The Cottage

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正月早々、LinkedIn内で、掲題のディスカッションが行われているのを発見しました。まだ議論は続いていそうなのですが、本日(2025年1月6日)時点で、どのような議論が展開されているか、ChatGPTを用いてまとめてみたので、本日は、そのご紹介です。

#冒頭にLinkedInで件のディスカッションが行われているスレッドへのハイパーリンクを張っておきましたので、詳細が気になる方は、そちらをご覧ください。

 

まず、この議論を吹っかけているのは、TE(トランザクティブエネルギー)提唱者のEdward Cazalet氏です。議論の中では「dynamic retail price」という言葉が使われていますが、その前提となっているのは、TEだと思われます。

#トランザクティブエネルギーに関しては、本ブログのシリーズ(トランザクティブエネルギー-その1トランザクティブエネルギー-その10トランザクティブ・エネルギーに関する新たな動きトランザクティブエネルギーに関する新たな動き-その2RATES-カリフォルニア州におけるトランザクティブエネルギー実証プロジェクトNISTのトランザクティブ・エネルギー(TE)に関する情報のまとめ)でご確認ください。

 

まずは、Edward Cazalet氏の主張を見ていただきましょう(ChatGPTでの翻訳版です)。

VPP と DR プログラムは、これ以上根付く前に廃止しなければなりません。

正しい動的小売料金(ダイナミック・プライシング)が導入されれば、メーターの裏側(顧客側)にある蓄電池を含む機器は、電力を動的価格で購入する顧客の利益になるように運転できます。

自分の利益になる運転を望まない顧客は、そのぶん余計に支払えばよいのです。そうした顧客が VPP や DR を利用する選択肢を持つべきではありません。そうでないと、動的価格に対する自動化や行動面での対応に、全力で取り組むことができなくなります。

VPP や DR プログラムは、動的料金に比べて、顧客の機器を効率的に運用できないため、コストを増大させます。さらにプログラム運営者や VPP・DR のアグリゲータに対しても支払いが必要になります。VPP や DR は “偽の発電所(Fake Power Plants=FPP)” に過ぎません。料金制度を改善すべきです!!

VPP と DR の詐欺まがいのプログラムをやめましょう!!

 

3日前の同氏の発言に対して、すでに60件以上のコメントが寄せられています。

以下は、そのLinkedIn内で行われているディスカッションの内容をChatGPT(ChatGPT-o1)に要約してもらったものです。

以下では、LinkedIn上で展開された「VPP(仮想発電所)とDR(デマンドレスポンス)をめぐる議論」について、発言者ごとに要約しつつ、Edward Cazalet 氏(以下Edward)が他の発言者にコメントしている部分は、その発言者の要約内に組み込みました。全体としては「VPP・DR vs. 動的価格(ダイナミックプライシング)」を巡る是非が主な論点となっています。

1. Edward Cazalet(冒頭意見)

  • 主張の概要
    • VPPやDRプログラムはやめるべきであり、「正しい動的(ダイナミック)小売料金」を導入するほうが合理的。
    • 顧客はダイナミックな電力価格に基づき、貯蔵(蓄電池を含む)や消費を最適化できるはず。こうした仕組みがあれば、VPPやDRのように「プログラムやアグリゲータを介して機器を操作する」必要はなくなる。
    • VPPやDRは、補助金やプログラム運営費用がかかり、その結果コスト増を招く「Fake Power Plants (FPPs)」に過ぎない。
    • 料金制度を抜本的に改め(動的料金制と二部料金制など)、VPP・DRプログラムといった「見かけ上の解決策」は廃止すべきと主張。

2. Comment #1: Ryan Hledik

  • 主張の概要
    • 今後7年間でピーク需要が100GW以上増加する見込みであり、これまでの4倍のペース。従来型インフラ投資だけではまかないきれない。
    • VPPは需要と供給のギャップを埋めるうえで重要な役割を果たす。事例として、米国の上位1割の公益事業体は需要削減可能量として12%以上をDR・VPPで確保している。
    • ミネソタ州のXcel Energyがエアコンの制御プログラムに大規模に参加者を募ったり、バーモント州のGreen Mountain Powerが宅内蓄電池を集約して最大ピーク電源をつくり出している事例を紹介。
    • Berkeley Labとの共同研究では、「顧客をVPPに参加させるための30の有効戦略」をまとめた。高いインセンティブやシームレスな申込プロセスなどに加え、「あえてスマートサーモスタを完全無料ではなく一部自己負担にすると効果が高い」などの意外な知見も得られた。
    • すべての電力会社が、上位1割と同等の加入率を獲得できれば、新たに50GWの容量が生まれる可能性がある。

※EdwardからRyanへの直接的コメントは見られない。

3. Comment #2: Brendan Carroll

  • 主張の概要
    • Edwardの「VPPやDRをなくしてダイナミックプライシングに統一すべき」という考えは理解しがたい。
    • 周波数の乱れなどをどのように「ミリ秒単位の価格変動」で対応するのか。
    • VPPは従来の発電所と同じエネルギー市場に参加している。DRは「遅めの動的対応」としては一理あるかもしれないが、Edwardの提案ではそこも否定しているように映る。

※EdwardからBrendanへの直接的コメントは特にない。

4. Comment #3: Davron Sharipov

  • 主張の概要
    • 「Demand Responseは詐欺なのか?」「柔軟性(フレキシビリティ)やスポット市場価格も詐欺なのか?」と疑問を呈し、Edwardの主張に反論。

※EdwardからDavronへの直接的コメントは特にない。

5. Comment #4: Igor Leroux および関連スレッド

  1. Igor Leroux の主張
    • Edwardの指摘(VPPやDRを廃止して動的価格に置き換える)には一理あるが、動的料金は送配電(T&D)のボトルネックや費用問題を十分には解決できない。
    • 仮に細かいノード単位の価格設定をしても、ピーク需要が将来的に配電ネットワークの拡張を強いる事実は変わらない。
  2. Comment #4-1: Robert L. Borlick
    • ノード価格を細かく設定し、需給逼迫時に価格を十分高くすることで、ピーク需要を抑制し設備増強を回避できる。
    • ただし価格が上がりすぎて、需要を抑えるメリットより本来の需要価値の損失が大きくなれば、設備拡張したほうが社会的に得になる。
    • これを調整するにはDSOが高度なソフトウェアを用いて、動的なノード価格を設定し、適切なタイミングで拡張投資を判断すべき。
  3. Comment #4-2: Edward Cazalet
    • CPUCのCalFUSE実証実験では、CAISOのノード/サブステーションごとの価格に加え、送電ロスや混雑費用を反映した「回路価格(circuit price)」も導入。負荷が高い時間帯には、回路の固定費の一部を変動部分に載せる仕組みを試した、と紹介。
  4. Comment #4-3: Matt Roderick
    • 配電ネットワークのデジタル化は遅れているが、徐々に改善されている。
  5. Comment #4-4: Igor Leroux
    • ノード価格を採用している国はあるが、サブステーション単位の細かいレベルで導入している国はほぼない。
  6. Comment #4-5: Matt Roderick
    • 真に「ローカルな価格設定」を試みた例はほとんどない。ピーク需要がネットワーク拡張の要因になる点は変わらないが、ダイナミック料金(tariffs)とVPP/DRの両輪でピークを抑えたほうが望ましいのではないか。

6. Comment #5: Chris Tumpach およびEdwardの関連コメント

  • Chrisの主張
    • 自身はVPPとリアルタイム料金の両方を運用した経験があり、長期的には動的料金が望ましいと考える。
    • ただしVPPと動的価格は相反するものではなく、どちらも連携可能。
    • エンドユーザが電力料金や市場を理解しなくても、機器接続を促しインセンティブを与えれば、VPPやEMS等が自動で最適化しうる。
    • ただしテキサスのGriddyのように、いきなり市場リスクにフルで晒すのは問題がある。

Edwardのコメント(5-1, 5-3)を含むやりとり

  1. Comment #5-1: Edward
    • Griddyの「失敗」は、利用者やGriddy自身が大きな請求に耐える担保を十分に積んでいなかったという規制面のミスが大きい。
    • 二部料金(サブスクリプション+動的価格)の形にしておけばリスクは緩和されていた、と主張。
  2. Comment #5-2: Robert L. Borlick
    • Griddyはリアルタイム卸価格をそのまま顧客に転嫁しただけ。顧客は嵐の前までは安い電気を享受していたが、嵐(URI)で大きな請求が来た。
    • 多くの顧客が支払いを拒み、政治的に救済されたため、他の顧客にコストが転嫁された。これは消費者自身の選択リスクなのに、自己責任を果たさなかった。
  3. Comment #5-3: Edward
    • 単なる蓄電池を「VPP」と呼ぶのは、柔軟性(双方向性)を正しく評価していない。
    • 「需要機器を基準より下げたから発電扱い」とするDRは、実際にはカウンターファクチュアル(本来の消費量との比較)を前提とするため、価値評価が難しい。
    • 二部料金(CalFUSE のような「時間別の購買量を事前にサブスクし、差分だけ動的価格で清算する」方式)であれば、Griddyタイプのリスクを抑えられる。

7. Comment #6: Matt Roderick および関連やり取り

  • Mattの主張
    • VPPやDRを全面的に廃止する必要はないが、業界がVPPやDRを優先してきたのは「顧客からより多くのお金を取りやすい仕組み」だったからではないか、と皮肉。
    • (6-1, 6-2のやりとり)産業界はこれまで大規模発電所を中央制御する経験でやってきたため、分散資源でも同じように制御できると単純に考えている節がある。
    • Davronに対して「そう、すべては金のためかもしれない」と同意的に応じる。
    • Comment #6-3でEdwardが「Well said(よく言った)」と賛同。

8. Comment #7: Matt Golden および関連スレッド多数

  • Matt Goldenの主張
    • 「全ての一般家庭(例えばおばあちゃん)に、市場のヘッジを理解させろ」というのは非現実的。大半のユーザは複雑さやリスクを嫌う。
    • 企業が本格的に「ユーザの利便性を損なわず、エネルギー制御ができる仕組み」を開発するインセンティブが少ない。そもそも料金削減にしかならず、十分な収益を見込めないから。
    • 家の中の機器の自動化は現状「アプリやデバイスが乱立し、うまく連携しない」状態で、本当に使いやすいソリューションができていない。
    • TOUなどある程度時間帯別料金は妥協できるが、「リアルタイムに連動した動的価格」は、ほとんどの家庭にとって使いにくい(快適性を犠牲にするか、大きなリスクを負うか)。
    • 実際にどれだけ負荷を柔軟に動かせるかも疑問。

その他のやりとり(#7-1 ~ #7-21)で出ている主なポイント

  • Ahmad Faruqui:
    • 「計画(動的料金の普及など)は、現実とぶつかると破綻しがち。」「強制的な動的料金は反発されるだろう」「様々なオプションを用意して選択できるようにすべき」
  • Robert L. Borlick:
    • 「無知には代償が伴う」として動的料金に対して学ぶ必要性を説く一方、「必要ならヘッジを用意すればよい」とコメント。
  • Matt Roderick:
    • 「AlexaやGoogle Homeなど市販のホームオートメーションのほうが、エネルギー事業者提供のシステムより遥かに使える」と指摘。
    • 欧州では動的TOUを導入した場合、特に行動を変えなくても年7~10%程度の節約になる分析があるとも紹介(7-19)。大規模導入時にはVPP/DRが不要になるかも? との問いかけ。
  • Tim Ryan(7-18など):
    • 柔軟な負荷(エアコンや給湯器など)だけ動的料金にして、重要負荷は通常メーターという「二系統」運用も考えられる。デジタル技術を使えば十分可能。
  • さらに「高齢者や低所得者が、動的価格のピーク時に何も使えなくなってしまう社会的リスク」への懸念も散見される。

9. Comment #8: Ken Kresyman

  • 主張の概要
    • Edwardの「中間業者(VPPアグリゲータなど)を排してダイナミックプライシングに一本化すればよい」という理想論は、実際の人間行動や社会的公正性を無視している。
    • 多くの人は料金や価格シグナルを認識していなかったり、変えたくても変えられない事情があったり、そもそも興味を持たない。
    • 結果的に「柔軟に動かせる層」が得をして、「動かせない層」が負担増になる恐れがあるため、VPPやDRが果たす“サポート的機能”にも価値があるはず。

10. Comment #9: Doug Houseman とEdwardの再コメント

  • Dougの主張
    • Edwardの主張通り「すべて動的料金に移行し、VPPやDRを廃止」すると、低所得者には致命的なリスクになり得る。ライフラインすら動的ピーク価格で跳ね上がれば、破産や健康被害を招きかねない。
    • 「オプトイン(任意参加)かつインセンティブ付与する形のDRのほうが現実的」とコメント。
    • また、Edwardが言及する事例がカリフォルニア限定かどうか不明瞭で、主張が普遍的に適用されるなら“社会的に不公正”ではないか、と異議を唱える。

Edwardの追加説明(9-1 ~ 9-8)

  • Edwardいわく「CPUCのCalFUSE二部料金では、あらかじめ時間帯別に一定kWhをサブスクしておき、実測との差分だけを動的価格で課金。低所得層(CARE)には同等の割引単価を提供するので、単なる“ライフラインを切り捨てる”話ではない」と再度主張。
  • ただし「VPPやDRは偽の発電所(FPP)であり効率が悪い」という発言を“全米や全世界に当てはめた”ように見える点が批判される。

Robert Smithは「“VPPやDRはコスト増”と言い切ってしまうEdwardの主張は受け入れがたい」とコメント。

11. Comment #10: Fabian Le Gay Brereton

  • 主張の概要
    • 需給バランス以外に、周波数制御などの「補機的サービス提供」のためにVPPを使うことをどう考えているか? と疑問を提示。

付随するTim Ryan, Davronとのやりとり

  • 「家庭内機器(インバータ等)を標準化し、自動で周波数に応じて出力調整できるようにすれば、従来の“有償アンシラリーサービス”も安価に代替できるかもしれない」との意見も出る。

12. Comment #11: Tom Butz とDoug Houseman

  • Tomの主張
    • 100GWもの需要増に対して、VPPを積み上げるだけで本当に賄えるのか疑問。大規模な供給源(発電所や大規模リソース)が必要ではないか。
  • Dougの補足
    • かつてフロリダ州のFPLでは25%もの顧客が参加するDRプログラム(On-Call)で大きな需要削減を実現した事例はある。規模によっては意外に大きな影響力を持ち得るとも言える。

総括

  • Edwardの核心的主張は、「VPPやDRによる間接的・不透明な制御より、二部料金制を含む適切なダイナミックプライシング(+顧客の自動制御)を整備すべき」というもの。ただし、彼の「VPP/DR廃止論」は多くの参加者に懐疑的・批判的に捉えられ、特に
    1. 低所得者・社会的弱者の保護
    2. 送配電コスト問題や周波数制御など、単なる価格誘導では解決しづらい部分
    3. 人間行動特性や参加意欲・機器接続のインセンティブ設計
      といった点で異論・反論が噴出している。
  • VPP/DR支持派は、「すでに多くの実績があり、短期的に大きな需給ギャップを埋める手段として有効」と強調。一方で「将来的には価格連動型の仕組みやデジタル技術の進展により、ある程度VPP/DRから置き換えられる部分もあるかもしれない」という意見もある。
  • 動的料金(ダイナミックプライシング)派であっても、「すべての顧客に強制」は難しく、最低限のライフライン分や仕組み上のリスクヘッジ(サブスクリプション方式、重要負荷・柔軟負荷の区別など)は必要だという声が多数。
  • 多くの論者が「技術的には可能でも、実際のユーザ行動・社会的受容性をどう考慮するか」という点に苦慮しており、Edwardの「VPP/DR=FPP(Fake Power Plants)」という強い表現は、やや極端すぎると受け止められている。

 

いかがでしょうか? 

こうしてブログにまとめている間にも、もう1件コメントがあったようで、しばらくはLinkedInでのディスカッションは続くものと思われます。

 

なお、ここでEdward氏が言及しているダイナミック料金設定(動的価格)による自動化された需要管理と、彼が提唱したTransactive Energyの関係をSearchGPT機能を使って確認したところ、以下の回答がありました。

Edward Cazalet氏は、電力市場の専門家であり、動的価格設定(ダイナミックプライシング)と自動化された需要管理の推進者として知られています。彼の提唱する「Transactive Energy(取引型エネルギー)」は、これらの概念と深く関連しています。

動的価格設定と自動化された需要管理: 動的価格設定とは、電力の需要と供給の状況に応じてリアルタイムで価格を変動させる仕組みです。これにより、消費者は電力の使用を最適化し、コスト削減を図ることができます。自動化された需要管理は、スマートデバイスやシステムを活用して、消費者の電力使用を自動的に調整し、電力網全体の効率性と安定性を向上させることを目的としています。

Transactive Energyとの関係: Cazalet氏の提唱するTransactive Energyは、電力の生産者と消費者が市場ベースの取引を通じて電力の売買を行う枠組みを指します。このモデルでは、動的価格設定が中心的な役割を果たし、リアルタイムの価格信号に基づいて電力の需要と供給が調整されます。これにより、エネルギー資源の最適な配分と効率的な運用が可能となります。

具体的には、Cazalet氏が設立したTeMix Inc.は、Transactive Energy Market Information Exchange(TeMIX)という標準化されたアーキテクチャとプロトコルを開発しています。TeMIXは、リアルタイムおよび将来の電力取引を可能にし、スマートグリッド環境での動的価格設定と自動化された需要管理を支援します。

このように、動的価格設定と自動化された需要管理は、Cazalet氏のTransactive Energyの概念において中核的な要素であり、電力市場の効率化と持続可能性の向上に寄与しています。

 

自分では、トランザクティブエネルギーとVPP&DRが両立するものなのかどうか考えたことはなかったのですが、議論の途中で出てきたように、いくらダイナミックプライシングが早くても、周波数調整のようなアンシラリーサービスには使えないだろうと思います。

VPP/DRは周波数調整の領域でも使われだしているので、VPP&DRを廃止しなくてもよいと思うのですが。

 

 

本日は以上です。

終わり