Early morning

© Copyright Ian Paterson and licensed for reuse under this Creative Commons Licence.

前回は、1年越しに、仕掛中だったPJMのRegD信号のルール変更について、時系列でどのようなイベントが起きて現在に至っているかをまとめる途中で終わってしまいましたので、その続きです。

2019年1月:Docket No. ER19-383-000 「ORDER ACCEPTING TARIFF REVISIONS」

このFERCの文書によると、2018年11月20日、PJMは、周波数調整市場で特定の電源(RegA電源)の多用を是正するよう、PJMの運用規定並びに送電料金規定の改訂案をFERCに提出し、FERCは2019年1月21日、PJMの改訂案を承認しています。

では、その改定案「PJM’s Proposal」はどういうものだったのか、ご紹介します。

  • この改訂案では、周波数調整市場の清算価格の計算において、「最小有効リソース」(便益係数が0.1未満のRegDリソース)の使用を削除するようにした。これにより、(便益係数に基づいた)計算式の結果の異常により、周波数調整市場で最近観察されている清算価格の大きなスパイクの発生を減らすことができ、ひいては、市場参加者にとって不公正で不合理な結果の可能性を減らすことができる。
  • 本改定案は、当面の技術的な改定案を示したものであり、(PJMの独断ではなく)最近周波数調整で観察されているユニークな出来事に対処するためにPJMの利害関係者による厳密な吟味の上、承認されたものである。この提案が市場全体の機能に与える影響は最小限で、たとえば、本改定案が実装されていたとしても、過去1年間の周波数調整市場の収益は約3.2%しか削減しなかったものと考えている。より広範な改定を行うには、PJM利害関係者のさらなる検討が必要である。
  • この後も5パラグラフ分、延々となぜそうすることでESA等から提訴された苦情に対応することになるのか技術的に説明?しているのですが、正直な感想として、FERCの担当者が果たしてそれを理解しえたのか、少々疑問に感じました。「PJMの独断ではなく、利害関係者からなる専門家集団がこのように結論付けたのだから、それでいいでしょ?」というニュアンスを感じなくもありません。

このPJMの改定案は、米国の官報:Fed. Reg. 61,153 (2018)として公開され、それに対して寄せられた反対意見やコメントも、当Docket No. ER19-383-000の4章「Protests and Comments」に掲載されています。そして、これまで苦情を言ってきたESA等に交じって、PJMサイドで発言してきたMonitoring Analyticsも、「PJMから独立した市場監視組織(Independent Market Monitor)」として、PJMの改定案に反対しています。

それらの反対意見/コメントに対するPJMの回答が5章「Answers」に掲載されたのち、6章「Commission Determination」として、本件に関するFERCの裁定結果が示されていました。

その言い分は、現在両者(PJMとESA等)は、別途予定されている技術会議を通して問題解決を図ろうとしており、当面のルール改定案として、PJMの改定案を認めるというものでした。

前回のブログを作成するに当たって、FERCが推奨した技術会議が一旦延期になった後いつ行われたのか調べたのですがよくわからず、とりあえずESAの苦情を一部認め、RegD電源に関するPJMの送電料金見直し命令に対応するものを見つけたところまでを、「その4」として公開しました。

その後も、技術会議がどうなったか調べたのですが、本日ご紹介したDocket No. ER19-383-000の情報以外としては、2019年5月13日、Monitoring Analyticsが、「FERCの認めた当面のPJMの周波数調整市場のルール改定は何の解決にもなっていない」という趣旨の提言を「COMMENTS OPPOSING SETTLMENT OF THE INDEPENDENT MARKET MONITOR FOR PJM」で行っているのが最新?のようです。

今回ご紹介したPJMの周波数調整市場ルール改定案にしても、上記のMonitoring Analyticsの提言にしても、PJMのパフォーマンススコア、便益係数等を理解していることを前提としているので、「PJMのRegDルール変更」のシリーズは一旦終わりにして、次回は、PJMのパフォーマンススコアについてご紹介したいと思います。

おわり