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これまで、7回にわたって、世界経済フォーラムの創始者であるクラウス・シュワブ氏の著書「第四次産業革命~ダボス会議が予測する未来~」に基づいて、第四次産業革命が日本のエネルギービジネス(とりわけ電力ビジネス)にどのような影響をもたらすのかを考えました。

実際にどのような影響がいつごろ出てくるのかわかりませんが、いつの時代の産業革命も、「革命」がもたらす影響として、「光と影」の部分があるので、それを十分認識しながら慎重に「革命」を推し進めていきましょう-というのが、シュワブ氏の言いたいことだと思います。

さて、今回は、エネルギービジネスの流通部門に第四次産業革命が影響をもたらす1つと考えられる「トランザクティブ・エネルギー」と「ブロックチェーン」技術について、GTMリサーチの11月1日付けの記事「Can LO3 Energy Cut Through the Hype on Blockchain?」をご紹介しようと思います。 例によって、全訳ではないことと、本人の思い入れが入った超訳になってしまっているかもしれないことにご留意ください。

では、はじめます。

LO3 Energyは今はやりのブロックチェーン技術を使いこなせるか?

2017年11月1日 エマ・マーチャント

世界初のブロックチェーン・マイクログリッドを構築したLO3 Energy社(以下、LO3)は、自らを「トランザクティブ・エネルギー・カンパニー」と称している。ニューヨーク市ブルックリン地区を拠点とする同社には、シーメンスがバックについており、Braemar Energy VenturesおよびCentrica Innovationsからの新規投資を受け、ブルックリンから世界に羽ばたこうとしているようだ。最近、ドイツで2つの新しいプロジェクト(カールスルーエ工科大学の研究プロジェクトと、様々な分散電源を用いた仮想マイクログリッド実証プロジェクト)を進めることを発表。その他にも、欧州、オーストラリア、米国で共同プロジェクトを進めている。

LO3を含め、ブロックチェーンはエネルギー産業のゲームチェンジャーとして注目を集め、過去数年間で何百万ドルもの投資資金を集めてきた。ブロックチェーンには多くの期待が集まっているが、LO3のローレンス・オルシーニ(Lawrence Orsini)CEOは、「ブロックチェーンは期待が先行しすぎていて実態が伴っていない」と警鐘を鳴らしている。

「LO3も、3年前に同技術をコミュニティ・マイクログリッド内でのピアツーピア取引の検証に採用したことで注目を浴びているが、本当のイノベーションは、各企業がいかにブロックチェーンを使いこなすかというところにある。我々は、たまたまブロックチェーンを採用したが、もしさらに効率的な方法があれば、それを使っただろう」-とLO3の事業開発担当のスコット・ケスラー(Scott Kessler)ディレクターは述べている。

ところで、世間の耳目を集めているLO3のブルックリン・マイクログリッド・プロジェクトとは、一体どのようなものなのか?それは、ブルックリン地区の一部(Gowanus, Park SlopeとBoerum Hill)の住民間でブロックチェーン技術を利用したエネルギー取引の実証を行なったもので、実証開始時にエネルギーを提供する側の参加者はわずか5戸だった。今では60戸の供給者と500戸の需要家が同プロジェクトに参加している。

出典:https://www.greentechmedia.com/articles/read/can-lo3-cut-through-the-hype-on-blockchain

 

ブルックリンのプロジェクトは、広くビジネスモデルの検証を行うことを意図したもので、現在参加している特定のタイプの住人、建物、地域を対象としたマイクログリッドを想定している訳ではなく、電力系統全体にも適用可能となるものを目指している。

オルシーニCEOは、将来の電力供給を水の供給に例えて、次のように話している-「昔、水はボトルで買うものではなく、水道栓をひねって使うものだった。しかし、昔同様、水道栓をひねれば水が出てくるにもかかわらず、人々は、コンビニなどで売られている高価なボトル入りの水を好むようになった。LO3は、分散電源が一般化すると、人々がエネルギーについても同じように感じるようになるのではないかと考えている。今は、そのテストをブルックリンのコンビニで試している段階だ。」

ところで、LO3は、マイクログリッド内でのピアツーピア取引を実現する上で必要となるソフトウェアだけでなく、マイクログリッド内での需給バランスをとるため、独自開発したスマートメーターを提供している。プロジェクト参加者宅のメーター同士の通信インフラが、同社のプラットフォームのバックボーンを形成しているが、その通信において、電力売買の自動契約の遂行にブロックチェーンのスマートコントラクト機能を利用して、顧客同士が自分のエネルギー使用を制御できるアプリケーションを構築している。プロジェクト参加者は、1日あたりのエネルギー消費量だけでなく、私用するエネルギーを選択することができる。 供給されるエネルギーの価格は一律ではなく、例えば、再生可能エネルギーは従来の電力よりも高価格である。 参加者は、どこからエネルギーが得られているかを正確に確認できる。

ブロックチェーンのアプリケーションは、エネルギーの生産と流通を円滑にする無限に近い可能性がある。次のステップとして、DR資源提供者(需給バランスを満たすためにデバイスの電源をオン/オフにする消費者)への支払いや、電力取引で使用される送信インフラの利用頻度に応じた課金の自動化が考えられる。

なお、LO3で採用しているブロックチェーン技術は、Bitcoinのように応答時間が遅い(数分かかる)ものではなく、数秒以内に応答するものを採用していて、ピアツーピアの電力取引自体を検証できるようになっている。
昨今、将来の電力系統のビジネスモデルを考えていた専門家たちは非常に混乱している。なぜなら彼らにも将来は見通せていないからである。LO3は、ブルックリンのプロジェクトを通じて、人々が新しい技術や新しい選択肢にどのように反応するかを見ているところである。

コメントおよびLO3からの回答:

Be:そうか! LO3は、Bitcoinで売買決済を行なうためにブロックチェーン技術を使っているのではなく、分散電源のやり取りをセキュアに計測するシステムを構築するために使っているということですね?

Darko:L03はethereumというブロックチェーン技術を使用していると聞いていますが、etherreumは取引検証方法として、現在、電気をたくさん食う” Proof of Work”法を使用しています。しかし、もっと効率的な” Proof of Stake”法への変更が計画されているようです。

オルシーニCEO:LO3では、昨年中頃、6回目のピアツーピア取引実施後は、Ethereumではなく、Ethereum準拠のVM上に構築したハイブリッド・ブロックチェーン・アーキテクチャを使用しています(IBMクラウドで提供されているブロックチェーンAPIでしょうか?)が、近い将来、更に変更される可能性があります。

Darko:なぜ変更するのですか?次のフォークが待ちきれない?

オルシーニCEO:取引に要する時間、ネットワークコスト、その他を考慮した結果、我々がしなければならないことが実現できないと分かったからです。

以上、今回は、GTMの記事から、LO3 Energyの話題を取り上げました。

終わり