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前回は、PJMが2017年6月末公開したペーパー「Demand Response Strategy」の「Markets and Operations」から、「Future State of DR in the Capacity Market」、すなわち、今後PJMでは容量市場の中でDRをどのように扱おうとしているのかーをご紹介しました。 今回は、今後エネルギー市場、アンシラリー・サービス市場でDRをどのように扱おうとしているのかをご紹介しようと思います。
いつもどおり、全訳ではないこと、著者本人の思い込みの入った超訳になってしまっていることをお含みおきください。
でははじめます。

PJMの市場と系統運用(続き)

エネルギー市場

【エネルギー市場の現状】

DRは、経済的DRリソースまたは負荷管理用DR(緊急時DR)リソースのいずれかとして、エネルギー市場に参加することができる。 エンドユーザは、提供するDRリソースを、経済的DRリソースとするのか負荷管理用DRリソースとするのか選択可能で、現在、経済的DRリソースとしてエネルギー市場に登録されているものが3,495MW、負荷管理用DRリソースとして登録されているものが12,866MWある。ただし、エネルギー市場価格が高騰している時間帯でも、発動がかかる経済的DRの最大量は1000MW未満である。
例として、2013年7月18日に発動されたDRの量を示す(下図)。
この日、緊急時(16-18時)には2000MW以上の負荷管理用DRが特定のゾーンに発動されているが、14時や16時、17時の市場価格高騰時に発動された経済的DRは最大でも600MW程度である。

図.Estimated DR in PJM: July 18, 2013

このように、現在、経済的DRの発動機会が限られているため、多くのエンドユーザやCSPは、経済的DRリソースをエネルギー市場に積極的に投入していない。

【エネルギー市場におけるDRの将来の形】

PJMは、エネルギー市場への理想的なDRリソース参加の形は、これまでのような供給側リソースとしての卸売市場への参加ではなく、需要側リソースとして小売市場に参加する形をとるべきだと考えている。 これにより、負荷削減に対して、CSPを介して卸売市場からの収益配分を受け、かつ、負荷削減による電気料金コスト削減という形で利益を得る「二重支払問題」を回避することができる。

PJM管内の電力小売市場の大部分は規制緩和されており、エンドユーザがエネルギーコストを削減したい場合、(DRを含む)小売契約や料金プログラムを選ぶことができる。電力小売市場が規制されている場合でも、州規制委員会は、エンドユーザが規制された料金の下で適切な(DRを含む)オプションを持つことを保証することができる。
PJMは、(直接DR資源調達を行なうのではなく)、LSEに必要な情報とツールを提供して、卸売市場における系統の負荷状況を適切に反映できるようにすることにとどめるべきと考える。 LSEはすでに、PRD(価格反応型需要)のメニューをエンドユーザに提供するに当たって、その価格感度をPJMに対して透明にする機能を備えているが、エンドユーザのPRD参加を促進するのに必要な他の仕組みがあるかどうかを判断するため、PJMはLSEとより緊密に連携する必要があると考えている。

一方、DRが供給側リソースとして卸売エネルギー市場に直接参加する場合のDR資源提供への対価を再検討すべきと考えている。 FERC Order 745の手続を通して議論されたように、DR資源に対して、電源とまったく同等にLMPに基づいて対価を支払うのは、市場の成果を歪ませる。LMPに基づいたフルレートで負荷削減分への対価を支払うのではなく、負荷削減分の電力供給に要したであろう発電コストを除いた方が、エネルギー市場に参加するDRリソースに関する正しい対価の考え方だと捉えている。
なお、PRDの対象となるDR資源に関しては、RPM市場で用いられたPRDカーブに基づいたデフォルト価格を使用すべきかどうかも再検討すべきである。

アンシラリー・サービス市場

【アンシラリー・サービス市場の現状】

PJMのアンシラリー・サービス市場は、用途別にみると運用予備力(Day-Ahead Scheduling Reserve:DASR)、瞬動予備力(Synchronized Reserve:SR)および 周波数調整力(Regulation:Reg)の3種類から構成されており、DRリソースはDASRおよびRegの調達量の25%まで、SRの調達量33%までに参加が制限されている。この制限は、DRリソースが増大した場合のPJMのパフォーマンスに懸念を抱く市場関係者の間の合意として暫定的に定められたもので、見直しが必要なら再度検討することになっている。現状では、DRリソースはDASR市場に参加していない。 DR資源がSRを提供している地点は139箇所あり、年間平均で457 MWのDRリソースが提供されている。 DRのSRでの月間収益は、一般的に1か月当たり50万ドル未満で、提供量は60,000 MWh未満(平均83MW /時)となっている。これらのDRリソースの大部分はPJMの中部大西洋岸地域(Mid-Atlantic Dominion:MAD)に集中している。

DR資源がRegを提供している地点は294箇所あり、年間を通じて平均で16 MWのDRリソースが提供されている。
DRのRegでの月間収益は、一般的に1か月当たり10万ドル未満で、提供量は1,600 MWh未満(平均2MW /時)となっている。

【アンシラリー・サービスの将来の形】

PJMは、DRの調達上限の廃止を含めてルールを見直し、より多くのアンシラリー・サービスのニーズを満たす、応答性の高いDRリソースがPJMの市場に参入できるよう検討していく。テクノロジーの浸透により負荷制御のコストが低下していくため、将来もっと多くのDR資源がアンシラリー・サービス市場に入ってくるものと期待している。
また、電源同様、エネルギー市場とアンシラリー・サービス市場に投入されたDRリソースの共最適化(co-optimize)を検討すべきと考えている。各市場にどのくらいのDRリソースを配置するかをCSPに決定させるよりも共最適化を行なった方が効率的だからである。

次に、瞬動予備力(SR)へのDR参加が増加してきたので、調整力(Reg)だけでなくSR候補のDRリソースに関する試験および遠隔測定要件を見直す必要があると考えている。
2012年、PJMは周波数調整力(Reg)市場に参入するDRリソースに関するルールを変更し、周波数調整力のみを提供する経済的DRの登録および計測と検証プロセスを簡略化して、より多くの経済的DRリソースの参入を可能にした。 従来は、実負荷(あるいは分散電源の正味の負荷)から周波数調整性能評価を行なっていたが、実負荷の絶対量に対して周波数調整量が小さいため、調整性能評価が不明瞭となっていたが、調整力を提供するデバイスレベルでの調整力計測を行うことで、特に蓄電池からの周波数調整力市場参加が大幅に増えた。

本日は以上です。

前回、容量市場の部分をカバーしたので、これでいったん終わりにしようと考えたのですが、今回エネルギー市場とアンシラリー・サービス市場でPJMはDRを今後どう扱っていくのかに関して調べ、ご紹介しました。
次回は、電力需給計画(Planning)に関してDRをどう扱おうとしているのかをご紹介しようと思います。

終わり