The Unicorn, Barton upon Irwell
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前回は、カリフォルニア州でのTE(トランザクティブエネルギー)実証プロジェクトRATESをご紹介しました。
TEの実証実験なら、「トランザクティブエネルギー-その3」でご紹介したように、5年以上前から太平洋岸北西部スマートグリッド実証プロジェクト(Pacific Northwest Smart Grid Demonstration Project)では、TEを交えた実証実験を行ってきたわけですが、これは、TEでも「トランザクティブコントロール」と呼ばれる「流派」(その6参照)。それに対して前回ご紹介したのは、「トランザクショナルEMIX(Transactional EMIX:TeMIX)」と呼ばれるトップダウンアプローチの「流派」の(その7参照)実証のご紹介でした。
TeMIXは、OASISが策定したエネルギー市場情報交換(Energy Market Information Exchange:EMIX)の標準をトランザクション環境下の取引に特化させたもので、これは、OpenADR2.0がOASISのエネルギーインターオペレーション(Energy Interoperation:EI)標準の「OpenADRプロファイル」に基づいているように、TeMIXも同様、EI標準の「トランザクティブEMIXプロファイル」に基づいています(その8参照)。EIとOpenADRとTeMIX両プロファイルの関係を以下で再確認してください。
※OASIS EI1.0仕様書よりインターテックリサーチが作成
さて、今回は「分散型エネルギー資源有効活用に向けたブロックチェーン」の第2弾として、LinkedIn内でTEに関して議論するグループTEA(Transactive Energy Association)から届いた話題『Sonnen and Tennet utilize home storage for grid stabilization using Blockchain technology』をご紹介します。 例によって、直訳/全訳ではないことと、独自の解釈および補足/蛇足/推測が混じっているかもしれないことをご承知おきください。 では、はじめます。
ブロックチェーン技術を利用した住宅用ソーラー蓄電システムによる系統安定化の実証実験
2017年5月9日 Simon Göß
ドイツ蓄電池メーカーのゾンネン社と系統運用者のテネットは、住宅用ソーラー蓄電システムを相互接続することで24MWの系統用蓄電池として運用し、風力発電の出力抑制を緩和する実証実験を開始した。
ドイツ北部の風力発電所では、風況が良いとドイツ北部の電力需要を上回る発電出力があるものの、ドイツ南部との間の系統の送電容量に限りがあるため、例えドイツ南部で電力が足りなくとも北部で余った電力を南部まで送れず、やむなく風力発電出力抑制が行われていた。
本実証実験は、下図のように、ドイツ北部で風力発電出力が需要を上回る場合、北部のホーム・ストレージ・システムに風力発電出力を吸込むとともに、南部で電力供給量が不足している場合、南部のホーム・ストレージ・システムの電力を放出して南北間の送電容量を超えないようにし、北部風力発電所の出力抑制を最低限に抑えられる可能性を検証するものである。
本年中頃までに6000件のホーム・ストレージ・システム所有者の参加を得て、平均4kW、合計24MWの蓄電容量での実証を目論んでいる。
過去1年間、テネットでは系統安定化に8億ユーロを費やしているが、その費用は電気料金のうち送電料金に含まれているので、この分散ホーム・ストレージ・システムの実証実験がうまくいくと将来電気料金の低下が期待されている。
特筆すべきことは、本実証に参加するストレージは、IBMの商用ブロックチェーン・ソリューションで相互接続され、個々の蓄電池の充放電電力量がブロックチェーンに記録されるので、それが充放電に対する報酬を支払うための透明性の高い記録として機能するということである。
エネルギー供給は、将来、何百万もの小規模分散型電源、プロシューマ(Producer+Consumer)、消費者で構成されることになると想定されており、ブロックチェーン技術は、それらすべての参加者の間で同時にデータ交換を可能にする鍵となるものである。 すなわち、ブロックチェーン技術は、「再生可能エネルギー+蓄電池」という将来のCO2フリーな電力供給において、正に要となるものということができる。
今のところ、エネルギー業界関係者はこの実証実験にそれほど興味を示していないが、住宅用ソーラー蓄電システムの市場浸透率がドイツ市場の10%くらいに達し、蓄電容量として数千MWになれば、このブロックチェーン技術を利用したフレキシブルな仮想の系統用蓄電池は、重要な役割を果たすことになると思われる。
テネットのアーバン・ケッセン会長は、「この革新的なプロジェクトを実施することにより、市民はエネルギー転換に積極的に参加する機会を得ることができる。これは、系統機能を補完する上で今後のエネルギー転換にとって必須要素となるだろう」と述べている。
短いですが、本日はこれで終わりです。
終わり