River Wharfe

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来月10月17日に、関西地区で初めてKNXの活動「第1回大阪KNX住宅・ビル制御テクノロジー・アプリケーションフォーラム」を行うのですが、そこで「KNXとデマンドレスポンス」と題してお話させていただくことになりました。
KNXもデマンドレスポンスも興味を持っている話題ですので、話をさせていただくこと自体はやぶさかではないのですが、何をどのような順番で話せばよいか ?
⇒ そうだ。このブログの場を借りて、話す内容をまとめてみよう。
ということで、前回、まず欧州におけるスマートグリッドに関する動向をご紹介しました。
#ついでに、いわゆる欧州指令(EU Directive)とスマートグリッド関連でECが発令したマンデート(M/411、M/490)の違いを調べて、ご紹介しました。マンデートと聞くと、マンダトリ(mandatory=必須/強制/義務)から連想して絶対に従わなければならないイメージが伴いますが、実は拒否しても良いということ、別名が標準化要求(standardization request)だということ、および、マンデートの発令対象はEU加盟国ではなく、欧州の標準策定機関(CEN、CENELEC、ETSI)だということもわかりました

今回は、欧州で、デマンドレスポンスがどのような位置づけにあるのかを確認したいと思います。

が、その前に。。。

前回の「1.3 標準策定機関の動きから見た、その後のスマートグリッド関連の動向」は、まだ調査不足だったので、1.3の差し替えから始めたいと思います。

では、はじめましょう。

1.3 標準策定機関内のスマートグリッドに関する組織と対応状況

1.2では、政策面から欧州でのスマートグリッドに関連する状況を把握するため、EU加盟国を対象に、ECからどのような政令が出されているか確認しましたが、スマートグリッドの標準化に関して、欧州では、どのような組織が設けられ、どのように作業が進められているのでしょうか?
まず、国際標準に関しては、国際電気標準会議(IEC)と国際電気通信連合の電気通信標準化部門(ITU-T)が主導しているようです。JETROの「2013 年欧州におけるスマートグリッド標準化の動向」によると、IECでは、以下のような取り組みが行われています。

 IECのスマートグリッドに関する対応

以下に、スマートグリッドに関するIECの主な動きを列挙します。

• IECは 2008 年にスマートグリッドに関連する戦略グループ(SG: Strategic Groups)SG3を設置。
• SG3は、2010年6月には「IEC版スマートグリッド標準化ロードマップ(IEC Smart Grid Standardization Roadmap Edition 1.0)」を発表。
• 2013年6月、IECはSG3に代わるシステム評価グループ(SEG:Systems Evaluation Group)SEG2を設置し、ステークホルダーとより広く協議していくことを決定。
• 2014年2月、SEG2の勧告により、スマートグリッド及び熱とガスを含んだスマートエナジーに関するシステム委員会(SyC:Systems Committees)の設置を決定。(← IEC活動推進会議情報)

これに対して、スマートグリッドの通信分野の標準化に関しては、ITU-T が行っているようです。

 ITU-Tのスマートグリッドに関する組織と対応状況

以下に、スマートグリッドに関するITU-Tの主な動きを列挙します。

• 2010年2月、活動期間を1年に限定して、スマートグリッドに関して検討を行うフォーカスグループ「FG スマート」を設立。スマートグリッドのユースケース、要件、参照アーキテクチャーのまとめを実施。
• 2012年1 月、「Joint Coordination Activity on Smart Grid and Home Networking(JCA-SG&HN)」を設置。
• スマートグリッドに関連するスタディーグループ(SG)の内、スマートグリッドコミュニケーションを担当するSG15をスマートグリッドに関するリーダーグループとし、JCA-SG&HNの役割を継承。SG15が2013年7月に発表した「スマートグリッド規格概観と作業計画」によると、IECのTC57(電力システム管理と関連する情報交換)その他の技術委員会とも協業の範囲を拡大しているようです。

次に、欧州の3標準化団体のCEN(欧州標準化委員会)、CENELEC(欧州電気標準化委員会)、ETSI(欧州電気通信標準化機構)のスマートグリッドに関する組織と、対応状況を見てみましょう。

 欧州標準化策定機関のスマートグリッドに関する組織と対応状況

以下に、欧州3標準化団体のスマートグリッドに関する動きを列挙します。

• 2009年3月ECから発令されたスマートメーターの標準化に関する標準化指令M/441で、「9カ月以内にメーターの通信プロトコルのオープン・アーキテクチャーから成る欧州規格を提示すること」及び、「30カ月以内に追加機能性のための欧州規格を開発すること」を要請された3団体は、共同作業を実施するため、SM-CG(Smart Meter Coordination Group)を組織し、作業を開始。2011年12月に「Functional reference architecture for communications in smart metering systems」を、2012年12月には「Introduction and Guide to the work undertaken under the M/441 mandate」を公開。
• 2011年6月、スマートグリッドに関して3団体が設置していた共同作業グループ(JWG:Joint Working Group)は、最終報告書「Final report of the CEN/CENELEC/ETSI Joint Working Group on Standards for Smart Grids」を発表。
• 上記発表と相前後して2011年3月ECから発令されたスマートグリッドに関する標準化指令M/490で「継続的な規格の策定と技術変革の促進を可能にする枠組みつくり」を要請された上記3団体は、2011年7月、JWGに代わり、「参照アーキテクチャー(RA:Reference Architecture)」、「最初の規格(FSS:First Set of Standards)」、「持続可能なプロセス(SP:Sustainable Process)」、「情報セキュリティ(SGIS:Smart Grid Information Security)」の4つの作業部会(WG:Working Group)からなるスマートグリッド調整グループ(SG-CG:Smart Grid Coordination Group)を設立。
• 2012年12月、SG-CGの各作業部会は、M/490の要請に応えて以下の報告書を作成・公開。

1) Reference Architecture
2) First Set of Consistent Standards
3) Sustainable Processes
4) Information security and data privacy

以下では、欧州版スマートグリッドを理解する上で非常に重要となる、これら4つの報告書の内容を簡単にご紹介します。

1.4 欧州版スマートグリッド参照アーキテクチャー

SG-CG/RAワーキンググループが作成した欧州版スマートグリッド参照アーキテクチャー「Reference Architecture」には、米国NISTの「スマートグリッドの相互運用性に関する規格のフレームワーク及びロードマップ」でのGWACスタックと同じ位置づけでSGAM(Smart Grid Architecture Model)が定義されています。
SGAMは、下図に示すような3次元構造をしていて、スマートグリッドを構成する機器間の相互接続性を議論するために使用されます。

出典:CEN/CENELEC/ETSI 「New ETSI-CEN-XENELEC approach for rapid SG deployments

• ドメイン(Domain):電力系統を構成する機器を発電(Generation)、送電(Transmission)、配電(Distribution)、分散電源(Distributed Energy Resources:DER)、及び大口需要家構内/家庭(Customer Premises)の領域を示しています。
• ゾーン(Zones):制御対象範囲を表現していて、制御される機器(電力を扱う機器,例えば変圧器など)を制御対象とするプロセス(Process)ゾーン、それらの保護を行う機器を制御対象とするフィールド(Field)ゾーン、変電所などの、複数の横器から構成される拠点を制御対象とするステーション(Station)ゾーン、複数の拠点をまとめた電力系統を制御対象とするオペレーション(Operation)ゾーン、運用者視点での電力系統管理(例えば資産管理や顧客管理)を制御対象とするエンタープライズ(Enterprise)ゾーン、並びに、電力市場を制御対象とするマーケット(Market)ゾーンから構成されています。
• 相互接続レイヤ(Interoperability Layer):ビジネス(Business)レイヤ(市場構造や規制を配置)、ファンクション(Function)レイヤ(スマートグリッドで実現されるサービスを物理的実装から独立に配置)、情報(Information)レイヤ(物理的実装やファンクションの間でやり取りされる情報構造を配置)、通信(Communication)レイヤ(機器間の情報転送のためのプロトコルや機構を配置)および機器(Component)レイヤ(機器の物理的実装を配置)の、相互接続が求められる5つのレイヤから構成されています。

1.5 欧州版スマートグリッドに関連する標準規格

SG-CG/FSSワーキンググループが作成した「First Set of Consistent Standards」報告書には、現時点で利用可能な国際標準や欧州標準それぞれの、SGAMフレームワークにおける位置づけとともに、それぞれの標準文書の整備状況が示されています。本報告書では、欧州標準や国際標準のほかに、IEEE(電気電子技術者協会)やIETF(Internet Engineering Task Force)などの標準が400種以上参照され,AMI(Advanced Metering Infrastructure)システムや分散電源システムといった、スマートグリッドを構成する24種類のシステムごとに、SGAMフレームワークにおける標準文書の位置づけが示されています。
下図は、本報告書でスマートグリッド関連の標準規格をまとめた過程を示しています。

出典:CEN/CENELEC/ETSI 「New ETSI-CEN-XENELEC approach for rapid SG deployments

また、このようにしてまとめ上げられた欧州版スマートグリッドの核となる標準には、以下のものがあります。

出典:CEN/CENELEC/ETSI 「New ETSI-CEN-XENELEC approach for rapid SG deployments

※Home & Buildingのコア標準としてEN 50090(KNX)に注目願います

1.6 相互運用可能な欧州版スマートグリッド標準作成プロセス

SG-CG/SPワーキンググループが作成した「Sustainable Processes」報告書には、ユースケースを起点とした欧州版スマートグリッド標準作成プロセスが示されています。ユースケースを起点にすることで、開発する標準の適用範囲を明確にすることができます。

出典:CEN/CENELEC/ETSI 「New ETSI-CEN-XENELEC approach for rapid SG deployments

本報告書8章「Conceptual descriptions of the main use case clusters」によると、SG-CG/SPワーキンググループは、スマートグリッドに関連する様々なステークホルダーから450のユースケースを収集し、この図のStep1にある通り、欧州版スマートグリッドのユースケース(GUC:Generic Use Cases)を作成しようとしました。SGAMで言うところの様々なドメイン、ゾーン、レイヤに属するユースケースを一次分析する段階で、それらのユースケースをひとまとめに分析するのではなく、ある種の概念でクラスター分けした方が良いだろうということになったようです。そして、採用されたのが、本報告書に限らず、SG-CGの報告書群の特徴であるFlexibilityの概念です。
需要家の機器が電力を使用する時間や量を変更可能な場合、それをFlexibilityと表現し、下図の通り、Flexibilityを使う側と提供する側にクラスター分けをしてユースケースを整理したようです。

出典:CEN/CENELEC/ETSI 「New ETSI-CEN-XENELEC approach for rapid SG deployments

※ この図のスマートグリッド接続点(SGCP:Smart Grid Connection Point)は、電力顧客と系統/電力市場を隔てる論理的な境界線で、DRとKNXの関係を考える際にも重要なポイントとなっています。

1.7 相互運用可能な欧州版スマートグリッド標準作成プロセス

SG-CG/SGISワーキンググループが作成した「information security and data privacy」報告書では、欧州版スマートグリッドの満たすべき情報セキュリティのガイダンスと、現時点で利用可能な情報セキュリティ関連の標準のまとめが行われています。

出典:CEN/CENELEC/ETSI 「New ETSI-CEN-XENELEC approach for rapid SG deployments

 

2. 欧州におけるデマンドレスポンスの位置づけ

2.1 SEDCと、その報告書に見る欧州でのDR利用の進展状況とDRの位置づけ

2010年、VaasaETT(フィンランドのエネルギー系シンクタンク)は世界中でデマンドサイドプログラム(DSP)がどのように展開されているか18ヵ月をかけて調査した結果を発表しました。この調査で、欧州のDSP関連技術は最下位にあり、その原因として分断された市場構造や規制機関がDSPによる消費者の市場参加に対して消極的であること等が指摘されていました。
欧州市場にもデマンドレスポンス等の技術を利用できる潜在能力は十分にあるものの、市場・制度設計を見直し、消費者がDSPに参加できるようにするためには、包括的なビジョンの策定が必要であるという認識の下、欧州版DSPの在り方を検討する、複数セクターにまたがった総合的な組織として誕生したのがSEDC(Smart Energy Demand Coalition)だということです。詳細は、ここをご覧いただくこととして、SEDCは、欧州のデマンドレスポンス(DR)に関連して3つの報告書を公開しています。

 2011年9月公開 「The Demand Response Snap Shot ~ The Reality For Demand Response Providers Working In Europe Today ~」

ここでは、米国でのDRの進展を確認し、その価値を認識した上で、欧州での状況をサーベイした結果、27EU加盟国ほとんどで規制機関/現行制度がDR普及促進の阻害要因になっていると報告されています。主な指摘は以下の通りです。
• 調査当時、EU27カ国のうち20カ国では、一般家庭向けDRは言うに及ばず、大口需要家向けのDRも認められていない
• エネルギー市場での予備力に対する価値が軽視されているため、大口需要家や卸電力取引市場への門戸が開かれている国においても、DR提供側にとってはあまり魅力がなく、DRが進展していない

 2013年6月公開「A Demand Response Action Plan For Europe ~ Regulatory requirements and market models ~」

ここでは、再生可能エネルギー大量導入に当たって、欧州でもDR利用の重要性を指摘するとともに、2012年成立したEUエネルギー効率化指令第15条第8項(Energy Efficiency Directive Art.15.8)が、欧州のバランシング市場、予備力市場、その他アンシラリーサービス市場でのDR利用促進を欧州各国の規制機関に呼びかけ、DRアグリゲータおよび消費者と協力して、これらの市場にDR資源が参加しやすくするための技術仕様の整備を要請した結果、欧州におけるDR利用が一気に促進され、DRが商業的に整備された国が2013年には英国、スイス、ベルギーの3カ国、2014年には、それに加えてアイルランド、フィンランド、フランスの合計6カ国に増えていると報告されています。

 2014年4月公開 「Mapping Demand Response in Europe Today ~ Tracking Compliance with Article 15.8 of the Energy Efficiency Directive ~」

ここでは、EUエネルギー効率化指令第15条第8項によって実際にどの程度欧州でDRが普及してきているか、13EU加盟国とノルウェー、スイスの合計15カ国を調査し、以下のような結果が報告されています:

• EUエネルギー効率指令での要請応えて2013年から2014年の間にDR普及に関して顕著な進展が見受けられる。
• しかしながら、DRが商業ベースで運営されているのは、まだ、ベルギー、イギリス、フィンランド、フランス、アイルランドおよびスイスの6ヵ国にとどまっている。
• 一部DRの利用が始まっているものの、今後の制度設計の進展に依存する国には、スウェーデン、オランダ、オーストリアおよびノルウェーがあり、まだまだ予断を許さない。
• 他のEU加盟国のDR利用状況に関しては準備段階あるいは利用不可の状況で、言い換えれば、EU指令でのDR利用要請があるにもかかわらず、そのような国では現行制度下でのDRの実施は不能あるいは不法となっている。

以上、SEDCから見た、欧州における過去から現在に至るDR利用の進展状況でした。

次に、将来の欧州におけるDRの進展を考える前に、SEDCでのDRの定義自体を確認しておきましょう。SEDCの3番目の報告書の第1章「Demand Response Reliability and Status in Europe」内で、DRは次のように定義されています。

Demand Response can be defined as follows:
‘Demand Response or demand side response are programs and activities designed to encourage consumers to change their electricity usage patterns, including timing and level of electricity demand, covering all load shape and customer objectives.
Demand Response includes time of use and dynamic rates or pricing, reliability programs such as direct load control of devices and instantaneous interruptible load, and other market options for demand changes, such as demand side bidding.

ここまでの考え方は、米国流DRそのものですが、次のパラグラフが欧州におけるDRの捉え方の本質を表している気がします。

Demand Response (DR) includes loads, storages, as well as distributed (behind the meter) generation; the latter includes emergency (back up) generation and / or cogeneration (CHPs). It normally enables a reduction in load, but in fact, can act as a flexible resource either decreasing or increasing consumption, as may be needed for certain balancing services or for the deployment of intermittent resources. This enables customers to consume more electricity when large amounts of wind generation are available for example, and wholesale prices are low.

1.6節で、SG-CGの報告書では、Flexibilityという概念が1つのキーワードとなっているということを指摘させていただきましたが、「今後は、出力変動の大きな再生可能エネルギーからの電力供給に合わせて需給バランスをとるのに必要な柔軟な資源(flexible resource)としてDRが活躍するのではないか」と考えられているようです。そのためには、単純な負荷削減だけでなく、蓄電池や自家発電を利用することで系統からの電力消費を見かけ上少なくしたり、風力発電の電力が大量に発生した場合は蓄電池/電気自動車への充電などで系統からの電力消費を増やしたりすることも含めて欧州版DRの定義と考えられているように思われます。

2.2 SG-CGにおけるDRの位置づけ

SG-CGが作成した4つの報告書中、SG-CG/RAワークグループで作成された報告書の「5.1.1. Demand response」では、DRイベントのシグナルは、末端の設備機器に直接送られるのではなく、顧客のエネルギー管理(CEM:Customer Energy Management)システムに送られ、CEMが、その配下にある制御対象機器の動作のトリガーとなる「DR機能アーキテクチャー(Demand Response functional Architecture)」が掲載されています。

※ ただし、将来、いわゆるスマート家電が一般的になった暁には、DRイベントシグナルがスマート家電に直接送られるケースが「5.1.1.6 Proposed communication architecture setup – Smart Home with direct communication with Smart Appliances」で指摘されています。

これに対して、SG-CG/SPワーキンググループが作成した「Sustainable Processes」報告書には、Flexibilityの機能アーキテクチャーとして、以下の図が掲載されています。

図の名前はDRの機能アーキテクチャー/Flexibilityの機能アーキテクチャーと違っていますが、全く同じ図です。ということは、SG-CGの唱えているFlexibilityとはDRのことなのでしょうか?

「8.2.1 Introduction flexibility concept」にFlexibilityに関連する用語の定義が掲載されていますので、その内容を確認しましょう。

• デマンド・サイド・マネジメント(DSM):負荷管理とも呼ばれ、過去30年にわたって主に垂直統合型の電力会社が、顧客の電力消費量を削減させることで系統全体の電力使用効率を改善する目的で利用してきた。ピーク負荷削減/軽減が期待できるので、電力会社としては発電所の新設を延期できるメリットがあった。したがってDSMを行うか否かは、電力供給者側の立場からトップダウン・アプローチで決定されるものである

• デマンドレスポンス(DR):DRはボトムアップ・アプローチで決定されるものである。需要家が省エネ/節電を通して電気代が安くなる経済的な見返り(と、それに起因する不都合との間のトレードオフ)に納得がいけば、電力消費を能動的に管理する、「電気料金の変更に応じて顧客が通常の電気利用パターンを変更する」仕組み、あるいは、「卸電力市場価格の高騰や系統の信頼性を損なうような事態が発生した場合に電力消費パターンを変更するとインセンティブを支払う」仕組みと定義できる。電力消費パターンの変更には、電気を使用するタイミングの変更、瞬間的な需要レベル(kW)の変更、電力使用量(kWh)の変更が含まれる。

そして、Flexibilityの概念には、上記のDRとDSMの他にも、電力市場に対して能動的にFlexibilityをもたらす顧客が含まれる-と記載されています。原文は以下の通りです:

The flexibility concept encompasses:
– Demand Response (DR) and Demand Side Management (DSM) as a means to achieve flexibility in demand, generation and storage.
– The customer actively providing flexibility to the market

すこし分かりにくいのですが、「8.2.3.5 Grid and market area – using the flexibilities」に掲載された下の図から、DR、DSMが系統運用に使われる技術的なFlexibilityであるのに対して、電力市場で取り扱う商業的なFlexibilityもあるということかと思います。

以上、前回の「1.3標準策定機関内のスマートグリッドに関する組織と対応状況」の差し替えと、欧州の標準策定機関3団体が組織したスマートグリッド調整グループ(SG-CG:Smart Grid Coordination Group)が、ECの標準化指令M/490の要請に基づいて作成した4つの報告書から、欧州版スマートグリッドにおけるFlexibilityという概念とDRの位置関係を明らかとし、それとは別に、SEDCという欧州版DSP (Demand Side Program)の在り方を検討する、複数業界にまたがった総合的な組織の3つの報告書から、欧州におけるDR利用状況をご紹介しました。

本日は、ここまでとします。

最後に、前回もご案内させていただきましたが、再度「第1回大阪KNX住宅・ビル制御テクノロジー・アプリケーションフォーラム」をご案内させていただきます。まだお席に余裕がございますので、皆様のご参加をお待ちしています。

第1回大阪KNX住宅・ビル制御テクノロジー・アプリケーションフォーラム
~ 現代都市生活のためのエコで快適な省エネ環境づくり ~

2014年10月17日(金) – 13:30開始

会場: ザ・リッツ・カールトン大阪

参加方法
フォーラム参加は無料です。案内状のダウンロードはこちらをクリックしてください。
職場や取引先の方にご自由に転送・配布していただいて結構です。

なお、席数は限られておりますのでご了承ください。準備の都合上、10月15日までに参加ご登録いただけますと幸いです。

KNXテクノロジー・アプリケーションフォーラムへの皆様のご参加を心よりお待ち申し上げております。

終わり