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2022年10月1日からはじまったPJM予備力市場制度変更に関する調査の続きです。
前回、その4では、PJMマニュアルNo.11「Energy & Ancillary Services Market Operations」の変更点を参照しながら、今回の制度変更を見ていきましたが、1つ、お詫びと訂正があります。
実は説明の後半のORDCの部分は、M11で確認せず、手抜きで、PJMの資料Reserve Market Price Formation Enhancementsを用いて説明していましたが、使われていたグラフは2021年4月30日にPJMのSynchronous Reserve Deployment Task Forceで作成された資料のものでした。
PJMとしてはこのORDCの考え方(ORDC後半の拡張部分を漸減する曲線にする)に変更したかったようです。また、その変更内容には非常に自信を持っていたようで、2019年3月29日に提出したDocket No. EL-19-58-000のATTACHMENT Fで、ORDC変更理由を詳細に説明しています。
ただ、PJMのお目付け役であるMonitoring Analytics社等がクレームをつけ(PROTEST OF THE INDEPENDENT MARKET MONITOR FOR PJM – 2019/5/15)、PJMのORDCの変更が予備力市場の効率性改善に寄与するという十分な説明になっていないとしています。FERCは、ORDC変更に関して、当初からずっとPJM案に賛同していたようですが、高等裁判所にまで提訴されたこともあり、最終的にORDCに関してPJMに再考を促した(ORDER OF VOLUNTALY REMAND – 2022/12/22)結果、PJMはORDC変更をあきらめたという経緯をたどっています。
そこで、改めてORDCに関する最新情報をマニュアルM11に基づいてまとめると、以下の通りです。
4.3.3 予備力需要曲線(Reserve Demand Curve)とペナルティ係数
- デイ・アヘッド市場およびリアルタイム市場での市場価格決定に際して、3種類の予備力サービスに関するリザーブゾーンとサブゾーンごとの予備力需要曲線が使われる。
- これらの需要曲線は、指定されたレベルの予備力を維持する価値を明確にし、指定されたペナルティ係数まで、電力と予備力との間の製品代替を確保するために使用される。
- この予備力需要曲線は、Y軸に$/MWhのペナルティ係数、X軸に希望する予備量MWをとって定義されている。
- ペナルティ係数は、システム上利用可能な予備力で希望する予備力を満たすことができない場合に、予備力が評価される価格を表し、市場清算によって予備力が調達されない価格の上限として機能する。
例えば、1,000MWの同期予備力を維持するためのペナルティ係数が850ドル/MWhであるとする。利用可能な予備力が1,000MWに満たない場合、不足するMWは850ドル/MWhで評価される。同様に、1,000MWの要件を満たすのに十分な予備があるにもかかわらず、850/MWh以下の価格で利用できない場合、メリットオーダー価格が850/MWhを超える資源はクリアされず、不足するMWは850/MWhで評価されることになります。
ただし、このような資源は、信頼性を維持するためにPJMの運用担当者が手動でコミットすることが可能で、その場合、そのようなリソースには、サービスを提供するための真のコストがカバーされるように、事後的に追加補償が行われる。
- ペナルティ係数は、RTOおよびモデル化されたリザーブサブゾーンのリザーブポジションを明確に示す指標にもなる。予備力商品の価格がペナルティファクターに近い値まで上昇すると、市場参加者にシステムがリザーブ不足になりつつあることを示す。以下の予備力商品とリザーブゾーンまたはサブゾーンの組み合わせのそれぞれについて、個別の需要曲線が存在する。
- RTO 同期予備力:RTO Synchronized Reserve
- アクティブサブゾーン同期予備力:Active Sub-Zone Synchronized Reserve
- RTOプライマリー予備力:RTO Primary Reserve
- アクティブサブゾーン一次予備力 :Active Sub-Zone Primary Reserve
- RTO 30分予備力
- アクティブサブゾーン30分予備力(該当する場合)
これらの予備力商品と場所別の予備力需要曲線は、Y軸のペナルティ係数が同じという点で似ているが、X軸の望ましい予備力レベルは、予備力商品および場所間の予備力要件の違いを反映して異なっている。これらの需要曲線は、以下のように定義される。
ステップ 1:
- ペナルティ係数 = $850/MWh
- 望ましい予備力量 MW =指定予備力商品の場所別信頼性要求量。
ステップ 2:
- ペナルティ係数 = $300/MWh
- 所要予備量 MW =指定予備力商品の地域別信頼性要件 + 190 MW + α
α =重負荷状態を予期して追加される予備力量
- デイ・アヘッド市場においては、リザーブ要件は経済的最大値に基づいているため、MWの値は1時間ごとに変化する可能性がある。
- リアルタイム市場においては、リザーブ要件はリアルタイムに発生する最大の単一事故に基づいているため、市場清算に使用する需要曲線のX軸のMW値はリアルタイム市場清算ケース実行毎に動的に変化する可能性がある。
以下は、最大単一予備力の出力が1,210MWであった場合の同期予備力の需要曲線の例である。
ということで、M11上の名称もORDC(Operating Reserve Demand Curve)から、予備力需要曲線(Reserve Demand Curve)に変更されていました。
当初のPJMのORDC曲線は、6つの時間帯ごと×4つのシーズンごとにORDCのグラフを作成しようとしていましたので、最終的に落ち着いた現行のRDCと比べた場合、やはりPJMの改訂ORDCの方が良かったのではないかと感じるのは私だけでしょうか?
今回は、ORDCとして間違った情報提供をしてしまいましたので、とりあえずその訂正をさせていただきました。
終わり
Pingback: PJMの予備力市場の制度変更2022―その6 – インターテックリサーチ株式会社