Cley Windmill

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DR資源をアンシラリーサービス(AS)に適用する場合の課題を検討するにあたって、初日、ワークショップ参加者は、3つのステークホルダーグループ(ASの売り手、大口需要家およびそのDR資源ベースのASを売るDRアグリゲータ、一般需要家およびそのDR資源ベースのASを売るDRアグリゲータ)に分けられ、個別に会合を開いたことは、すでに述べた。
この3つのグループは、DR資源をASに適用する場合の課題を検討した結果、基本的な問題認識について驚くほど意見の一致を見ている。
すなわち、3グループとも以下について同意が得られたのである:
1) DR資源は、技術的に電源と同様にASに用いること可能で、
2) 通信インフラさえ整えば、系統運用者からの指令や価格シグナルに対して、電源以上にすばやく応答でき、
3) ASを提供するにあたって、電源のみではなく、電源とDR資源両方を使うことが望ましい。
4) DR資源だけで系統運用に必要な周波数調整力および瞬動予備力のすべて(あるいはそれ以上)をカバーできる可能性がある。
5) DR資源のASへの適用促進にあたって、現在最大の阻害要因は制度的なものである。例えば、電気温水器の省エネ規格は温水器としての機能の最適化を意図しており、電気温水器の負荷をASに適用するための考慮など全くない。その結果、規格に準拠した技術で電気温水器を設計するとASへの適用ができなくなってしまっている。すなわち、電気代を節約しながら十分な温水を提供するという、いわゆる「個別最適」を求める規格であって、系統全体の信頼性確保するための「全体最適」は考慮されていないからである。
6) 一般家庭からの負荷をまとめて大きなDR資源とするには、M&V(DR資源提供量の計測と検証)の技術や、通信技術、必要なプロトコルなどの更なる発展が望まれるが、DR資源のASへの適用にあたって、技術自体は重要な阻害要因ではない。現在の技術で十分現状のAS提供へのニーズに応えられている。DR資源をASへ適用するための様々な実証実験が行われているが、すでに実運用できるレベルに達しているのではないか?ASに適用するための新たな技術検証プロジェクトも結構だが、その際気を付けて欲しいのは、ASとしての応答速度が十分かという技術的な観点だけではなく、DR資源のASへの適用に関する市場ニーズ、系統運用者(=買い手)のニーズを満たしているかということである。

その他、特定のグループから以下の意見が出た。
7) DR資源を周波数調整力や瞬動予備力に適用するにあたっては、それなりの投資が必要であり、現在のところ、周波数調整力や瞬動予備力に関して、その開発投資に見合うほどのニーズが存在しない。
8) 風力や太陽光のような出力変動の大きな再生可能エネルギーの増大に伴い、より多くの周波数調整力や瞬動予備力が必要となるだろう。
9) 今後数年間、老朽石炭火力発電所の閉鎖で電源容量低下が予見されており、電源を用いたASの量が低下するのではないか?
10) DR資源は年間を通してコンスタントに使えないではないか?
11) また、発電所は一度作れば数十年間存続するので、ASサービス源として信頼できるが、DR資源にはそのような保証はない。
12) 一般家庭のエアコンの負荷をDR資源とするような場合、確かにASに供することができるDR資源量には季節変動が伴うが、逆に考えると必要な予備力が増える時にASとして提供できるDR資源量も増えるわけで、提供可能なDR資源量が変化することは一概に悪いことではない。これは、従来、電源のみでASサービス提供していた時の問題(発電会社は、夏場は電気が高く売れるので、予備力市場よりエネルギー市場に電力を提供する傾向があり、その結果、夏場の予備力が低下する)と好対照をなしている。
13) DR資源提供者側からすると、ASに対するDR資源へのニーズが不透明で、AS向けDRプログラムや、そのDRプログラムに参加した場合の提供価格が将来にわたって保証されない限り、DR資源をASに適用するための投資をすることは難しい。

以上の結果を踏まえ、3つのグループのワークショップ参加者は、「DR資源は十分ASへの適用が可能であるものの、現時点では、関与するステークホルダー間で関連知識にギャップが存在し実装にも困難がある」と総括した。

以上、今回は、ワークショップ初日午前中に行われた3つのグループからの発表(に基づくと思われる)内容を、米国エネルギー省が2011年10月開催したワークショップの報告書「Load Participation in Ancillary Services WORKSHOP REPORT」の「3. Workshop Findings」を元に構成してご紹介しました。
例によって、全訳ではないこと、個人的な思いからの補足(蛇足)混在していることをご承知おきください。

 終わり