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2つ前のブログ記事で、デマンドレスポンス・アグリゲータ(以降、DRアグリゲータ―)のComverge社が買収されたことをお知らせしました。
そして、これはDRアグリゲーションビジネスで並び称されるEnerNOCとComvergeのビジネスモデルの差が業績の差となって表れた結果ではないか? すなわち、大型ごみ回収モデルと、「ちりも積もれば山となる」のちり回収モデルの差ではないか? というお話をさせていただきました。
同じようなことを言っているサイトがないか探していたところ、シカゴのコンサルタント会社:Evergreen Growth Advisors社の興味深いペーパー『Competition Heats Up in Demand Response . Who Will Prevail?』というのを見つけましたので、今回は、それをご紹介したいと思います。
例によって、全訳ではないことと、一部超訳になっていることをご承知おきください。
では、はじめます。
DRビジネスの競争激化! 生き残るのは誰か?
Evergreen Growth Advisors社
Erik G. Birkerts, Thomas G. Knight
2011年はデマンドレスポンス(DR)が活躍する年となった。この夏、米国北東部やテキサス州を強烈な熱波が襲い、系統運用者は、記録的な需要削減指令を出さざるを得なかったが、そこで、DRが大活躍したのである。 7月22日、系統運用者のPJMおよびニューヨークISOは、それぞれを2,300MWおよび1,743MWの需要削減指令を出したし、テキサス州の系統運用者のERCOTも、DRのおかげで1,150MWの需要削減を果たし、かろうじて大停電を免れた。
このDRが躍進した裏には、連邦エネルギー規制委員会(FERC)が発行したオーダー745の存在がある。オーダー745で、卸売市場運営者は、エネルギー取引市場において、DRアグリゲータ―に対しても、発電事業者と同等に支払うよう定められたのである。
※このオーダーが発行されたのは2011年3月ですが、「通りすがり」様にコメントいただいたとおり、卸売市場運営者がこのオーダーに従うまでタイムラグがあるので、今後はともかく、昨年夏の時点でDRの躍進に効果があったとは、言い切れません
また、米国グリーンビルディング協会(U.S. Green Building Council)も、LEED(建築物の環境配慮基準の認証制度)にDRを組み入れたため、商用オフィスビルのDR参加を促す結果となった。
このDRビジネスの発展には、EnerNOCおよびComvergeの2社が大きく貢献している。EnerNOCは10,700以上の商用施設、産業施設および研究施設をDR資源として、6,650MW以上のキャパシティーを確保した。一方、一般住宅向けDR市場に重きを置くComvergeも3,778MW以上のキャパシティーを確保している。両社だけでも、この夏の電力系統の危機回避に重要な役割を果たしたのだ。
EnerNOCやComverge等は、エネルギー削減スペシャリスト(ECS: Energy Curtailment Specialist)として、新たなDRビジネスモデルを確立したかのように見える。しかし、より詳細に眺めてみると、これらの会社には、先行走者が陥りがちな障害が待ち受けているようだ。すなわち、大物走者が、その後方で虎視眈々と追い抜く機会をうかがっているのである。
ところで、DRアグリゲータービジネスが疑問視されるのは、別に新しいことではない。当初、電力会社はいつまでもEnerNOCやComverge等にDRの「仲介」を頼むことはないだろう予想されていた。つまり、「仲介人」に手数料を支払うならと、自分でDRを行うようになるのではないかという予想である。2010年、CPowerというDRの老舗が電力会社のコンステレーション・エナジーによって買収され、一気にこの予想が広がったが、電力会社がDRビジネスに手を出すのは難しいことがわかった。というのも、電力会社のような公益事業者は、長い間、規制の下で地域独占が許される、利益追求型とは異なった企業文化に染まっているので、「メーターの後ろ側」のビジネスには不慣れだったからである。
我々は、現在のDRアグリゲーターにとって真に脅威となるのは、電力会社ではなく、大型ビルの省エネサービス・プロバイダーだと予想している。過去1年半のうちに、ジョンソン・コントロールズ(JCI)は、エナジーコネクト(EC)を$3230万で買収。シーメンスはサイト・コントロール(SC)を、ハネウェルはAkuacomを買収している。これらの買収された会社はみな、買収した会社のビルディング自動化システムを系統連携させることを可能にする技術を持っていた会社である。
JCI社はEC社のGridConnectプラットフォームを利用することにより、DR技術を容易に実装することができたと述べている。シーメンスは、新たに火力発電設備を作る代わりに、何千もの商工業用ビルを仮想的な発電所(VPP:virtual power plant)にしてしまうSC社のSureGridというインテリジェント負荷管理プラットフォームを大いに評価している。また、ハネウェルは、AkuacomのDRオートメーション・サーバーのおかげで、自社のエネルギー制御システムでの自動DR実行が可能になったと述べている。
シーメンスは、SureGridプラットフォームを用いて、SDG&E(サンディエゴ・ガス・アンド・エレクトリック)電力会社管内の卸売市場DRパイロットプログラムへの参加を表明したし、ハネウェルは、エネルギー省から$1140万の補助金を受け、SCE(サザン・カリフォルニア・エジソン)電力会社と、OpenADRベースのシステムを構築するために、Akuacomの技術を利用している。また、JCIとECは、ウェストペンパワー(West Penn Power)電力会社と、ペンシルバニア州の州法129で制定されたピーク負荷削減を実現しようとしている。
我々が、ビル省エネサービスプレーヤーこそ、現在のDRアグリゲーターの脅威となると予想する根拠は以下のとおりである:
• 自社のビルディング自動化システムとエネルギー管理サービスを既に利用している、大勢の顧客を保有している
• ビルの省エネ分野で、すでに何年もの実績を持ち、ブランドを確立している
• すでに大規模な販売・サービス組織を持っている
• これまで保有していたビル省エネの設計・製造・構築・維持管理・省エネ効果の計測&検証技術に、DR技術をバンドルすることができる
• 新興のDRアグリゲーターと違って強固な経営基盤を有しており、公開入札で電力会社と契約を結ぶ上でも非常に有利である
もっとも、EnerNOCやComvergeも、その脅威に気づいていないわけではなく、両社とも、省エネ関連のサービス拡充に動きだしている。さらに、米国内のみでの競争から、海外市場への進出にも動きだした。
例えば、EnerNOCは、2010年の収益の約94%がDRによるもので、さらに、その63%がPJM(米国東部の系統運用者)からだったが、2013年までにDRからの収益を総収益の80%まで縮小し、PJMへの依存度も50%にすると表明している。しかし、この数字は、競争率の高い市場競争の中にあっては、まだ危険な水準にとどまっていると言わざるを得ない。
では、DRアグリゲーションビジネスは、今後どのようになっていくのか?
我々は次のように予想する:
• 大規模のビル省エネサービス・プロバイダーがDR市場を席巻し、
• Comvergeは$5000万近辺で買収される(Schneider Electricが買収元の会社の候補)が、
• EnerNOCは時価総額が$2億7000万ドルあたりで、買収されるには大きくなりすぎ。
• しかし、EnerNOCも、今後のシビアな競争環境の中、最終的にはDRビジネスに見切りをつけ、クラウド・ベースでエネルギー情報を分析し、顧客にインテリジェントなエネルギー情報を提供するビジネスに移行するのではないか。
さて、来年(2012年)何が起きるか、皆んなで確かめようではないか!
いかがでしたか?
今回ご紹介したペーパーのタイトル「DRビジネスの競争激化! 生き残るのは誰か?」から、EnerNOCがDRアグリゲーション市場を席巻する-というような結末を期待して読みだして、「大どんでん返し」の芝居を見せられたように感じましたが、皆さんはどのような感想を持たれたでしょうか?
実際にComvergeの買収に名乗りを上げた会社は予想と違いますが、半年ほど前に、Comvergeが買収される額をほぼ完ぺきに予想しています。ということは、EnerNOCの将来に関する予想も当たるのでしょうか?そして、DRアグリゲータービジネスは、大型省エネビルサービスプロバイダーの独壇場と化すのでしょうか?
ところで、日本では、先ごろ一般社団法人 環境共創イニシアチブが、『平成23年度「エネルギー管理システム導入促進事業費補助金(BEMS)」に係るBEMSアグリゲータの募集』を行い、すでにBMESアグリゲータ採択結果が発表されています。
ご存知の方も多いと思いますが、資源エネルギー庁商務情報政策局「BEMSアグリゲータ事業者の採択結果について」をもとにして、これまでの経緯をごく簡単にまとめると、
• 政府は平成23年度第三次補正予算でエネルギー管理システム(BEMS・HEMS)導入促進事業費補助金として300億円を確保しました。
BEMS側の導入補助に関する部分についてもう少し詳しく見ると、
• DR等の新しいエネルギー管理支援サービスを提供するシステムを導入する企業に対してはBEMS導入補助率:1/2(上限250万円)、そうでない場合は、補助率:1/3(上限170万円)となっています。
• 補助対象者は、中小ビル等の高圧小口需要家で、
• BEMSアグリゲータとの間で、1年以上のエネルギー管理支援サービス契約が結ばれていること
が補助の条件となっています。
また、BEMSアグリゲータの登録条件としては、
• アグリゲーションする電力総量の10%以上の電力消費量を削減できること
• アグリゲーション対象の電力契約の総計が、1,000件以上または5万kW以上の事業計画を有すること
• 事業終了後において、補助事業の内容を拡張・継続させて実施していくための事業計画を有すること
• 補助要件を満たすBEMS機器を提供できること
等となっています。
環境共創イニシアチブは、BEMS・HEMS導入促進事業費300億円の補助金支給代行機関で、1月24日~2月24日、BEMSアグリゲータの公募を行い、このほど、その第一次採択事業者として21のBEMSアグリゲータが決定した訳ですが、全採択事業者の事業計画におけるアグリゲーション目標は、今夏まで1.4万件、平成25年3月まで2.7万件、平成26年3月まで3.7万件で、10%の節電効果を想定すると、91万kWを削減できる予定とのことです。
この資料で気になったのは、将来の事業展開として、電力会社や新電力(従来PPS:特定規模電気事業者と呼ばれていた小型の電力事業者)等と連携することでデマンドレスポンス事業を行う予定の事業者が14件あることです。(「BEMSアグリゲータ事業者の採択結果について」3ページ)
それ自体は喜ばしいことですが、デマンドレスポンス事業を行うに当たって、これらの事業者が、事業対象地域の電力会社と勝手にデマンドレスポンスの制御インタフェースを決めるのではなく、OpenADRを視野に入れ、共通仕様化を心掛けていただきたいと思います。新たなガラパゴスBEMSを育ててしまわないよう、経産省のご担当の方には調整していただきたく、よろしくお願いしたいと思います。
最初の話に戻ると、Evergreen Growth Advisors社の予想では、ビル省エネサービスプロバイダーが、今後DRアグリゲーションビジネスの本命になるとのこと。事業計画としてデマンドレスポンスを視野に入れている14のBEMSアグリゲータには、うまくすると、日本ばかりでなく海外でもDRアグリゲーションビジネスを展開できるチャンスが広がっていますので、是非、世界を視野に入れた仕様の検討をお願いします。
最後に、「BEMSアグリゲータ事業者の採択結果について」の資料にあった、BEMSアグリゲータによるデマンドレスポンスのイメージをご覧ください。
もう1つおまけです。
今回ご紹介したペーパーに出てきたJCI(Johnson Contriols Inc)が『Combining the power of building automation systems with demand response opportunities』と題して説明しているYoutubeを見つけましたので、ご覧ください。
終わり
- 投稿タグ
- BEMS, Demand Response, PJM, Smart Grid, スマートグリッド, デマンドレスポンス
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