第4次産業革命と第四次産業革命

Quarry Bank House and Stone Footbridge

The large building is Quarry Bank House. This was built in 1797 for Samuel Greg, owner of the adjacent Quarry Bank Mill, and his family.

The stone footbridge over the River Bollin, in the foreground next to Quarry Bank Mill, was built for the Gregs in 1820.

Quarry Bank Mill, on the River Bollin in the village of Styal, was founded by Samuel Greg in 1784 for the spinning of cotton and, by the time of his retirement in 1832, it was the largest cotton spinning business in the UK. The mill was originally powered by a water wheel. During the 19th century, this was supplemented by steam engines as the water supply from the Bollin was inconsistent during the summer months.

In 1939, Quarry Bank Mill and the surrounding estate were donated to the National Trust and are open to the public. The mill is one of the best preserved textile mills of the Industrial Revolution period and now serves as a museum of the cotton industry. Commercial production at the mill continued until 1959.

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昨年末から今年の年頭にかけて、最近気になっている話題をいくつかブログで取り上げました:

  • 2016年12月30日:第四次産業革命とは何か?どう対処すればよいのか?
  • 2017年1月1日:電力自由化はこれからが本番
  • 2017年1月7日:デジタルグリッド
  • 2017年1月9日:分散型エネルギー資源有効活用に向けたブロックチェーンの役割

その後、3月、5月、7月にぱらぱらと話題を提供させてはいただきましたが、気がつくと10月。

早いもので、今年の3/4、今年度の半分が過ぎてしまいました。

今年は、籍を置かせていただいているエネルギー総合工学研究所で「第四次産業革命がエネルギービジネスにもたらす影響度調査」を担当させていただき、その関連の調査と、関係者へのヒアリングであっという間に時間が経ってしまいました。

その調査結果の一部は、10月8日に千代田放送会館で開催された第32回エネルギー総合工学シンポジウムで発表させていただきましたが、しばらく本ブログへの投稿ができていなかったので、これから何回かに分けて、このブログでも発表させていただこうと思います。今回の副題は、「第4次産業革命と第四次産業革命」です。

なお、10月8日の講演でも、エネルギー総合工学研究所の1研究員の見解として発表させていただいており、ここで披露させていただくものがエネルギー総合工学研究所としての見解ではないことにご留意ください。

では、はじめます。

1.第四次産業革命に関連した世界の動き

第四次産業革命という言葉は、日本ではインダストリー4.0という言葉と同時に耳にしだした言葉ではないかと思われる。
そこで、まずインダストリー4.0に関して簡単に振り返ってみることとする。

インダストリー4.0

独連邦教育研究省は、2005年に発表した「2020年のハイテクノロジー戦略」という⽂書の中で、既に生産プロセスをデジタル化する必要性を指摘している。そして、2009年に発表した「統合システムに関する国家ロードマップ2009」の中で、「生産プロセスのデジタル化については、個々の企業や研究機関が取り組んでいるが、横の連携が取れておらず、標準化が進んでいない」として、連邦政府が主導権を握って学際的な⼤規模プロジェクトを実施することの必要性を指摘。2011年のハノーバー・メッセで、経済界、連邦政府、学界の代表が共同声明を発表した際、このプロジェクトに「インダストリー4.0」という呼び名が与えられた。(出典:日経ビジネスONLINE インダストリー4.0とは何か?

ここで、「インダストリー4.0」の「4.0」は、 水や蒸気を動力源とし、機械生産が始まった、所謂「産業革命」を最初の産業構造の変化(=インダストリー1.0)と考えると、電力を用い、分業・流れ作業による大量生産に産業構造が移行したのが第二次産業革命、エレクトロニクスとITを利用したオートメーションへの移行が第三次産業革命で、今回が4番目の産業構造の変化の時期、すなわち第次産業革命であるとの考え方に基づいている。

出典: bcmpublicrelations.com 「What is Industry 4.0?」

ここから、インダストリー4.0と第四次産業革命が同義と捉えられることもあるが、インダストリー4.0は、独連邦政府が国家戦略として4番目の産業革命によってもたらされる将来の工業生産のビジョンを示すものではないかと考える。

2011年11月に独連邦政府が公布した「High-Tech Strategy 2020 Action Plan(高度技術戦略の2020年に向けた実行計画)」の中で戦略的施策の一つとして記載された「Industrie4.0」の要点を記すと、以下のとおりである。

・インダストリー4.0は、産学官一体となって取り組む10 年から15 年、20 年といった長期を展望する戦略プランである
・インダストリー4.0が目指すのは、生産設備や部品、製品、⼈間が互いにつながり情報をやり取りすることで、結果的にコストや無駄を今よりも⼤幅に削減しながら、「Mass Customization(個別⼤量生産)」を実現することにある
・そのために、生産に関連するあらゆる生産機器や搬送機器、部品・半製品・製品に IDチップやセンサ(情報取得)、エナジーハーベスト機構(駆動源)、CPU(情報処理)、無線回路(情報送信)などで構成されるモジュールを装着して無線通信でつなぐほか、仮想と現実を融合した高度な生産を可能にするCPS(Cyber Physical System)を開発する
・また、多様な製品に対して柔軟に工場内の生産設備が対応し(スマート工場)、生産情報がサプライヤーとも共有されて必要な部品が必要なタイミングで納入される必要があるので、サプライヤーにおける生産システムも含めたバリューチェーン全体の最適化を行なう
・工場がスマート化されることにより、エンジニアリングチェーンやサプライチェーン全体から膨大なデータが収集され、解析されて可視化することが可能になる
・こうした革命的変化をドイツが主導することによって、ドイツが強みとする製造業の産業競争力を一段と強固にし、高賃金国でありながら自国内に製造基盤を確保し、輸出力をさらに強化していく

以上、インダストリー4.0の特徴を列挙したが、インダストリー4.0の対象は、「考える工場」を中心に、その工場で使う部品・原材料や工場で生産される製品販売までのバリューチェーンに限定されている点を考えると、産業革命というよりは、「製造業革命」と言った方が内容を良く表しているのではないかと考える。 インダストリー4.0が、ドイツ発祥の、欧州における産業構造変革の捉え方であるのに対して、他の国ではどのようにとらえているのか?
日本の動きを確認する前に、米国の動きを簡単に振り返る。

インダストリアル・インターネット/IIC

GE(ゼネラル・エレクトリック)は、2012年、業界に先駆けて「インダストリアル・インターネット」のビジョンを掲げ、産業機器から得られる稼働状況データの収集、分析を行うソリューションの提供を始めた。

インダストリアル・インターネットは、すべての先端機器に予測機能を付与し、障害を予防することで、機器の性能を向上させ、より強く、迅速かつクリーンで安全な世界の実現を目指すものである。

インダストリアル・インターネットによって、航空機エンジンの燃料消費や長距離貨物列車の運行システム、火力発電の燃焼効率をわずか1%改善するだけで年間およそ200億ドルの利益を生み出すことになるとGEは試算している。

出典:GE社「インダストリアル・インターネット」

インダストリー4.0では、現代が4番目の産業革命の時代と捉えているのに対して、GEでは、過去200年間で世界はイノベーションの波を3回経験したと捉えている。

第1の波が、蒸気機関の商業化によって18世紀中ごろ始まった産業革命。第2の波は、20世紀の終わり頃到来したインターネット革命。そして、第3の波がインダストリアル・インターネットで、「世界は産業革命の結果として可能となったグローバル産業システムとインターネット革命の一部として開発されたオープンコンピューティング /通信システムの融合によって、生産が加速され、非効率性と廃棄物が減少し、人間のワークエクスペリエンスを向上する新たな未知の領域が切り開かれたとしている。

出典:GE社「 Industrial Internet: Pushing the Boundaries of Minds and Machines

2014年3月27日、IoT技術、特にインダストリアル・インターネットの産業実装と、デファクトスタンダードの推進を目的としてインダストリアル・インターネット・コンソーシアム (Industrial Internet Consortium:IIC)が設立された。
設立時メンバは5社(AT&T、シスコシステムズ、ゼネラル・エレクトリック、IBM、インテル)であるが、現在ではコンソーシアムメンバーは250社で、日本からも、日立、東芝、三菱電機、三菱重工、富士電機、富士通、NEC、富士フィルム、横浜国立大学、横須賀リサーチパーク、アズビル、オリンパス、カブク、コニカミノルタ、トヨタ、ミドクラ、ルネサス、リコーがメンバとして参加している。

IICでは、IoT技術活用のために必要な問題を組織的・人的両面から解決していく「思考リーダーシップ活動」や、リファレンス・アーキテクチャ/セキュリティ・フレームワーク/オープン標準をベースにセキュアな相互運用環境を実現する活動、実証の場を「テストベッド」として提供する活動を実施している。https://www.itrco.jp/images/IR4-1-3.jpg

出典:Industrial Internet Consortium の最新状況と 日本への対応

具体的には、エネルギー、医療、製造、運輸、行政の5つの領域で、会員企業同士でプロトタイプを構築したり、外部の国際標準化団体に会員企業の要望を取りまとめ、標準規格として提案航空輸送ネットワーク、電力ネットワーク、医療ネットワークなどの社会システム領域までサービス事業として展開することが構想されており、産業構造ばかりでなく、ビジネス構造/社会構造にも影響を及ぼすものとなっている。

IICの活動範囲をインダストリー4.0と比較すると、インダストリー4.0を包含する関係にある。https://www.itrco.jp/images/IR4-1-4.jpg

出典:Industrial Internet Consortium の最新状況と 日本への対応

第4次産業革命と第四次産業革命

6年前、インダストリー4.0という言葉とともに日本に入ってきた第4次産業革命を、なぜエネルギー総合工学研究所で調査対象としたのか?

以下のGoogle Trendsサービスで作成した情報をご覧いただきたい。http://wwww.itrco.jp/images/IR4-1-6.jpg

すべての国を対象として過去5年間(2012年から2017年まで)の第四次産業革命の英語「Fourth Industrial Revolution」と、インダストリー4.0の英語及びドイツ語の検索頻度を表示させたところ、人気度の動向(上段のグラフ)が示すように、赤と黄色の線で示される「インダストリー4.0」検索頻度に対して、青い線で示される第四次産業革命は、2016年1月に突如ピークが立ち、その後も検索頻度が高い状態が続いていることがわかる。

また、地域別のインタレスト(下段の地図)を見ると、ドイツでは当然ドイツ語のインダストリー4.0、日本では英語のインダストリー4.0の検索頻度が高いのに対して、他の各地では、第四次産業革命の英語が検索されている。

ところで、2016年1月に何があったのか? 答が2つ見つかった。https://www.itrco.jp/images/IR4-1-7.jpg

・毎年1月、世界経済フォーラムはスイスの保養地ダボスで年次総会を開催しているが、2016年の年次総会のテーマが第四次産業革命だった

・その世界経済フォーラムの創設者であるクラウス・シュワブ氏が、ダボス会議に先立って「第四次産業革命」という本を1月に出版していた。(因み日本語版は去年10月に発刊されている)

そこで、今再び脚光を浴びている?「第四次産業革命」に注目し、シュワブ氏の著書をベースに、「第四次産業革命」の特徴をまとめてみた。

余談になるが、日本語では、数字を表すのにアラビア数字と漢数字両方があるため、第4次産業革命と第四次産業革命の両方が用いられているが、本ブログでは、インダストリー4.0と同義で語られるものを第4次産業革命、シュワブ氏の書著の文脈で用いられる場合は、同氏の著書の日本語訳に即して第次産業革命とした。

 

以上、今回は、2016年1月に発刊されたシュワブ氏の著書「第四次産業革命」に注目したことを示すため、「第4次産業革命と第四次産業革命」というサブタイトルしました。

次回は、シュワブ氏の著書「第四次産業革命」の内容を簡単にご紹介したいと思います。

終わり