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Distty(http:distty.com)に投稿された掲題の問いかけに対して、現時点で考えていることをまとめてみました。
Disttyに投稿した内容ですが、ここに再掲させていただきます。

 

問い:ECHONET Liteは国際的にデファクト標準になり得るか?

回答:残念ですが、デファクトになるのは非常に難しいと思います。

既に国際標準となっているECHONET規格ですら、まだ海外ではその存在をあまり知られていないのが現状では? だから、たとえ、ECHONET Liteが今後すぐ国際標準となったとしても同じ可能性が高いと思います。

下図は、Grid-Interop Forum 2011で米国NISTがスマートグリッド関連の標準の相互運用性を確保するために作ったSGIP(SmartGrid Interoperability Panel)のB2G/I2G/H2G DEWG (Domain Expert Working Group)の Dave Harding氏が発表したペーパー「Customer Energy Services Interface White Paper」で見つけたもので、NISTのスマートグリッド概念モデル上に、主なスマートグリッド関連標準と、それらの関連が示されています。家の絵のあるCustomer 部分に記載されている標準には、BACnet、LONworks、Zigbee SEPなどが見られますが、既に国際標準となっているECHONETの文字が見られません。

では、そもそも2008年5月に国際規格ISO/IEC14543-4-1およびISO/IEC14543-4-2として登録されたというECHONETが、なぜそれほど広まっていないのか?

2006年7月18日付けの興味深い記録を見つけました。http://www.itscj.ipsj.or.jp/senmon/06sen/sc25.html

情報機器間の相互接続に関する国際標準を制定するISO/IECのSC25専門部会総会への参加報告ですが、これによると、住宅情報機器、電子機器システム(特にホームネットワーク)に関する標準化を行っている作業部会:WG1でECHONETフル仕様提案(14543-4-1,2)の審議が行われています。注目すべきは、同じWG1で、欧州のHBES(Home and Building Electric System)の標準規格であるKNX(14543-2-1, 3-1,2,3,4,5,6,7)が、日米の反対にもかかわらずECHONETに先んじて承認されていることです。他に、米国のビル制御ネットワーク規格:LonWorks(14543-6-1,2,3)や、中国のホームネットワーク規格:IGRS(14543-5-1)も審議されており、国際標準ISO/IEC14543というのは、ダブルスタンダードどころではなく、各国から同じような標準規格が、国際標準として申請されていることがわかります。通常、国際標準=グローバルスタンダードと考えられますが、ISO/IEC14543に限っては、国際標準=ローカル標準に近い。これでは、広まらないのも「むべなるかな」ですね。

逆にいうと、今後、ECHONET Liteをデファクトにしたいなら、国際標準化など後回しにして、日本以外にも広まる努力をしなければならない。プロモーション活動ですね。

まずは、「絵に描いた餅」ではなく、ECHONET Lite準拠のHEMSおよび家電機器を用意し、

① CESやDistribuTech等の海外のHEMS関連展示会やカンファレンスに出展し、セミナー/デモでECHONET Liteの良さをアピールする

② 例えば、日本企業が関与している、中国の生態城等に「ECHONET Liteハウス」を持ち込んで、実際に暮らし、体験してもらう

③ 海外のベンダーにECHONET Lite仕様の製品を作ってもらうため、仕様書やガイドを英語版だけでなく、その他主要な欧米家電メーカー/HEMSメーカーの存在する国の言語に翻訳・提供する

④ ECHONETのトレーニングセンター用のカリキュラムを作成し、そこで教える教材マニュアルだけでなく、教える側のトレーナー向けのマニュアルも、当該国の言語に翻訳・提供する

⑤ ECHONET Lite準拠製品の認定マニュアルも同様に、各国語に翻訳・提供する

⑥ ECHONETコンソーシアム(あるいは、その教育代行機関)は、国内外のECHONET製品認定組織や、ECHONETトレーニングセンター向けの教育コースを用意し、各国語に翻訳して、教育を行い、最終試験にパスした企業に、ECHONET製品認定資格やECHONETトレーニングセンター運営資格を与える

ザッと考えてみたのですが、ECHONET Liteの促進を決めたのなら、政府は少なくともこのレベルまで、必要な人と金を注ぐべきだと思います。

種を蒔いても、水をやり(③~⑥)、光を与え(①、②)なければ、どんなに良い種でも育たないですからね。

まず、日本で広まることも大事なので、その意味では経済産業省がECHONET Liteを日本国内でのHEMS標準プロトコル に認定したことは評価できますが、海外に広まる仕組み作りにも協力(リップサービスだけでなく資金提供や組織的な補助)することをしないと、「後はECHONETコンソーシアム頼みで」は、なかなかデファクトへの道は険しいと思います。

終わり