Five Arch Bridge, Painshill Park
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前回は、Calpine社の苦情に端を発し、(RPS制度で州の補助金を得ている再エネ事業者の容量市場参加を含め)発電事業者に対する州の補助金政策と、容量市場制度の間でどのように折り合いをつければよいかという根本的な問題に関して、FERC、PJM(及びIMM)および、利害関係者の間でどのようなやり取りが行われたかの経緯をご紹介しました。
2019年12月19日、FERCは「ORDER ESTABLISHING JUST AND REASONABLE RATE」でFERCの見解を付してMOPRルール変更のガイダンスを示し、90日以内にCompliance Filling を行うようPJMに命じるともに、ニュースリリース「FERC Directs PJM to Expand Minimum Offer Price Rule」まで出したので、後は、FERCオーダーに従ってPJMがルールを詳細化してCompliance Filingすれば、この第3回目のMOPR改定も決着がつくかと思いきや!、2020年1月末までに実に50近くの団体からFERCに対して12月19日のFERCオーダーに関する再審議要求が出されていました。2020年2月になっても事態は収まらず、それまでこの件に関わっていなかったエジソン電気協会(Edison Electric Institute:EEI)や全米州エネルギー担当官協会(The National Association of State Energy Officials:NASEO)等からもFERCに再考を促す意見書が、届く始末。
それに対して、FRECは例によって、2月18日、「ORDER GRANTING REHEARINGS FOR FURTHER CONSIDERATION」を発行し、急場をしのぎます。
そんな中、PJMはFERCオーダーから90日後の2020年3月18日、「COMPLIANCE FILING CONCERNING THE MINIMUM OFFER PRICE RULE, REQUEST FOR WAIVER OF RPM AUCTION DEADLINES, AND REQUEST FOR AN EXTENDED COMMENT PERIOD OF AT LEAST 35 DAYS」を提出しています。
#5月15日のMPSCの意見書(後述)によると、PJMは、Compliance Filingを行うに当たって9回ステークホルダーミーティングを開催して内容を練るとともに、PJM管内の州規制機関やその集まり?であるOrganization of PJM States(OPSI)にも見せ意見を聞いています。その内容が彼らの意に沿うものかどうかは別として、12月19日のFERCオーダーに従った内容であることに関しては了解が得られた上で、Compliance Filingを行ったようです。
FERCは4月16日、大量に提出されていた再審議要求に関し、改めて「ORDER ON REHEARING AND CLARIFICATION」を発行。前年12月19日のFERCオーダーの再審議要求として指摘された事項それぞれに対して詳細な反論を行い、それをもって再審議要求の中で求められていた明確化(CLARIFICATION)の要望は満たされたものとし、再審議要求自体は却下すると回答しています。
FERCとしては、再審議要求をした相手それぞれに懇切丁寧に拒否理由を述べることで幕引きを図りたかったようですが、オキマリのパターンで、それを不服として複数の利害関係者は、前年12月19日のFERCオーダーの見直しを求めて巡回控訴裁判所に控訴しました。
なお、5月に入ってもPJMが3月18日に提出したCompliance Filingを承認する旨のオーダーをFERCは公布していなかったので、Maryland州規制機関MPSC等複数の団体から、「内容に関して一部気に入らない部分はあるものの、PJMの提出した第3回目のMOPR改訂版の内容は、FERCの12月19日のオーダーに従ったものであり、FERCはPJMの提出したCompliance Filingを承認すべきである」という意見書「COMMENTS AND LIMITED PROTEST OF THE MARYLAND PUBLIC SERVICE COMMISSION」を5月15日に提出しています。
また5月18日に、米国農業電力協同組合(National Rural Electric Cooperative Association:NRECA)とEast Kentucky Power Cooperative(EKPC)は連名で、4月16日のFERCオーダーに関する再審議要求を出し、その他複数の団体からも同様の再審議要求が出ています。
PJMも、2020年6月1日に「SECOND COMPLIANCE FILING CONCERNING APPLICATION OF THE MINIMUM OFFER PRICE RULE」をFERCに提出。内容は、4月16日のFERCオーダーでの「Commission Determination」に対応してMOPR改定案を一部修正したもので、この修正案がFERCに承認され次第DY2022/2023 BRA(実運用年が2022年~2023年向けの初年度オークション)以降のオークションスケジュールを確定したい旨が記されています。そして、6月3日付けの「MOTION FOR LEAVE TO ANSWER AND ANSWER OF PJM INTERCONNECTION, L.L.C.」で、重ねて容量市場のオークション開催スケジュールを早く正常に戻せるよう、早期の改定案承認を求めていますが、FERCの対応は「暖簾に腕押し」状態。6月9日、先にFERCに対して再審議要求を出していたEKPCは、「PETITION FOR REVIEW」で2019年12月19日と2020年4月16日のFERCオーダーの見直しを求めて巡回控訴裁判所に控訴し、複数の団体が同様の控訴を行っています。
その一方で、6月22日、PJM管内の消費者擁護団体からは、PJMが6月1日に提出したMOPR改定案に反対して「PROTEST OF THE JOINT CONSUMER ADVOCATES REGARDING PJM INTERCONNECTION, L.L.C.’S JUNE COMPLIANCE FILING CONCERNING THE MINIMUM OFFER PRICE RULE」をFERCに提出。
と、思えば、同日、今回の第3回MOPR改定の引き金となったCalpine社から「SUPPORTING COMMENTS OF CALPINE CORPORATION」がFERCに提出されており、DY2022/2023のBRAを開催するためFERCは6月1日PJMの提出したMOPR改定案を早急に承認するよう要請しています。
他にも同日「Comments of~」というタイトルで5件、「Limited Comments of~」というタイトルで2件FERCにPJMのMOPR改正案を受け入れるよう要請が提出されていました。
FERC Online eLibraryでは、その後7月7日、「CERTIFIED INDEX TO THE RECORD」でFERCは本件に関連する記録としてFERCオーダーと関連資料(Docket No EL16-49, ER18-1314, EL18-178)として1383点のリストを控訴裁判所に提出していますが、今日(2020年9月20日)現在、控訴裁判所のその後の動きも、2020年6月PJMが提出したMOPR改定に対するFERCの承認/否認の動きもみられません。
そこで、第3回MOPR改定案の最終形の制度がどうなっているか、現時点でご紹介しても、控訴裁判所判定だけでなく、FERC自身がまたPJM提案を否定することもあり得るので、次の動きが出て第3回MOPR改定案の内容がFIXするまで、一旦、本ブログでの連載はストップすることにさせていただきます。
なお、今年6月にMOPR改定案を提出した際、PJMは2019年、2020年と2年続けて開催されなかったBRA(本来3年先の調達)を2021年3月以降、1年ごとではなく6ヵ月ごとに開催して、2019年分(DY2022/23 BRA)を2021年3月、2020年分(DY2023/24 BRA)を2021年9月、2021年分(DY2024/25 BRA)を2022年3月、2022年分(DY2025/26 BRA)を2022年9月に開催し、2023年分から従来通り1年ごとの開催スケジュールに戻すことを考えていたようですが、PJMのCompliance Filingに対して9月中にFERCの承認が出なければ、更にBRA開催時期が遅れてしまいそうです。
出典:PJMホームページ:2020年3月ミーティング資料Item 2 – Proposed Auction Schedule
最後に、第1回MOPR改定~第3回MOPR改定の流れを図にまとめ「MOPR改定の経緯-その3」としましたので、ご覧ください。
おわり