Ballakilleyclieu – Isle of Man
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突然ですが、今回から何回かに分けて、MISOについてご紹介したいと思います。
以前、米国最大の系統運用機関であるPJMのDRプログラムをこのブログで取り上げましたが、表題にあるように、MISOと、MISOのDRプログラム、そしてMISOのDIRについてご紹介したいと思っています。
まず、「MISO」は、何の略でしょうか? もちろん、「みそ」のローマ字表記ではありません。 次の中から選んでください:
1) Minnesata ISO
2) Midwest ISO
3) Midcontinent ISO
出典:http://www.greenbeltenergyco.com/UserFiles/Image/ISO-Map.gif
上図は、少し古い米国のISOマップです。
ISO(Independent System Operator = 独立系統運用者)名の内、CAISO(=カリフォルニア州)、NYISO(=ニューヨーク州、上図右上サーモンピンク色のエリア)は、系統運用者の管轄エリアの州名を冠しています。ERCOTも「ISO」と称してはいませんが、最後の文字「T」はテキサス州の「T」です。しかし、MISOのMは、Mの頭文字の州、例えば1)のミネソタ州のことではありません。
また、複数の州にまたがった系統を管轄エリアにするPJMも、もとはといえば、P (Pennsylvania=ペンシルベニア州)、J(New Jersey=ニュージャージー州)、M(Maryland=メリーランド州)という3つの州からその名が出来上がっていますし、ニューイングランド地方(上図右上黄色のエリア)を管轄エリアにするISOは、そのものずばりでISO New Englandです。
MISOも、1998年9月、⽶国中⻄部(Midwest)で送電線を保有する電⼒会社が集まって出来上がりましたので、設立当初は、⽶国中⻄部独⽴系統運用者(Midwest ISO)の略でした。 ところが、PJM同様、その後、MISOは系統の管轄エリアを広げていき、2012年には、米国内ばかりではなく、カナダのマニトバ州まで拡大しました。次の図は、マニトバ州まで併合したMISOが、まだMidwest ISOと呼ばれていた頃のものです。
出典:http://www.opuc.texas.gov/images/iso_rto_map.jpg
国境をまたいでMidwestという米国での地域名称がそぐわなくなったのか、2013年4月、MISOは組織名称を「Midcontinent ISO(北⽶内陸独⽴系統運用機関)」に改称しています。
更に、2013年12月、MISOの管轄エリアにミシシッピー州、ルイジアナ州、アーカンサス州とテキサス州の⼀部が新たに加わり、⽶国を縦断する15州の全部または⼀部とカナダのマニトバ州に跨る世界⼀大きな地域送電機関(Regional Transmission Organization:RTO)となっています。
下図は、現在の北米の系統運用機関(ISOとRTO)の管轄エリアを示しています。
出典:http://www.isorto.org/about/default
なお、RTOに関していえば、MISOはPJMよりも早く、2001年12月に、米国初のRTOに認定されています。 一般にPJMが米国内最大のRTOとされていますが、MISOが北米で一番広い地域を管轄していることは、この図から一目瞭然です。そこで、MISOとPJMを比較してみましょう。
MISO | PJM Interconnection | |
本社 | キャメル(インディアナ州) | バレーフォージ(ペンシルバニア州) |
メンバ企業 | 175企業 | 942企業 |
発電設備容量 | 195,231 MW | 183,604 MW |
ピーク負荷 | 133,181 MW | 165,492 MW |
年間供給電力量 |
668,277GWh (2014 MISO Independent Load Forecast ) |
837,796 GWh |
年間市場取引高 | $37 Billion | $50 Billion |
管轄エリア | 米国15州とカナダのマニトバ州 | 米国13州とワシントンDC |
送電線総延長距離 | 65,250マイル | 62,556マイル |
需要家数 | 4800万人 | 6100万人 |
Webサイト | Misoenergy.org | pjm.com |
出典:「MISO Fact Sheet」、「PJM at a glance」等
以上のとおり、MISOの管轄エリア(と送電線総延長距離)、発電設備容量はPJMより大きくなっていますが、エリア内の需要家数、需要量、市場取引高ではPJMに次いで2位のポジションを占めています。 電力取引に関しては次回眺めることにして、今回は最後にMISOエリアの発電事情について見ておきましょう。
※以下は、2014年IEEE PES(Power & Energy Society)の資料「Wind Forecast Integration at MISO」なので、先のPJMとの比較表内の数値と違うのですが、ご容赦ください。
まず、MISOエリアの発電設備容量の内訳をみると、石炭・石油・天然ガスを燃料とする火力発電が80%、残り20%の内再生可能エネルギーが12%、原子力発電が8%という構成になっています。また全体の12%を占める再生可能エネルギーの構成は、風力65%、水力30%、バイオマス3%、その他2%となっており、風力発電の比率が高いことがわかります。
その理由として、MISO管轄エリアの風況の良さがあるようです。
※上図中の年間平均風速80mというのは、8mの間違いだと思いますが。。。
とにかく、そういうことで、MISOエリアの各州では積極的に再生可能エネルギーを利用するため、独自に再生可能エネルギー・ポートフォリオ基準(Renewable Portfolio Standard:RPS)の導入を進めているようです。
その結果、MISOエリアでは、今後も風力発電設備容量の増加が見込まれています。
ただ、風力発電量は月によってバラバラ。
それどころか、ピーク時間帯に風力発電設備からどれほど電力供給できるかは、10%以下から70%まで、日によって変化します。
MISOエリアでは、風力発電の増設に送電設備が追い付かず、送電線混雑が発生。必要に応じて風力発電抑制が行われてきたようです。
ただし、「MISOが風力発電抑制指令を出すと、自動的に風力発電が抑制される」というようなものではなく、MISOから、MISO配下の需給バランス調整組織(Balancing Authority:BA)を介して風力発電設備に連絡が届き、マニュアルで発電抑制をするという、人間系での対応がとられてきたようです。
出典:http://www.clean-coalition.org/resources/integrating-high-penetrations-of-renewables/
再生可能エネルギー大量導入による系統問題として、CAISOのダックカーブ(上図)が有名ですが、これは太陽光発電なので大きな出力変動の発生する時間はある程度予想できますが、風力発電出力の変動は、もっと大変そうです。
そこで、MISOでは、電力取引市場で、従来の非常時用の予備力ではなく、風力発電の出力変動に対応可能な柔軟性を持った予備力(Ramp Capability:RC)の導入を検討し、「フレキシブルな電源」としてDRも積極的に利用しようとしています。
ところで、再生可能エネルギーの発電量は、天気任せですが、ウィンドファームやメガソーラー施設内に大型蓄電池を設置し、蓄電池への充放電により、再生可能エネルギーの外部出力を平準化するというアイデアは昔からあり、日本では青森県に大型NAS電池を併設した二又風力発電所があります。
筆者は、今年5月、米国で、同様の蓄電池併設ウィンドファームを運用しているDuke Energy等へのヒアリングを行いましたが、まだ大型蓄電池が高価なので、蓄電池導入に対して政府の補助などがなければペイしないというのが一般的な反応でした。
これに対してまた、MISOは、もう1つ別のアプローチをとっているようです。それがこのブログのタイトル「MISOのDRプログラムとDIR」に忍び込ませた「DIR」です。 「DIR」は、Dispatchable Intermittent Resourceの略で、発電指令(Dispatch指令)で出力制御可能な「Intermittent Resource」。すなわち、太陽光発電や風力発電のような、時々途切れる電源を発電指令で制御してしまおうということのようです。
実は、DIRという言葉に出会ったのは数か月前なのですが、それ以降なかなか調査する時間が取れず現在に至っています。 そこで、まず、本日はMISOの概要をご紹介しましたが、次にMISOの電力取引について、また、その中でDRがどのように取り扱われているかについてご紹介しつつ、DIRに関して調査し、最後にDIRについてもご紹介しようと思っています。
以上、今回は、MISOの概要と、MISOエリアの発電事情についてご紹介しました。
終わり
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