。事務局はノースカロライナ州ローリーのTriangle MicroWorks社。
同グループで開発されたスマートグリッド関連の標準は、以下のとおり。


表.13 スマートグリッド関連のDNP規格

• ECHONETコンソーシアム(ECHONET Consortium)

家電機器の遠隔制御/モニタリング等に活用できるホームネットワークの基盤ソフトウェア及びハードウェアの標準策定を行う日本発のコンソーシアムで、事務局は東京都港区。
同コンソーシアムで開発されたスマートグリッド関連の標準は、以下のとおりである。


表.14 スマートグリッド関連のECHONET規格

• HomePlugパワーライン・アライアンス(HomePlug Powerline Alliance)

家庭内の電灯線で高速通信を実現する仕様作りのために発足した業界団体。設立は2000年4月で、本部はオレゴン州ポートランドにある。
同アライアンスで開発されたスマートグリッド関連の標準は以下のとおりである。


表.15 スマートグリッド関連のHomePlug規格

• KNX協会(KNX Association)

1999年、欧州の3つの業界標準策定機関EIBA(European Installation Bus Association)、EHSA(European Home Systems Association)、BCI(BatiBUS Club International)それぞれが定めていた業界標準の後継として作成された業界標準のビル自動化向け業界標準KNX規格の維持管理を行う団体。
KNX規格は、その後、ISO/IEC 14543国際標準及びEN 50090欧州規格に認定されている。

• LONMARKインターナショナル(LonMark International:LMI)

ANSI/CEA-709.1及び関連する標準を利用するオープンなマルチベンダー制御システムの促進を目指す1994年に設立された世界的な会員組織。ヨーロッパ各地のLonWorks Userグループの、LonMark支部プログラムへの加盟が進んでおり、LMIの法人会員規模は600社を超えている。
スマートグリッドに関連する同組織の標準については、表.4 N0.4参照。

• 電機製造者協会(National Electrical Manufacturers Association:NEMA)

1926年設立された電気製造者の団体で、ワシントンDCに本部を置き、発送配電設備から制御機器、エンドユーザ向け電気製品まで、様々な製造業者約450社が集まっている。スマートグリッドに関連する同協会の標準として、以下がある。


表.16 スマートグリッド関連のNEMA規格

• 米国自動車技術者協会(Society of Automotive Engineers:SAE)

1905年に自動車関連技術者団体(Society of Automobile Engineers)として発足。1916年にオートモーティブ(自動車、トラック、船、航空機など自力動力により動く機械全般)のエンジニアリングに関する標準化機構として現在の名称に変更。本部はニューヨーク。
スマートグリッドに関連する同協会の標準として、電気自動車(EV/HEV)及びその充電器関係で以下の規格がある。


表.17 スマートグリッド関連のSAE規格

• UCA国際ユーザグループ(UCA International User Group:UCAIug)

国際標準の技術を使用することで公益事業(電力/ガス/水道)業界のシステム統合・連携の促進を目的とする非営利機関。本部はノースカロライナ州ローリーにあり、国際標準のIEC 61850、共通情報モデル/汎用インタフェース定義(IEC61968、61970のCIM/ GID)や、デマンドレスポンスを含むスマートグリッド関連オープンスタンダード(OpenADR、OpenADE、OpenHAN等)を策定するユーザグループとして活動している。
3章で取り扱うIEC国際標準以外でUCAIugが取りまとめているオープンスタンダードは以下のとおりである。


表.18 スマートグリッド関連のUCAIugオープン規格

• ZigBeeアライアンス

世界中の政府機関、研究機関、民間企業が参加し、ZigBee規格の策定・普及・認証を行う、2002年設立の非営利団体。本部はカリフォルニア州サンラモン。
同アライアンスで開発されたスマートグリッド関連の業界標準は、以下のとおりである。


表.19 スマートグリッド関連のZigBee規格

なお、ZigBeeアライアンスとHomePlugパワーライン・アライアンスは、共同でSEPの仕様を検討し、ZigBeeプロトコルだけでなく、電力線通信、Wi-Fi、BlueToothの伝送媒体でも動作可能なプロファイルSEP2.0を策定している。

• Z-Waveアライアンス(Z-Wave Alliance)

低電力の無線通信ネットワークプロトコルの1つであるZ-Wave 標準に準拠した無線ホームコントロール製品の提供を目指し、2005年160社以上のメーカーで設立したコンソーシアム。本部はカリフォルニア州ミルピタ。
同アライアンスで開発されたスマートグリッド関連の業界標準は、以下のとおりである。


表.20 スマートグリッド関連のZ-Wave規格

以上が、スマートグリッドに関連する標準を、標準策定機関ごとに整理したものです。
ところで、1つ困ったことがわかりました。2月10日のセミナーで自分に与えられた時間は50分。その中でスマートグリッドの標準化動向とデマンドレスポンスを紹介しなくてはならないのに、以上のスマートグリッドに関連する標準を1つ1つ紹介していくと、それだけで結構時間がかかってしまい、デマンドレスポンスの話をする時間どころか、スマートグリッド標準化動向の紹介自体も中途半端になってしまいます。

やむなく、セミナーでは、国際/国内/業界標準策定機関の名前と、それらの組織で作られた標準(の番号)をざっと紹介するにとどめ、NISTのスマートグリッド標準フレームワークとSGIPを中心に、標準化動向のお話をさせていただきました。その内容は、これまで、このブログで紹介させていただいた内容をコンパクトに整理しただけですが、最後に今後の標準化進捗予想と題して、NEDO戦略的国際標準化推進事業 グリーンイノベーション推進事業 「国際標準化における優先行動計画(PAP)動向等調査報告書」にあった下表の説明を行いました。

すなわち、NISTスマートグリッド標準化フレームワーク1.0が公開されたころは、2010年中にもスマートグリッドに関連する主な標準が米国仕様で固められてしまいそうな雰囲気でしたが、様々な標準策定機関が絡んでいるため、NISTの思惑通りには進んでいないようだ-というものです。

セミナーの資料自体も、弊社の調査実績 No.22としてダウンロードしていただけるようにしておきましたので、興味のある方はご覧いただければ幸いです。

おわり