OpenADEのビジネス要件

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OpenADEについてリサーチしています。

UCAIug-OpenSGのOpenADE-TFによる、OpenADE1.0のSRS策定作業は、2009年10月16日にイニシャルドラフトバージョン(v0.1)、2010年2月4日にレビュー用バージョン(v0.5)が作成され、2010年2月19日にOpenADE1.0 SRS最終版(Approved v1.0)が出来上がっていますが、それに先立って2009年10月29日付けでOpenADE-TFで作成された『OpenADE Business and User Requirements Document (Version 1.00)』が公開されており、このドキュメントは、OpenADE1.0 SRS 最終版「1.4 External Considerations and References」の冒頭に記されています。

そこで、まず、こちらのドキュメントの内容を見ておきたいと思います。

なお、いつも通り、全文翻訳ではないことと、例によって、超訳になっている部分があることを予めご了承ください。また、勝手に補足した部分は文字色=緑にしています。
また、「ADEのフレームワーク」と重複する部分は割愛しています。

では、はじめます。

OpenADEの背景

2007年のエネルギー独立性及び安全保障法 (EISA 2007)の下、米国標準技術研究所(NIST)は、スマートグリッドを構成する装置、システムの相互運用性を実現するためのプロトコル、モデル、標準を含む枠組みを開発するにあたっての調整責任者に任命された。
そこで、NISTは幅広く関係者を集め、スマートグリッドの相互運用性標準ロードマップの策定に乗り出した。2回のワークショップが開催され、スマートグリッドに必須の標準と標準開発作業のリストが作成された。そして、2009年8月10日の報告書で、相互運用可能なスマートグリッド構築に必要な標準規格を確立するための14のPAP(Priority Action Plan:優先行動計画)が提案されている。
OpenADEに関連する、顧客情報へのアクセスは、「PAP10:エネルギー使用情報のための標準規格」として14のPAPの1つに入っている。
PAP10の目的を以下に示すが、本ドキュメントは、その2番目の目的に関係している。
なお、OpenSGでは、この他に、PAP1、PAP3およびPAP4にもかかわっている。

【PAP10の目的】

1. 計測と請求にかかわる様々な顧客情報アクセスで必要となる情報の洗い出し
2. 現在使われているメーターの範囲で、当面顧客が(エネルギー)使用データをアクセスできるようにするための短期計画の立案
3. 既存のOASISIEC61970/61968IEC61850ANSI C12.19/22、AHRAE 135並びにZigBeeの標準と矛盾することのなく、それらを合成した情報モデルの開発
4. これらの関連する標準化団体が協調して標準規格を作成・採用する計画の立案と実行

目的と目標

電力会社:消費者データ保護とサイバー・セキュリティ対応を含む、コスト効率の良い相互運用可能な標準インタフェースを考案して、規制当局および市場の要求に応える
公益事業委員会(規制当局):電力会社が保有する消費者データを消費者や第三者企業(TPSP)がアクセスする場合の規則としてOpenADEを参考にできる
顧客:電力会社が保有する消費者データを利用する製品やサービスを提供するTPSPに、自分の消費者データを公開できる
第三者企業(TPSP):自社で開発・提供するエネルギー管理関連の製品やサービスが公益事業者が保有する消費者データを安全にアクセスできるようになる

目標:本『Business and User Requirements Document 』の作成を2009年第四半期までに終了し、『OpenADE1.0 SRS』を2010年第1四半期までに完成させる

ビジネス要件

OpenADEのためのビジネス要件を以下に示す。
これらの要件の多くは、テキサス州のAMIプロジェクト実施時に、テキサス州公益事業委員会で特定されたものである。


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OpenADEのビジョン

ここでは、初期リリースの範囲ではなく、OpenADEインタフェースとしてあるべき姿の描写を試みる。
具体的には、下表において、初期リリースに含まれる機能は「IN欄」にチェック、初期リリースには含まれない機能は、「OUT欄」にチェックをつけた。

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ビジネス要件の前提

前述のビジネス要件を列挙するに当たって、以下の前提条件をおいている。
• TPSPのアクセス認可を行うにあたって、地方の規制機関は、他の政策決定との整合性を図る必要がある。したがって、この要件仕様書では、プライバシー、データの有効期間、TPSPの審査方法などに関する標準化は行わない。
• OpenADEは、テキサス州のAMIプロジェクトで作られたSmart Meter Texas PortalとTPSP間のインタフェースに準じたものとなる。すなわち、OpenADEインタフェースは、そのようなポータルとTPSPの間で消費情報の通信に使用される。
• 認可機関が存在する場合、電力会社の保有する消費者データにアクセスするOpenADEインタフェースの利用に関して、TPSPは審査を受けなければならない。
• 顧客は、自分がOpenADEシステムへのアクセスを獲得する顧客であると確認するのに必要な情報を電力事業者に提供しなければ
• い。
• 顧客は、電力会社の保持する消費者データあるいはその一部をアクセスするTPSPごとにアクセス許可を認めなければならない。
• 電力会社は、OpenADEインタフェースを通じていかなる個人情報も提供しない。
• TPSPは、固有のユーザープロファイルを持つ
• TPSPは、州および連邦政府の規制に従って、消費者データとプライバシーを管理・保護する責任を持つ。

OpenADE 1.0の範囲

ここでは、OpenADE 1.0の範囲を規定する。OpenADE1.0は、早期の市場投入を目指し、初期リリース機能に対して、さらに制約を加えたものである。
具体的には、アクセス認可を受けた特定のTPSPに電力会社が消費実績データを供給するために必要な機能に限定したものとなっている。

OpenADEのそれ以降のバージョンは、電力会社が保有する次の消費者データへのアクセスを含む:
1. 価格付け情報
2. イベント情報
3. HAN(Home Area Network)および構成情報

その他、以降のバージョンへの追加提案は次の通りである:
1. 顧客またはTPSPによるデータ捕捉を含む、追加の認可シナリオ
2. デマンドレスポンスのような、他の情報交換用プラットフォームとしての、OpenADEメカニズムの使用

一般的なOpenADEに関する議論および要件の洗い出し過程全体にわたって、特定の項目や機能をOpenADE 1.0に含めるかどうかが問題として浮上してきた。次表は、それらの議論と決定した内容を文書化し、整理したものである。

長くなってきましたので、一旦終わりにします。次回は、『Business and User Requirements Document 』の後半部分(ケーススタディ)をご紹介します。

終わり