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昨年11月、経済産業省から、太陽光発電や電気自動車などの本格的な普及に向け、有識者による「次世代エネルギー・社会システム協議会」を省内に設置するという発表がありました。
平成21年11月13日に第1回会合が開かれ、その際の資料は公開されていますが、2回目以降は非公開となり、この度、第7回会合の配付資料のみ公開されています。
表題の「中間とりまとめ(案)」の最後のページ(検討経緯)によると、これまで以下のような会合が持たれたようです。
■ 第1回会合 平成21年11月13日(金)
内容:関連研究会からの報告
■ 第2回 平成21年11月26日(木)
内容:企業ヒアリング:電力インフラと通信
■ 第3回 平成21年11月30日(月)
内容:企業ヒアリング:グリッドのあるべき姿の仮説提示
■ 第4回 平成21年12月3日(木)
内容:企業ヒアリング:システムの海外展開
■ 第5回 平成21年12月7日(月)
内容:企業ヒアリング:(海外を含む)都市開発
■ 第6回 平成21年12月14日(月)
内容:企業ヒアリング:需要側のモジュール(機器・住宅・自動車)
■ 第7回 平成22年1月19日(火)
内容:中間とりまとめ
開催案内のニュースでは、「関連する省内の6つの研究会と民間の会議の計7組織を束ねながら、必要な政策を検討する。
再生可能エネルギーを大幅に取り入れた電力網構築のほか、電気自動車や燃料電池車の普及、ビルや家庭での省エネ技術導入などを同時並行的に進めていく際に、どのような政策や社会基盤が求められるかを検討する。」とありましたが、その6つの研究会と民間会議というのは以下のとおりです。
1)蓄電池システム産業戦略研究会
2)次世代自動車戦略研究会
3)都市熱エネルギー部会
4)ゼロ・エミッションビルの実現と展開に関する研究会
5)次世代送配電ネットーワーク研究会
6)次世代エネルギーシステムに係る国際標準化に関する研究会
7)スマートコミュニティ関連システムフォーラム
大きなくくりで言うと、これらの研究会およびフォーラムは、『日本型スマートグリッドが如何にあるべきか』を検討しているのですが、その中で将来の自分たちのポジションのことを考えてしまうので、細かな所では整合性があるようでない。そこで、今回、この協議会では、こうした複数の研究会やフォーラムでの検討状況を整理、相互連携を図り、統一的な方向を示すために、実際に企業ヒアリングを重ねてきたということだと思われます。
目次を見ると、
1.日本型スマートグリッドの構築に向けて
2.「次世代エネルギー・社会システム」構築の必要性
3.次世代エネルギー・社会システム構築に向けた実証事業の必要性
4.次世代エネルギー・社会システムの国際展開
5.グローバルに展開できる国際標準の策定の必要性
6.時間フレームに応じた対応の概要・ロードマップ
となっており、日本型スマートグリッド=次世代送配電ネットワークということではなく、電気、熱、再生可能エネルギー、廃熱・大気熱などの未利用エネルギーを含めた総合的なエネルギーネットワークとして考える。 更に、地域の交通システムや都市計画までを含めたエネルギーの効率的な利用方法を考える - ということで、「次世代エネルギー・社会システム」という、スマートグリッドを包含した更に大きなイメージの用語が使われています。
1章では、日本型スマートグリッドとして、当面はわが国のエネルギー安定供給の確保とCO2排出低減のため原子力発電の着実な推進が必要であるとする一方、今後は再生可能エネルギーの積極導入が必要としています。しかし、政府目標の2020年太陽光発電2800万kWを本当に導入したら電力系統への悪影響が生じ、現在世界に誇っている日本の電力供給の供給信頼度を維持できなくなる。ただ、悪影響が出そうなら太陽光発電の出力制御や解列で対処するというのは、本来政府が太陽光発電を大量導入しようとしている趣旨に反するので、安定供給確保、低炭素化、社会的なコストを同時に勘案して、強靭かつ高効率な送配電ネットワークを構築していくことが必要としています。
また、中長期的には、「需要サイド/地域単位のエネルギーマネジメントの可能性」、「エネルギーの地産地消モデルが成立する素地が生まれつつある」という控えめな表現が使われていますが、遠隔地の大規模発電所で「生産」した電気を、送電ロスを生みながら遠路はるばる需要地に運ぶ従来の電力ビジネスモデルは主役の座を追われ、地産地消モデルのバックアップの位置づけになる-これがわが国の目指す日本型スマートグリッドであるという捉え方のようです。
そこで、まず2020年に向けた系統対策(系統側に、2800kWの太陽光発電の出力変動に見合うだけの蓄電池装置を導入する)を進めつつ、本来の日本型スマートグリッド実現のノウハウ蓄積のため、いろいろ実証事業を展開しましょうというのが3章ですね。
2章では、次世代エネルギー・社会システムの姿として、
需要場所の姿:スマートハウス、ZEB(ネットゼロエネルギービル)、蓄電池、次世代電気自動車、
地域レベルの姿:情報通信技術活用し、地域内の個別の需要を調整しつつ、人々の暮らしの快適を両立させながら地域における省エネ、CO2削減。できるだけ地域レベルでエネルギーの地産地消を図る地産地消モデル、
全国レベルの姿:地産地消モデルの広がりによって、電力ネットワークの負荷が減り、バックアップとしての機能が大きくなることと、地域相互の連携を通じた国全体の交通システム、都市づくり、街づくり、人々のライフスタイルにも影響を及ぼていくだろう-という事が描かれています。
3章では、章のタイトルどおり、次世代エネルギー・社会システムを構築するために実証事業が不可欠で、すでに動き出している離島型の実証実験だけではなく、「都市」での実証の必要性が説かれています。そのためには、地域のエネルギー会社の参画が必須であり、他にもカーシェアリング、コミュニティサイクル、公共交通機関の利用、省エネ行動のエコポイント化の仕組みづくりなどの環境整備が必要とされています。また、そのために、国土交通省、環境省、総務省、農林水産省などの省庁との連携、政策資源の集中、実証事業の共同推進が必要とされています。
4章では、まずエネルギー需給構造を巡る国際的な変化の動向をながめ、日本のスマートグリッド関連産業を育成するためには、(筆者注:日本のスマートグリッド化は遅そうだから?)海外のスマートグリッド化の仕事の受注が不可欠。ビッグプロジェクトにならざるを得ないので、プロジェクトマネジメントやオペレーション、ファイナンスまで多岐に亘る企業のマネージが必要。そこで、関連企業を集めたフォーメーション作りが大切だとしています。
5章では、国内スマートグリッド関連企業の海外ビジネス成功のためには、標準化が大切であるとされています。多分、企業からのヒアリング結果だと思われますが、『インフラ市場においては、我が国企業は優れた技術を有しながらも、国内のインフラ事業者が定めた個別の仕様や要求に、メーカーが応じていくという経緯により、国内における標準化に加え、国際標準への対応が遅れ、海外展開が難しくなっているとの指摘がある。』という記述があり、携帯電話のように、日本市場で独自の進化を遂げて世界標準から掛け離れてしまうガラパゴス化を避けなければならないという強い希望が感じられました。
6章では、この中間報告の方向性に基づいて、次世代エネルギー・社会システム協議会が2030年までのロードマップを策定する他に以下の予算化が報告されています。
■ 次世代エネルギー・社会システム
- スマートコミュニティシステム事業 11億円
- 低炭素型・環境対応インフラ/システム型
ビジネスのコンソーシアム形成等支援事業 8億円
■ 次世代送配電ネットワーク
- 次世代スマート送配電実証事業 3.5億円
■ 蓄電池
- 蓄電複合システム化技術開発 43億円
■ 未利用エネルギーの有効利用、エネルギーの面的利用
- 分散型エネルギー複合最適化実証事業 6億円
以上、中間とりまとめ(案)の内容を簡単にご紹介しました。
インターテックリサーチHP冒頭に記述させていただいていますが、「マイクログリッドと呼ばれる従来よりも狭い範囲での電気の『地産地消』を基本として、過不足分をマイクログリッド間で如何に経済融通し、全体最適を実現していくか?」というのがスマートグリッドのあるべき姿だと思っていましたが、今回の中間とりまとめの方向性と違いがなかったことに、意を強くしています。また、このブログで、RMIのスマートガレージの紹介でV2Gにいたる過程としてV1Gの話が出てきましたが、中間とりまとめの中でもV1Gに言及されており、EV充電インフラは、スマートチャージと呼ばれるV1Gを経て、V2Gで完全にスマートグリッドの一部となるという方向性も確認できました。
今回は、途中まったく絵のない内容になってしまいましたが、最後に、配付資料として公開された『次世代エネルギー・社会システムの構築に向けて』と題したパワーポイント資料(PDF版)から、「次世代エネルギー・社会システム」および「6つのやるべきこと」を掲載させていただきます。
終わり
- 投稿タグ
- Smart Grid, V2G, 低炭素電力供給システム, 国際規格, 次世代送配電網