Edlingham Viaduct, Castle and village

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NISTのトランザクティブ・エネルギー(TE)に関する情報まとめの続きです。

今回は、TEチャレンジPhase Iについてまとめようと思います。

実は、TEチャレンジPhase Iについては、「トランザクティブ・エネルギーに関する新たな動き」である程度ご紹介していますが、自分自身忘れていた部分もあるので。

 


 

■NISTがTEチャレンジ Phase I開催に漕ぎ着けるまで

NISTがTEチャレンジPhase I開催に漕ぎ着けるまでの経緯は、以下の通りです:

  • 2013年12月、米国エネルギー省(DOE)内に設けられたGridwiseアーキテクチャー会議(Gridwise Architecture Council:GWAC)は、トランザクティブ・エネルギー(Transactive Energy:TE)のフレームワークを発表
  • 2015年3月、米国標準技術研究所(NIST)は、「TEチャレンジ準備ワークショップ(TE Challenge Preparatory Workshop)」を開催して、連邦政府関係機関や電力業界の一部と共同でTEチャレンジの構想を練り、
  • 2015年7月、TEチャレンジのコラボレーションサイトを立ち上げ、TEチャレンジのコンセプトを正式に発表
  • 2015年9月、5つのチームを編成してTEチャレンジPhase Iのキックオフ・ミーティングを開催するとともに、TEチャレンジへの追加の参加者を募集。

※のちに、OpenADRアライアンスとオランダの研究機関TNOが加わり7チームとなったようです。

 

■TEチャレンジPhase Iのゴール

TEチャレンジの目指すゴールは以下のとおりでした:

  • モデリング&シミュレーション用のツール群の開発・拡張を行い、TEを評価するためのモデリング&シミュレーション・プラットフォームにまとめ上げる。
  • 再エネ大量導入だけでなく、それ以外の系統の問題やシナリオにもTEベースのアプローチが、電力系統の信頼性を高め、効率を改善するのに有効であることを示す。
  • モデリング&シミュレーション実施のための規範となるシナリオを開発する。
  • TEを実現・進化させるために、共同で作業し、データおよびナレッジを共有する組織・個人を増やして、TEのコミュニティを成長させる。
  • モデリング&シミュレーションの整備ばかりでなく、TEに関して、電力会社、規制当局および政策決定者との意思疎通を図ることで、 TEの実装・実証を成功させるための基盤を開発する。
  • サミットEXPOの開催その他のメディアを通して、TEチャレンジに参加したチームが果たしたエキサイティングな成果を発表する情報提供の場を提供する。

 

■TEチャレンジPhase Iに参加した7チームについて

以下は、TEチャレンジPhase Iに参加した7つのチームのチーム名とチームの目標、公開資料およびチームメンバです。

チーム#1:Business/Regulatory Models

目標:Define fundamental business/regulatory model types

  • Characterize/define interfaces among the participants (physical/financial)
  • Identify legislative regulator features applicable to each model

公開資料:Plans and Publications

メンバ:

TeamLead

EEI

Partners

EEI
Bluewave Resources
ICFI
CGI
PNNL
NIST
TeMix, Inc.
OATI
Robert Hershey

チーム#2:Reference Grid and Scenarios for TE Simulation

目標:

  • Develop a reference grid design and interoperability requirements to in turn allow testing of different TE approaches using different simulation tools while producing comparable results for a set of agreed on scenarios.
  • Keep it simple from beginning – One complexity at a time

公開資料:Plans and Publications

メンバ:

Team lead

NEMA

Partners

Navigant、NEMA、CMU、MITRE、Dartmouth

チーム#3:TE Demo for Microgrid Energy Management

目標:

  • Scalability
  • Account for devices inside of building to full external market
  • Theoretical grounding
  • transactive
  • Graceful degradation

公開資料:Plans and Publications

メンバ:

Team lead

Cleanspark

Partners

Cleanspark、TeMix、Univ. of Oklahoma、The Energy Mashup Lab、General Microgrids、Tata Consultancy、MIT、ABB、Navigant、Businovation、Dartmouth、OATI、Alstom、Geli

チーム#4:Common Transactive Services

目標:Align what is simulated with real TE message exchanges by finding common meanings across environments

公開資料:Plans and Publications

メンバ:

Team lead

EML and Navigant

Partners

Alliander、The Energy Mashup Lab、Navigant、MACT、TeMix、Caltech Resnick Institute、TNO

チーム#5:Co-Simulation Platforms

目標:Create an Open Platform for integrating and coordinating across a diverse suite of modeling and simulation tools, and conduct integrated experiments.

公開資料:Plans and Publications

メンバ:

Team lead

Marija Ilic

Partners

Vanderbilt、PNNL、CMU、U Maryland、IBM、DOE

チーム#6:Transactive ADR

目標:Advance TE in OpenADR Alliance, leveraging established DR member alliance to create an industry solution for TE.

公開資料:Plans and Publications

メンバ:

Team lead

OpenADR Alliance

Partners

OpenADR Alliance、Cleanspark、 Energy Mashup Lab、Alliander

チーム#7:PowerMatcher IoT

目標:Demonstrate the benefits to the US electric grid of a market approach using PowerMatcher.

公開資料:Plans and Publications

メンバ:Team lead

William Miller

Partners

MacT-USA、Alliander、TNO、SUNY/Buffalo State、Rowan State、CMU

※ 公開資料のリンクをたどれば、それぞれのチームの資料がご覧になれます。

 

■TEチャレンジPhase Iの成果報告概要

2018年10月、NISTは、NIST Technical Note 2019として「NIST Transactive Energy Modeling and Simulation Challenge for the Smart Grid—Phase I Report」を公開しました。以下では、この報告書についてご紹介します。

  • チーム#1:ビジネスと規制モデルチーム

このチームは、TEシステムに参加するために必要な基本的なビジネスと規制モデルを明確にすることを目的として活動し、具体的には、物理的および財務的インターフェースを定義して、各TEアプローチに適用可能な法的および規制的特徴を洗い出しました。その成果は以下の二つの公開文書として文書化し、Gridwise Architecture Council TE Systems Conferenceで発表しています。

1)Transactive Energy Models

2) The Policymaker’s Toolkit–Vital Questions to be Addressed about Proposed Transactive Energy Systems

  • チーム#2: TEシミュレーションのための参照グリッドとシナリオチーム

このチームは、TEアプローチをテストするための共通の参照グリッドと相互運用性の要件を開発することを目指して活動し、参照グリッドデータの選定、標準フォーマットの選択、TEシナリオの考慮、および結果の相互比較を支援する指標の定義など、多くの要素を計画に取り入れました。

  • チーム#3:マイクログリッドエネルギー管理のためのTEデモチーム

このチームは、マイクログリッドシステムにおけるエネルギー管理のためのトランザクティブ制御を実演することを目的として活動し、ビル内のデバイスから卸売市場規模までのスケーラビリティを考慮して、ソフトウェアを開発し、実際のマイクログリッドでテストしています。

  • チーム#4:共通トランザクティブサービス

このチームは、TE市場で共通のサービスを提供することを目的として活動し、四つのトランザクティブサービスを定義して、それをOpenADRアライアンスの作業グループに提供しました。その作業は、OpenADRプロトコルに新たなトランザクティブサービスを追加することで、TEの実装を促進することを目的としています。

  • チーム#5:共同シミュレーションプラットフォームチーム

このチームは、独自の共同シミュレーションツールと他のチームのツールとの相互作用を分析し、それに基づいて作業を調整しました。具体的には、PNNLのグリッドシミュレーションツール(GridLAB-D)とVanderbiltのHLAベースの共同シミュレーションフレームワーク(C2WT)とのインターフェースを開発し、他のチームと協力して、共通の成果物に取り組むための努力も行っています。

  • チーム#6:トランザクティブ自動デマンドレスポンスチーム

このチームは、既存のOpenADRプロトコルに共通のトランザクティブサービスを組み込むことで、将来のTE実装を促進することを目的としてOpenADRアライアンス内で活動中で、この結果は業界全体のTEの採用を促進する可能性があります。このチームは、DRメカニズムを自動化し、エネルギー供給と需要のバランスをより効率的に取るための新しい方法を模索しています。具体的には、消費者側のデバイスやシステムが自動的に市場価格や供給状況に反応するような仕組みを開発しています。

  • チーム#7: PowerMatcher IoTチーム

このチームは、PowerMatcherというトランザクティブプロトコルを使用して、家庭用デバイスや家庭群間での電力管理を可能にすることを目的として活動中です。このプロトコルは、いくつかのヨーロッパの都市でのユーティリティデモンストレーションで使用されており、現在標準化活動が進行中です。このチームは、PowerMatcherの米国での適用可能性とその利点を実証するために、さまざまなシナリオとケーススタディを評価しています。特に、分散エネルギーリソース(DER)の効率的な統合や、消費者参加型のエネルギーマーケットの形成において、このプロトコルがどのように役立つかを調査しています。

 


 

以上、TEチャレンジPhase Iに関して、ご紹介しました。

 

Phase Iの7チームのうち、最後の2つは後発のため、まだこの時点では目立った成果は出ていないようで、報告書中チーム#1(3.1節)に関しては5ページ弱を使って報告されているのに対して、チーム#2(3.2節)は3/4ページ、チーム#3(3.3節)は2/3ページ、チーム#4(3.4節)は1.5ページ、チーム#5(3.5節)は2ページ弱あるのに対して、チーム#6(3.6節)とチーム#7はそれぞれ1/2ページほどでした。

そのため、ChatGPTに普通に報告書全体の要約を頼むと、チーム#6、チーム#7の存在が要約では見えなくなってしまいます。

このTEチャレンジPhase Iでは7つのチームがそれぞれどのようなことをしたのか紹介することが大事だと思ったので、以下のようなプロンプトでChatGPTに要約を頼み直しました。

 

AskYourPDFプラグインを使ってPDFファイルの報告書を渡すので、3章及び3.1節から3.7節までの、章/節タイトルを原文のままと日本語訳の両方で表示するとともに、各節の内容を日本語で500文字程度に要約してください。

 

すでに生成系AIをお使いの方は実感されていると思いますが、ChatGPTに関わらず、Bardでも、なかなか「日本語xxx文字で要約してくれ」といっても、ずっと少なかったり、大幅に指定した文字数を超過したり、なかなか指定した文字数通りになりません。ですが、とりあえず、このように指示してChatGPTに各節の要約をしてもらって、文字数の少ない/多すぎる節に関しては、「xx節の要約は短かすぎる/長すぎるので、要約文字数を2倍/半分にしてください」というような指示を出して、今回、TEチャレンジPhase Iの成果報告書の要約を行いました。

活動報告が5ページ弱のチームと、1/2ページのチームの活動内容をほぼ同じ行数で紹介するのは、自分で要約しようとすると結構大変ですが、ChatGPTに何度か指示を出し直すだけで短時間で要約が行えました。

 

 

 

終わり