Winter light in the Yarrow Valley

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久しぶりにブログを更新します。

突然ですが、「技能五輪」というのをご存知でしょうか?
中央職業能力開発協会(Japan Vocational Ability Development Association:JAVADA)によると、技能五輪は青年技能者の技能レベルを競う技能競技大会で、各都道府県職業能力開発協会等を通じて選抜された、原則23 才以下の若者を集め、毎年全国大会が開催されています。
その目的は、「次代を担う青年技能者に努力目標を与えるとともに、大会開催地域の若年者に優れた技能を身近にふれる機会を提供するなど、技能の重要性、必要性をアピールし、技能尊重機運の醸成を図ること」だそうで、全国大会での「競技種目」は、以下の6種40種目です。

1) 金属系

• 構造物鉄工
• 電気溶接
• 自動車板金
• 曲げ板金
• 車体塗装

2) 電子技術系

•メカトロニクス
•電子機器組立て
•電工
•工場電気設備

3) 機械系

• 機械組立て
• 抜き型
• 精密機器組立て
• 機械製図
• 旋盤
• フライス盤
• 木型
• 自動車工

4) 情報通信系

• ITネットワークシステム管理
• 情報ネットワーク施工
• ウェブデザイン

5) 建設・建築系

• タイル張り
• 配管
• 石工
• 左官
• 家具
• 建具
• 建築大工
• 造園
• 冷凍技術
• とび

6) サービス・ファッション系

• 貴金属装身具
• フラワー装飾
• 美容
• 理容
• 洋裁
• 洋菓子製造
• 西洋料理
• 和裁
• 日本料理
• レストランサービス

技能五輪種目の内、機械系―「機械組み立て」種目に参加した、パナソニック従業員の大会までおよび大会での様子を紹介するドキュメンタリーのホームページがありましたので、技能五輪がどのようなものかご覧いただくため、そのホームページにあった写真と、ビデオへのリンクを、再掲させていただきます。

出典:Panasonic ism モノづくりスピリッツ発見マガジン Archives  映像へのリンク

その他にも、電子機器組み立て、溶接、ウェブデザイン、左官、造園、美容、理容、洋菓子製造まで、実に多彩な種目から構成されています。

このうち、電子技術系-「電工」の種目では、ビルや工場、一般家庭の電気設備の工事の技術を競います。JAVADAの説明によると、「スイッチやコンセントの取付、空調設備や産業用機械、照明への配線、電線を保護するために配管などの他に、最近では、機械や照明などの制御回路の設計や施工などもするようになってきた」とあります。

「機械や照明などの制御回路の設計」というと、KNXでは、ETSというツールによって実施する内容。日本にKNX技術で出来上がった家・ビルが建つには、KNXデバイスが日本で出回るだけでなく、KNXに精通した「電工」技術者の養成が必要だと、改めて認識しました。

ただし、「そう考えると日本でのKNX普及はまだまだ先か?」というと、実はそんなに悲観したものではありません。

なぜかと言うと、

技能五輪全国大会は、国際大会(World Skills International)への派遣選手選考会をかねています。いつからそうなったのかわかりませんが、少なくとも2011年に開催されたロンドン国際大会から、「電工」部門(=Electrical Installation)では、KNX技術に基づいて競技が行われるので、日本からの国際大会参加者もKNX技術を身に着けて大会に臨むようになったからです。(Generation KNX p.3)

そして、なんと2009年カルガリーで開催された国際技能五輪大会および2013年ライプチッヒで開催された国際技能五輪大会の「電工」部門で、日本がゴールドメダルを獲得しています。(Worldskills – Electrical Installations – Recent Medals

そして、今年の2月、新横浜テュフラインランドジャパン社テクノロジーセンターで開催したKNXトレーニングには、この2009年、2013年のゴールドメダリストの方たちが、すでに身に着けられているKNX技術の再確認と、後輩の指導のため参加してくださいました。

また、来年は、ブラジル-サンパウロで国際技能五輪大会が開催されるのですが、今年日本で開催された第52回全国大会の電子技術系-「電工」部門優勝者の方も、来年の国際大会に向け、今月16-19日、新横浜テュフラインランドジャパン社テクノロジーセンターで実施したKNXのトレーニングに参加していただいています。

来年のサンパウロ国際大会電子技術系-「電工」部門でその方にゴールドメダルを勝ち取っていただければ、私自身、そのゴールドメダリストにKNX技術を伝授したチューターとして大きい顔ができるので、今から来年の国際技能五輪大会の結果が楽しみで仕方がありません。

とにかく、すでに世界最高レベルのKNX技術者が日本に存在しているということがお分かりいただけるのではないかと思います。

なお、このように国際技能五輪大会の「電工」部門での競技にKNXが採用されているのは、KNXが、単に国際標準であるということではなく、世界中で使われている実用的な技術である証ではないでしょうか?

KNX協会のプレスリリースによると、国際大会だけでなく、今年開催されたEuropean WorldSkills competition や WorldSkills ASEAN Competition Hanoiでも「電工」部門はKNX技術に基づいて競技が行われたようです。

 

もう1つ、すでにKNXが採用されているプロジェクトを発見しました。

NEDOが「日本の優れた技術をパッケージ化し、海外市場へ展開する」というキャッチフレーズで実施しているスマートコミュニティ・プロジェクトの1つで、フランスのリヨン再開発地域を対象とした「リヨン/コンフルエンス再開発とリヨンスマートコミュニティ」プロジェクトです。これは、リヨン都市共同体(Le Grand Lyon)が推進するスマート化事業にNEDOが協力する形をとっており、実質的には東芝および東芝ソリューションが作業を請け負う形をとっているようです。(下図参照)

出典:「スマートコミュニティサミット2014 リヨンスマートコミュニティプロジェクトを通して分かったこと(第1報)」

 

このプロジェクトでは、東芝がNEDOと共同開発した、人感センサに基づいて行動推定エンジンで生活シーンを推定し、それに応じた家電機器を制御するOmotenashi機能付きHEMSが1つの目玉となっています。(下図参照)

出典:「スマートコミュニティサミット2014 リヨンスマートコミュニティプロジェクトを通して分かったこと(第1報)」

よくご覧いただきたいのですが、このHEMSでは、人感センサを含めすべてのセンサと、ヒータやブラインド制御、その他各種スイッチ、および電力・ガス・水道メータの計測機器を、KNX技術を使って制御しています。
#図中、「KNX(有線)」となっている部分です。

NEDOが関与しているプロジェクトで、このようにしっかりKNX技術が利用されていたとは全く知りませんでしたので、これは非常にうれしい発見でした。

ただ、よくよく考えてみると、センサ、アクチュエータや電気設備など、HEMS、BEMSで制御する設備には、現地で手に入りやすい部品を使用した方が安価で良いものができるので、フランスの場合KNXデバイスが選択されたのは当然と言えば当然かもしれません。

「郷に入れば郷に従え」

日本のHEMS、BEMSベンダー企業の方は、自社ソリューションを海外展開するに際して、このNEDOプロジェクトが検討の結果たどり着いた結論に関して、玩味していただければと思います。

KNXは、今年、日本KNX協会として2月に産声を上げたばかりで、これから普及活動に精を出さなければと思っていたのですが、このように、十分KNX技術を使いこなすノウハウをお持ちの方がすでに日本にもいらっしゃるということが分かりました。

来年は、日本KNX協会事務局として、より一層、日本でのKNXの普及に向けて活動の幅を広げていきたいと思います。

もちろん、自分のライフワークであるデマンドレスポンスも、並行してウォッチしていくつもりです。

 

今年一年、本ブログをお読みくださり、ありがとうございました。

来年も、DRとKNXを中心に、情報発信を続けていく所存ですので、どうぞよろしくお願いいたします。

以上